
刑事事件のニュースで「拘禁刑〇年、執行猶予〇年」という言葉を耳にして、その意味が気になった方もいるのではないでしょうか。あるいは、ご自身やご家族が刑事裁判を控え、「猶予さえつけば刑務所に入らずに済むのだろうか」と不安を抱えている方もいるかもしれません。
執行猶予とは、有罪判決を受けても一定の期間その刑の執行が猶予され、その期間を無事に過ごせば刑務所に入らずに済む制度です。同じ有罪でも、この猶予がつくかどうかで、その後の生活は大きく変わります。
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、執行猶予の意味や実刑との違い、つく条件、そして勝ち取るためのポイントまでわかりやすく解説します。
- 執行猶予とは何か・実刑との違い
- 「拘禁刑〇年・執行猶予〇年」の意味
- 猶予がつくための3つの条件
- 判決を勝ち取るためにすべきこと
なお、ご自身やご家族が刑事事件で起訴される可能性がある方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をお気軽にご利用ください。
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執行猶予とは
執行猶予とは、刑事裁判で問われた罪で有罪であることを前提としつつも、直ちには刑務所に収容されず、猶予期間が経過した後は刑務所に収容されることがなくなる制度のことです。
判決では、たとえば裁判官から「主文。被告人を拘禁刑1年に処する。この裁判が確定した日から3年間、その刑の執行を猶予する。」と言い渡されます。これは「拘禁刑1年、執行猶予3年」という意味で、有罪は有罪ですが、3年を無事に過ごせば拘禁刑1年に服さなくてよくなる、ということを意味します。
①なぜ執行猶予の制度がある?
執行猶予、実刑とも、目的は、罪を犯した人の更生を図り、一人でも再犯を犯す人を減らして社会の治安をよくすることです。ただ、実刑に処して刑務所に収容し社会との関係を分断してしまうと、仕事や家族を失うなどして釈放後の社会復帰を困難にしてしまう可能性があります。
そのため、一定の条件を満たした人については、刑務所に収容するよりも社会復帰させた方がその人の更生を図ることができるのではないか、という考えに基づいて設けられた法制度が執行猶予なのです。
②実刑との違いは?
執行猶予も実刑も、その罪で有罪である点、判決で言い渡される点は共通しています。
違いは刑務所に入るかどうかです。執行猶予なら猶予期間中も通常どおり社会生活を送れるのに対し、実刑では判決の確定後ほどなく収監され、刑務所で服役することになります。
実刑判決を受けると、仕事を続けられなくなったり、家族と離れて暮らさざるを得なくなったりと、その後の生活への影響は小さくありません。同じ有罪でも執行猶予がつくかどうかで生活が大きく変わるため、刑事裁判では執行猶予の獲得が大きな目標になります。
③期間は何年から何年まで?
執行猶予の期間は、裁判確定日から(最短)1年以上~(最長)5年以下の範囲内で、裁判官の裁量により決められます(刑法第25条第1項)。一般的には、拘禁刑の2倍の執行猶予期間がつけられることが多いです。例えば、拘禁刑1年6ヶ月の刑罰に対し、3年の執行猶予がつくといった形です。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。
④「拘禁刑3年・執行猶予5年」とはどういう意味?
ニュースや判決でよく耳にする「拘禁刑3年・執行猶予5年」といった言い回しは、前半が言い渡された刑の重さ、後半がその刑の執行を待ってもらえる期間を表しています。
たとえば「拘禁刑3年・執行猶予5年」であれば、本来は3年間刑務所に入るべきところ、5年間を何事もなく過ごせば、その3年の拘禁刑を受けずに済むという意味です。逆に、猶予期間の5年が経つ前に新たな罪を犯すなどすれば、猶予が取り消されて3年間服役することになりかねません。
なお「実刑3年・執行猶予5年」という言い方を見かけることがありますが、実刑と執行猶予は両立しないため、この表現は正確ではありません。実刑はその場で服役が始まる判決、執行猶予はその服役を一定期間待つ判決であり、両者は別物の概念です。
⑤取り消されることはある?
執行猶予期間中に新たな犯罪を犯し、拘禁刑を言い渡された場合、その判決に再度の執行猶予が付かない限り、猶予は取り消されます。
また、拘禁刑の実刑が確定した場合には、必ず取り消されます(刑法第26条)。
また、執行猶予期間中に罰金刑を受けた場合や、保護観察(保護司の指導・監督を受けながら社会内で更生を図る措置)付きの猶予期間中に守るべき事項を遵守せず、その情状が重い場合、検察官の裁判所に対する取り消し請求により、猶予が取り消されることもあります(刑法第26条の2)。
取り消されると、執行猶予付き判決の刑期に、新たに犯した罪の刑期を加えられた期間、刑務所に服役することになってしまいます。
執行猶予の取消しについて詳しくは「執行猶予が取り消される条件は?具体例と防ぐ対策」をご覧ください。
⑥猶予期間中の生活で注意すべき点は?
上記のとおり、猶予期間中に新たに罪を犯すと、執行猶予が取り消されてしまうこともあるため、執行猶予中の方は次の点に注意した生活を送る必要があります。
- 交通事故・交通違反:飲酒運転、スピード違反、信号無視などで拘禁刑になれば必ず執行猶予が取り消され、罰金刑でも取り消されることがあります。仕事で車を運転する方は特に注意が必要です。
- 飲酒:酔った勢いで痴漢や暴行・傷害といった罪につながることがあります。できる限り飲酒は控え、過去に酒でトラブルを起こしたことがある方は自宅で飲むようにしましょう。
- 依存症:薬物・アルコール・万引き・性に関する依存症は、自覚しにくく同種の犯罪を繰り返してしまいがちです。執行猶予期間中は専門の医療機関への通院や自助グループへの参加など、依存症の克服に努めましょう。
- 保護観察:保護観察付きの執行猶予の場合、ルールを守らないと猶予が取り消されることがあるため、保護司の指示に従って生活する必要があります。
執行猶予中の生活について詳しくは「執行猶予中に再犯したらどうなる?逮捕後の流れと対策」もあわせてご確認ください。
⑦一部執行猶予とは?
かつては刑の全部を実刑にするか全部を猶予するかの二択でしたが、平成25年6月の刑法改正(平成28年6月施行)により、刑の一部だけを実刑とし、残りに執行猶予をつける判決も選べるようになりました。これを「一部執行猶予とは?刑の一部だけ猶予される制度を解説」といいます。刑務所での矯正に社会内での更生を組み合わせ、立ち直りを後押しすることを狙った制度です。
たとえば「拘禁刑3年のうち1年の執行を2年間猶予する」という判決なら、まず2年間服役し、その後の2年間は猶予期間として社会で過ごすことになります(保護観察がつくことが多い制度です)。要件など詳しい仕組みは上記のリンク先で解説しています。
執行猶予がつく条件
執行猶予がつく条件は以下のとおりです。このセクションでは、全部執行猶予の条件について解説します。
- ①今回の判決で3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の言渡しを受ける
- ②過去に拘禁刑以上の刑を受けた前科がない。または、過去にそうした前科があっても、刑期終了の日もしくは刑の免除の日から5年以内に、再び拘禁刑以上の刑を受けていない
- ③情状に酌むべき事情がある
①拘禁刑の期間が3年を超える場合は、執行猶予はつきません。例えば、殺人罪の法定刑は「死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑」ですから、殺人罪で有罪認定を受けると、基本的には執行猶予はつかないということです。ただし、例外として、心神耗弱(精神の障害により物事の善悪を判断する能力が著しく低下した状態)、未遂、酌量減軽(情状に酌むべきものがあるとして刑が軽くされること)などの法律上の減軽事由がある場合は、拘禁刑の下限が2年6月まで引き下げられ、執行猶予がつく可能性があります。
②「過去に拘禁刑以上の刑を受けた前科」とは、今回の判決の前に、死刑または拘禁刑の判決を受けたことがあるという意味です(実刑だけでなく、執行猶予付きの判決を含みます)。判決時に執行猶予中の方や、実刑前科のある方は、基本的に通常の執行猶予の対象とならないということです。
ただし、猶予期間が経過すると刑の効力が消滅しますから、判決時に過去の猶予期間が経過している場合は、通常の執行猶予の対象となります。また、実刑の前科を有していても、刑期が終了した日から5年以上が経過していれば対象となります。
③「情状」は犯罪そのものに関する情状(犯情)と犯情以外の情状である一般情状があります。一般情状には被害弁償、示談成立などがあります。
なお、再度の執行猶予の要件については「再度の執行猶予とは?条文や要件、獲得確率を解説」で詳しく解説しています。
執行猶予をつけるにはどうすればいい?
執行猶予付き判決を獲得するためには、以下の3つのポイントが重要です。
- ①被害者と示談を成立させる
- ②真摯な反省の態度を示す
- ③家族によるサポートがあること
①被害者と示談を成立させる
仮に法益侵害が軽微であるとは言えないとしても、被害者と示談が成立していたり、被害弁償が完了している場合には、被害者の処罰感情が低下したり、事後的に違法性の程度が減少したと考えることができるため執行猶予が付される可能性が高まります。
②真摯な反省の態度を示している
社会に復帰して更生できることを示すには、同種犯罪を繰り返すおそれがない点を主張していく必要があります。そのためには自身の行った犯罪事実を素直に認め、反省・謝罪の態度を真摯に示すことが欠かせません。
その際にはどのような行為が犯罪とされており、自分のどのような行為によって誰に対して迷惑・被害を与えたことになったのかを、自覚的に理解できている必要があるでしょう。
真摯に反省していることを証明するためにも被害者に対して謝罪していること、すでに被害弁償をしている・今後の弁償を申し出ている、という事情が重要となります。
③家族によるサポートがあること
執行猶予で社会に復帰しても再犯を繰り返すおそれが小さいと、説得的に裁判官に説明するには、配偶者や親族が監督・サポートを申し出ている事情も重要です。
配偶者や同居の親族が被告人の監督・監視を誓約してくれている場合には、同種の犯罪を繰り返すリスクは低下すると考えられています。
そのため現在一人暮らしの方でも、今後は実家に引っ越して両親と同居するなど生活環境を整えることを被告人が約束していれば、被告人に有利な事情として考慮される可能性が高くなるでしょう。
示談の流れやメリットについて詳しくは「刑事事件で示談するメリットは?示談金相場と流れを徹底解説」をご参照ください。
執行猶予についてよくある質問
執行猶予は有罪?無罪?
執行猶予は有罪判決の一種です。「執行猶予がついた=無罪放免」と受け取られがちですが、実際は罪を犯したと認められたうえで、刑の執行だけを待ってもらっている状態です。
そのため、執行猶予がついても有罪である点は変わらず、次の項目で述べるとおり前科も残ります。実刑と違うのは「刑務所に行かずに済む」という点だと理解しておくとよいでしょう。
前科はつく?
前科とは、ある罪について起訴されて刑事裁判で「有罪」とされ、その裁判が確定した証のことをいいます。
そして、前述の通り、執行猶予は被告人が「有罪であること」を前提に一定期間刑の執行を猶予しているに過ぎませんので、執行猶予がついても前科はつき、有罪判決を受けた事実は記録として残ります。
なお、執行猶予期間が経過しても前科が消えることはありません。
前科について詳しくは「執行猶予でも前科はつく!猶予期間が経過したら前科は消える?」で解説しています。
初犯ならつく?確率は?
初犯の場合には、初犯でない場合より執行猶予がつく確率は高くなります。ただし、初犯といった事情だけで執行猶予がつくわけではなく、犯行の悪質性、犯行に至った動機や経緯、犯行後の反省の度合いや被害者への被害弁償の有無などの情状を考慮して裁判官が判断します。
なお、令和7年版犯罪白書によると、令和6年に第一審で全部執行猶予がついた人の割合は約66.2%です。
執行猶予の獲得を目指す方は弁護士にご相談ください
ここまで、執行猶予の意味や実刑との違い、つくための条件、そして獲得のために何が必要かを説明してきました。
執行猶予がつくか実刑になるかは、刑務所で過ごすか社会で生活を続けられるかという、その後の人生を分ける大きな岐路です。執行猶予を引き寄せるには、被害者との示談、反省の姿勢、家族による支えといった事情を、裁判官に過不足なく伝えていく必要があります。こうした情状弁護や示談交渉は、弁護士が関与するかどうかで結果が変わってきます。
刑事裁判は準備に使える時間が限られており、動き出しが早いほど示談や生活環境の調整に手を尽くせます。起訴される可能性がある段階の方も、すでに起訴された方も、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。
当事務所は刑事事件に注力し、執行猶予の獲得に向けた弁護活動を数多く手がけてきました。ご依頼者が少しでも良い結果を得られるよう弁護士が迅速に動きます。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

