- 暴行事件で逮捕されるとどうなってしまうのだろう…逮捕後の流れがわからない…
- 暴行事件の傾向(検挙されたり起訴される確率)はどれくらいだろう…
- 暴行罪で逮捕されないために、あるいは、逮捕された場合にどう対応すべきだろう…
この記事では、暴行事件に強い弁護士がこれらの疑問や悩みを解消していきます。
暴行罪で逮捕されるかもしれない方、ご家族が逮捕されてしまった方で、記事を最後まで読んでも問題解決しない場合は弁護士までお気軽にご相談ください。
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目次
暴行罪とは
暴行罪とは人に暴行を加えた際に成立する罪で、刑法208条に規定されています。
構成要件
構成要件とは犯罪が成立するための条件のことです。暴行罪の構成要件は「暴行」、「傷害するに至らなかったこと」、「故意」の3つです。
暴行
暴行とは人の身体に対して不法な有形力を行使することです。
殴る、蹴る、叩く、押し倒す、羽交い絞めにする、腕をつかむ、腕を引っ張る、物を投げつけて人に命中させるなど、人の身体に直接触れる有形力の行使が典型ですが、着衣を引っ張る、胸ぐらをつかむ、髪の毛を引っ張る、狭い部屋の中で日本刀を振り回す・大音量の音楽を流すなど、人の身体に直接触れない行為も暴行にあたります。
傷害するに至らなかったこと
次に、暴行によって人に怪我をさせる、人の健康状態を不良にさせなかったことが必要です。反対に、暴行によって人に怪我をさせた場合、人の健康状態を不良にさせた場合は傷害罪(刑法204条)が成立します。
暴行罪と傷害罪の違いは?どこから成立する?構成要件や罰則を弁護士が徹底解説
故意
最後に、暴行を加える認識が必要です。腕を伸ばしたところ、たまたまその腕が人にあたったという場合は暴行の故意が認められず、暴行罪は成立しません。なお、暴行罪には過失犯の規定も設けられていません。
罰則
暴行罪の罰則は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。刑罰の種類は懲役、罰金、拘留、科料と4種類ありますが、実際には懲役もしくは罰金を科されることが多いです。
時効
暴行罪の時効(公訴時効)は暴行を加えた日から3年です。
暴行罪で逮捕される要件とパターン
逮捕の要件
逮捕の要件は、
- 罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があること
- 罪証隠滅のおそれがあること
- 逃亡のおそれがあること
の3つです。この3つの要件全てを満たすことで初めて捜査機関は被疑者を逮捕することができます。
そのため、暴行の加害者が事実関係を認め、被害者に謝罪し、示談を成立させたような場合には、「罪証隠滅のおそれ」「逃亡のおそれ」がないと判断される可能性があります。
また、暴行の態様、被害が軽微で、被害者の処罰感情も厳しくないなど、悪質性が低い事件であると判断できる場合にも立件されない、あるいは微罪処分で処理されることもあるでしょう。
ただし、逮捕されなくても在宅事件として捜査が進められ、ある日突然逮捕されることも否定はできません。そのため、暴行事件を起こしたらできるだけ早急に被害者に謝罪し示談を成立させることが重要です。
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逮捕されるパターン
暴行罪で逮捕されるパターンは、①現行犯逮捕②通常逮捕の2つです。
①現行犯逮捕
暴行事件の現場で通報を受けて駆けつけてきた警察官によりその場で逮捕されるパターンです。また、現行犯逮捕は私人でも可能ですので、被害者自身や目撃者に取り押さえられ警察に引き渡されるパターンもあります。現行犯逮捕は逮捕令状がなくても逮捕が可能です。
②通常逮捕
暴行事件で被害者が警察に被害届や告訴状を出し、警察が捜査により証拠を固め、後日、逮捕令状を持った警察官に身柄拘束されるパターンです。事件当日ではなく後日に行われることから「後日逮捕」とも呼ばれています。通常逮捕は逮捕令状なしでは逮捕することができません。
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暴行罪で逮捕された場合のリスク
報道される可能性がある
逮捕は社会的にもインパクトの大きい出来事ですから、逮捕されるとニュースなどで実名報道されたり、ネット上に情報が流れる可能性があります。実名報道されると家族・親族はもちろん、近所や仕事・学校の関係者、友人・知人などに知れ渡る可能性があります。また、ネット上に情報が流れると、いつまでもその情報が検索される状態に置かれてしまいます。
会社に解雇される可能性がある
逮捕されたからといって直ちに解雇はできません。逮捕されたからといって直ちに有罪であることが確定したわけではないからです。
もっとも、逮捕後、起訴され有罪が確定すれば、個別の状況しだいで解雇される可能性はあります。また、逮捕されると数日間は会社を休まざるをえません。会社に連絡を入れず、欠勤状態が続くようだと欠勤を理由に解雇される可能性はあります。
学校を退学処分にされる可能性がある
公立中学では退学処分を受けることはありません。子どもには義務教育を受ける権利が保障されているからです。一方、私立中学、高校、大学では退学処分を受けることがあります。
学校教育法は「正当な理由なくして出席常でない者」、「学校の秩序を乱した者」などと退学処分とできる旨定めています。そのため、逮捕後、身柄拘束期間が長期に及ぶ場合や学校内で暴行事件を起こした場合などは退学処分を受ける可能性はあります。
刑罰を受け、前科がつく可能性がある
逮捕されたからといって必ずしも刑罰を受けるわけではありません。ただ、逮捕後、起訴され裁判で有罪と認定され、その裁判が確定すれば刑罰を受けます。また、同時に前科が付きます。
懲役実刑であれば刑務所に服役し、罰金であれば命じられた金額を納付する必要があります。前科がつくと一定期間、資格、免許を必要とする仕事に就けなくなるなどの影響が出る可能性があります。
前科とは?前歴との違いや前科がつく5つのデメリットを弁護士が解説
暴行事件の傾向は?
では、暴行罪ではどのくらいの確率で検挙され、起訴・不起訴となっているのでしょうか?暴行事件の傾向を、令和3年度版犯罪白書(令和2年度の統計)を使ってみていきましょう。
検挙率
令和2年度の暴行罪の認知件数(※1)は27,637件、検挙件数(※2)は24,315件でしたので、検挙率は約88%ということになります。
※1認知件数:警察が把握できた暴行事件の件数
※2検挙件数:警察が暴行事件の加害者を被疑者として特定した件数
起訴率
令和2年度に暴行罪で刑事処分(家庭裁判所送致を除く)を受けた人は14,682人でした。そのうち暴行罪で正式起訴された人は766人、略式起訴された人は3,386人でした。つまり、暴行罪で正式起訴される確率は約5%、略式起訴される確率は約23%ということになります。
不起訴率
一方、暴行罪で不起訴となった人は10,530人でしたので、暴行罪で不起訴となる確率は約72%となりますから、暴行罪では不起訴となる確率が高いことがわかります。
なお、不起訴のうち起訴猶予で不起訴となった人が9,287人、起訴猶予以外で不起訴となった人が1,243人で、同じ不起訴でも起訴猶予による不起訴が多いことも特徴です。
暴行罪で逮捕された後の流れ
暴行罪で逮捕された後は、以下の流れで手続きが進んでいきます。
- 警察官の弁解録取を受ける
- 逮捕から48時間以内に検察官に事件と身柄を送致される(送検)
- 検察官の弁解録取を受ける
- ②から24時間以内に検察官が裁判官に対し勾留請求する
- 裁判官の勾留質問を受ける
→勾留請求が却下されたら釈放される - 裁判官が検察官の勾留請求を許可する
→10日間の身柄拘束(勾留)が決まる(勾留決定)
→やむを得ない事由がある場合は、最大10日間延長される - 原則、勾留期間内に起訴、不起訴が決まる
- 正式起訴されると2か月間勾留される
→その後、理由がある場合のみ1か月ごとに更新
→保釈が許可されれば釈放される - 勾留期間中に刑事裁判を受ける
暴行罪で逮捕され解決に至った事例
ここでは、弊所が解決した暴行事件の事例を2つ紹介します。
面識のない人に暴行を加えた事例
被疑者は、夜間にファミレスで友人と飲食していたところ、臨席で飲食した面識のない男性の目つきが悪く、睨まれていると誤解し、男性に詰め寄り、男性の背中を数回蹴る暴行を加えた事案。
被疑者は、ファミレス店による通報で現場に駆け付けた警察官に逮捕されましたが、身柄拘束を継続する必要がないと判断され、送検前に釈放されました。しかし、被害者側に弁護士がつき、被疑者は代理人弁護士を通じて示談金80万円の支払いを求められ、金額に納得がいかなかったことから弁護士に相談、依頼されました。
弁護士は被害者側の弁護士に連絡を入れ、示談交渉を始めました。そして、交渉を継続しているうち、被害者側の弁護士は被害者の過度な要求に押されて上記のような高額な示談金の支払いを請求してきた事実が判明し、最終的には示談金10万円で示談することができました。
事件は検察庁に送致されましたが、送致前に示談を成立させ、その結果は警察に伝えていましたから、送致先の検察官にも示談が成立していることは伝わっています。その結果、刑事処分は不起訴(起訴猶予)で終わりました。
相互暴行の事例
被疑者が、知人と居酒屋で酒を飲んでいた際、被疑者がかつて交際していた女性の件で知人と口論となり、相互に暴行を加えて周囲を巻き込む騒動に発展させた結果、通報により駆けつけた警察官に逮捕された事案。
幸いお互いに怪我はなく、被疑者、知人ともの暴行罪の被疑者として立件されました。弁護士は、警察段階で被疑者から依頼を受け、被疑者から暴行の状況などを詳細に聴き取り、警察に被疑者が知人に一方的に暴行を加えた事案ではないことを主張しました。また、知人に対して示談意向があることを伝えるとともに、警察にも示談交渉中であることを伝えました。
示談交渉をはじめた当初は、過大な示談金を要求されるなど感情的な対応を取られ交渉が難航しました。しかし、弁護士が知人に、裁判となれば手間や費用が掛かる上に希望通りの金額となる可能性は低いこと、示談することは知人にとってもメリットがあることなどを丁寧に説明するなどして粘り強く交渉した結果、示談することができました。
被疑者の事件自体は、警察から検察庁へ送致されましたが、送致直後に示談でき、示談書の写しと不起訴処分を求める旨の意見書を検察官に提出した結果、不起訴(起訴有訴)を獲得することができました。
暴行事件で逮捕された(されそう)場合にすべきこと
最後に、暴行罪で逮捕される前、された後にすべきことをご紹介します。
逮捕される前にすべきこと
逮捕される前にやるべきことは被害者との示談交渉、警察への出頭、弁護士への相談・依頼です。
被害者との示談交渉
被害者と面識があり被害者の連絡先を把握しており、被害者とコンタクトを取れるようであれば被害者と示談交渉します。示談を成立させることができれば、被害者に警察に被害届を提出しないことに合意していただけるため、被害者から警察に被害届が提出されません。被害者から警察に被害届が提出されなければ、警察が事件を認知することはなく逮捕を回避できます。
警察への出頭
次に、警察へ出頭することです。警察へ出頭し、事情聴取において罪を認める供述をするのであれば、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれがないと判断され逮捕を回避できます。また、警察が暴行事件のことを認知する前に出頭した場合は自首扱いとされ、刑の減軽にもつながる点でもメリットです。
弁護士への相談・依頼
もっとも、被害者との示談交渉も警察への出頭も自分一人の力で行うのではなく、必ず弁護士に相談しましょう。
そもそも加害者との直接の示談交渉には応じない被害者がほとんどです。一方、弁護士に依頼すれば示談交渉から成立までスムーズに手続きを運ぶことができます。
また、警察への出頭も一人では不安なことが多いと思います。逮捕されないという保証もありません。そのため、あらかじめ弁護士に相談し、対策を取った上で弁護士に同伴してもらって出頭した方が安心です。
なお、ここまでは罪を認めていることを前提の話ですが、罪を認めない場合もはやめに弁護士に相談し、取調べ等のアドバイスを受けることが大切です。
逮捕された後にすべきこと
逮捕された後は一刻もはやく弁護士との接見を要請しましょう。警察官に申し出れば、警察官が手配してくれます。知っている弁護士や逮捕前から選任している弁護士がいれば、その弁護士を指定して要請します。知っている弁護士がいない場合、逮捕前から選任していない場合は当番弁護士との接見を要請します。
接見では取調べのアドバイスのほか、今後の手続きの流れ、見込み等について説明を受けることができます。また、刑事事件では私選、国選の弁護士がいますので、弁護士からそれぞれのメリット・デメリットの説明を受けた上でいずれを選任するのか決めるとよいです。
もしご家族が逮捕されて、どの弁護士に相談・依頼して良いか迷われているようでしたら弊所までご相談ください。弊所では暴行・傷害事件での被害者との示談交渉、逮捕の回避、不起訴処分の獲得を得意としており実績もあります。親身誠実に、依頼者を弁護士が全力で守ります。相談する勇気が解決へと繋がります。
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