
「被害届を出されたら、この先どうなってしまうのか」。警察からの連絡を待ちながら、そんな不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
被害届が受理されると、警察が捜査を進め、在宅のまま呼び出されるか逮捕されるかを経て、最終的に検察官が起訴か不起訴かを決めるのが基本の流れです。ただ、受理されたからといって、逮捕されるとは限りません。処分が決まる前に示談が成立すれば、不起訴で終わる可能性が高まります。示談とは、被害者との話し合いで事件を解決することで、通常は弁護士を通じて進めます。
この記事では、被害届を出された側の弁護に注力する弁護士が、次の点を解説します。
- 被害届が受理されてから処分までの流れ
- 逮捕される事件と在宅で進む事件の分かれ目
- 被害届が出されたかを自分で確かめられるのか
- 示談で取り下げにつなげる対処法
お読みいただくことで、この先の見通しと、何から手をつければよいかがわかります。
なお、すでに警察から連絡が来ている方は、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。地域を問わずご相談を承っています。
| 気軽に弁護士に相談しましょう |
|
被害届とは?法律上の位置づけと効力
被害届は、被害を受けたと考える人が、警察に被害の事実を届け出る書面です。出された側が見通しを立てるために、まず法律上どう扱われるのかを押さえておきます。
被害届は誰が、どこに出すのか
被害届を出すのは、被害を受けたとする本人やその家族で、提出先は警察署や交番です。提出できる期間そのものに決まりはありませんが、起訴できる期間には公訴時効という上限があります。書式や記載事項は「被害届の出し方と書き方は?受理されない時の対処法も解説」で扱っています。
被害届は捜査のきっかけの一つにすぎない
被害届それ自体には、相手を処罰する効力も、警察に捜査義務を課す効力もありません。刑事訴訟法189条2項は、司法警察職員は「犯罪があると思料するとき」、つまり犯罪があったと考えるときに捜査すると定めており、被害届の有無を捜査開始の条件にしていません。
そのため、被害届が出ていない事件でも、現場での検挙や第三者からの通報をきっかけに捜査が始まることはあります。
被害届と告訴・告発は何が違うのか
被害届と混同されやすいものに、刑事告訴と刑事告発があります。3つの違いを表にまとめます。
| 項目 | 被害届 | 告訴 | 告発 |
| 誰がするか | 被害を受けたとする本人や家族 | 被害者などの告訴権者(刑事訴訟法230条) | 犯罪があると考えた人なら誰でも(同法239条1項) |
|---|---|---|---|
| 処罰を求める意思 | 含まない(被害の申告) | 含む | 含む |
| 受けた警察の扱い | 捜査するかは事件の内容による | 書類と証拠物を速やかに検察官へ送付する(同法242条) | 告訴と同じ(同法242条) |
| 処分結果の通知(同法260条) | 対象外 | 検察官から告訴人へ | 検察官から告発人へ |
もっとも、親告罪でなければ、被害届と告訴のどちらでも起訴はありえます。告訴がなければ起訴できない親告罪と違い、多くの罪は告訴がなくても起訴できる非親告罪で、告訴も被害届も、起訴するための法律上の条件ではないからです。自分の事件が親告罪に当たるかどうかは「【一覧表つき】親告罪とは?告訴期間と非親告罪との違いを解説」をご覧ください。
被害届を出されたらどうなる?受理から処分までの流れ
受理された被害届をもとに、警察は事件性を見極め、犯罪の疑いがあれば捜査に入って、在宅のまま呼び出すか逮捕するかを決めます。最終的に起訴か不起訴かを判断するのは検察官です。
ここからは、その流れを5つの段階に分けて見ていきます。ご自身の事件が今どの段階にあるのかを確かめながらお読みください。
- 警察が被害届を受理する
- 事件性が判断され、捜査が始まる
- 出頭を求められる、または逮捕される
- 事件が検察官に送られる
- 起訴か不起訴かが決まる
①警察が被害届を受理する
被害を受けたと考える人は、警察署や交番に被害届を出します。犯罪捜査規範61条1項では、犯罪による被害の届出を受けたとき、管轄区域内の事件かどうかにかかわらず受理する義務があると定められており、条文上の例外はありません。もっとも実務では、民事の問題と判断されたり被害の内容があいまいだったりして、相談として扱われ受理に至らないこともあります。
ただし受理は、申告どおりの犯罪事実があったと警察が認めたことまでは意味しません。
②事件性が判断され、捜査が始まる
受理されても、その日から捜査が動き出すとは限りません。警察は被害届の内容と提出された資料を照らし合わせ、犯罪といえる行為があったのか(事件性)を見極めます。
犯罪の疑いがあると判断されると、裏付けの捜査が始まります。もっとも、先に呼ばれるのは届け出た側や周囲の関係者で、疑いをかけられた本人にいきなり連絡が来るとは限りません。事情聴取や防犯カメラの映像・通信記録の確認が先に進むため、しばらく何の音沙汰もない状態が続くことがあります。
③出頭を求められる、または逮捕される
捜査が進み、疑いをかけられた人物が絞り込まれると、被害届を出された本人に連絡が入ります。多くは電話や書面で警察署に来るよう求められる任意の出頭要請で、このように逮捕されずに捜査が進む事件を在宅事件といいます。
正当な理由なく出頭を拒み続けると、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるとみられ、逮捕につながることもあります。警察からの呼び出しへの対応は「出頭命令(出頭要請)とは?警察からの命令を無視したら逮捕される?」をご確認ください。
逮捕された場合は、留置の必要があれば、身柄拘束を受けた時から48時間以内に事件と身柄が検察官へ送られます(刑事訴訟法203条1項)。検察官は、必要と判断すれば、被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官へ勾留(起訴前に身体の拘束を続ける処分)を請求します(同法205条1項)。勾留が決まると、勾留請求の日から原則10日間、延長されれば最長20日間拘束が続きます(同法208条)。
④事件が検察官に送られる
逮捕されていない事件では、被害届をもとにした捜査が一通り終わると、事件は書類や証拠物とともに検察官へ送られます。警察が事件を検察官へ送ることを送致といい、このように身柄を拘束しないまま送る場合は書類送検とも呼ばれます。刑事訴訟法246条は、警察が捜査をした事件は原則としてすべて検察官へ送るものとしています。
例外が微罪処分です。犯罪事実が極めて軽微で、検察官があらかじめ指定した事件については、警察は事件を送致しないことができます(刑事訴訟法246条ただし書、犯罪捜査規範198条)。この場合、警察が注意や訓戒を与えて手続きを終えます。法務省の『令和7年版犯罪白書』によれば、令和6年に刑法犯で微罪処分となった人は4万7,974人で、刑法犯の検挙人員の25.0%にあたります。
微罪処分となれば刑罰を受けることはなく、前科もつきません。ただし、被疑者として検挙された記録である前歴は残ります(「微罪処分とは?要件・対象事件・デメリットと前歴がつくか解説」)。
⑤起訴か不起訴かが決まる
送致を受けた検察官は、必要に応じて改めて本人から事情を聴き、起訴するか不起訴とするかを決めます。起訴するかどうかを決めるのは検察官であり(刑事訴訟法247条)、被害届を出した側に決定権はありません。
不起訴には、証拠不十分の場合のほか、事実は認められても反省や示談などの事情から裁判にかける必要がないと判断される起訴猶予があります。不起訴となれば前科はつかず、裁判も開かれません。起訴猶予の要件は「起訴猶予とは?前科はつく?不起訴・起訴との違いを解説」で詳しく解説しています。
なお、20歳未満の少年の事件は、犯罪の疑いがあれば原則として家庭裁判所へ送られるため、ここで説明した微罪処分や起訴・不起訴の流れとは異なります(少年法41条・42条1項)。
被害届を出されてから今どの段階にいるのか分からない場合は、弁護士にご相談ください。
被害届が受理されても逮捕されるとは限らない
被害届が受理されても、それだけで身柄を拘束されるとは限りません。逮捕には法律上の理由と必要性がそろう必要があり、在宅のまま捜査が進む事件もあります。
理由とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる「相当な理由」があることです(刑事訴訟法199条1項)。必要性は逃亡や罪証隠滅(証拠を隠したり作り替えたりすること)のおそれから判断され、明らかに逮捕の必要がないときは逮捕状は発付されません(同条2項ただし書、刑事訴訟規則143条の3)。逮捕の種類と要件は「逮捕の種類は3つ|通常・現行犯(準現行犯)・緊急の要件と違い」で解説しています。
逮捕されずに在宅で捜査が進むケース
被害届が出されていても、逃亡や証拠隠滅のおそれが小さいとみられやすいのは、次のような事情がそろっている場合です。
- 定まった住居があり、本人の所在が明らかである
- 勤め先や学校があって、生活の基盤が動かない
- 事実を認めており、呼び出しに毎回応じている
- 被害の程度が重くなく、弁護士を通じた被害者との話し合いが進んでいる
在宅事件なら、ふだんどおりの生活を続けながら呼び出しに応じて取調べを受けます。勤務先を長く休む必要がなく、周囲に知られる可能性も下がります。ただし、事件が終わったわけではありません。処分までの期間は「在宅事件の流れと期間|起訴率・不起訴率と身柄事件との違い」で解説しています。
逮捕されるケース
反対に、住居が定まっていない、呼び出しに応じない、被害者や目撃者と接触できる立場にあるといった事情があれば、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとみられ、被害届を出された側が逮捕されることもあります。
逮捕・勾留された後でも、勾留の理由や必要がなくなれば勾留は取り消され、途中で釈放されます(刑事訴訟法207条1項、87条1項)。示談成立が確認されれば、拘束を続ける必要がないと判断されやすくなります。勾留の要件や期間は「勾留とは?逮捕との違いと要件、勾留期間を解説」をご確認ください。
逮捕が心配な場合は、早めに弁護士にご相談ください。
被害届を出された側に生じるデメリット
被害届を出されると、次のような不利益が生じるおそれがあります。
- 取調べを受け、事情によっては逮捕される
- 勤務先や学校に事件が知られ、懲戒処分や退学処分に至ることがある
- 起訴されて有罪となれば、略式命令の罰金でも前科が残る
被害届が出されただけで、勤務先や学校に警察から知らせが行くことは原則としてありません。知られるきっかけは、逮捕による欠勤・欠席や、自宅・勤務先の捜索、平日の日中の出頭要請といった、その後の手続きです。会社への影響については「逮捕されたら会社に連絡はいく?【原則として連絡はされない】」でも詳しく解説しています。
略式命令とは、裁判所が公判を開かずに罰金を科す手続きで、これでも有罪であることに変わりはありません。前科は、就職や転職の際の申告や資格の制限に影響することがあります。前科を避けるために取れる手段は、処分が決まってからでは限られます。
被害届が出されたか確認できる?警察から連絡が来ないとき
被害届を出された側が、提出の有無を自分で確かめる手段は、実際にはほぼありません。警察に尋ねても、受理状況は教えてもらえないのが通常です。弁護士が尋ねても、回答は得られないことが多いといえます。
警察から連絡が来るまでの期間や逮捕されるまでの期間は、事件によって大きく異なります。疑いをかけられた人がすぐ特定できる事件では数日で連絡が来ることもありますが、映像や記録の解析を要する事件では数か月先や年単位になることもあります。時間がかかっている理由も、外からは見分けられません。
連絡が来ないことは、安心の材料になりません。裏付けが固まった段階で、ある日突然、逮捕状を持った警察官が自宅を訪れることもあります。
心当たりがあり相手も分かっているなら、弁護士を通じて被害者側に示談を申し入れる過程で、被害届の状況が分かることもあります。不安を抱えたまま待たず、早めに弁護士にご相談ください。
被害届は取り下げてもらえる?取り下げの効果と限界
出された被害届は、届け出た本人の意思で取り下げられます。もっとも、取り下げには、捜査を打ち切らせたり起訴をできなくしたりする効力はありません。警察は捜査をした事件を原則として検察官へ送ることとされているからです(刑事訴訟法246条)。取り消されると起訴できなくなる親告罪の告訴とは、この点が異なります。
それでも事実上の影響は小さくありません。被害届の取り下げは、被害者が処罰を求めなくなったことを示す事情として受け取られます。検察官は、犯人の性格・年齢・境遇、犯罪の軽重や情状、犯罪後の状況から起訴しないことができるとされており(刑事訴訟法248条)、処罰感情が和らいだ事情は、不起訴に傾く方向で考慮されます。
効き方は時期によっても変わり、送致前なら微罪処分、処分が決まる前なら不起訴処分の可能性が高まります。取り下げてもらう具体的な方法と、いつまでに動く必要があるかは、警察が捜査している段階・検察官が処分を決めるまで・起訴された後の3つに分けて「被害届を取り下げてもらう方法と期間、メリットと注意点」で説明しています。
被害届を出されたときの対処法と示談の進め方
示談とは、当事者どうしの話し合いで事件を解決し、その内容に合意することをいいます。刑事事件では、謝罪と被害の弁償を前提に、示談金の額や支払方法、被害届の取り下げなどを取り決めます。なお、身に覚えがない場合も含め、相手に自分から連絡するのは避け、まず弁護士に相談してください。
「被害届を出す」と言われた段階で弁護士に相談する
相手から「被害届を出す」と言われたら、一人で対応しようとせず、その段階で弁護士に相談してください。
被害届を出さないことや取り下げることと引き換えに金銭を求められても、その場で応じないでください。提示された額が事案に見合うのか、支払えばどこまで解決するのかを判断するのは困難で、一度応じれば、さらに求められる口実を与えかねません。
被害者との示談を先に進めるか、自首を含めて自分から警察に出向くかといった判断も、事件の内容によって分かれます。どう動くかは、弁護士と相談して決めてください。
処分が決まる前のできるだけ早い段階で申し入れる
示談は、処分が決まる前にまとまるほど刑事処分に与える影響が大きくなります。起訴されたあとに成立しても刑事裁判が止まるわけではなく、量刑の軽減につながる事情として考慮されるにとどまります。
在宅事件では、いつ送致され、いつ処分が下されるのかを、被害届を出された側が事前に知ることはできません。時間が経つほど被害者の処罰感情も固まりやすいため、早い段階での申し入れが大切です。
交渉の窓口は弁護士に任せる
被害届を出された側が示談交渉を直接進めようとしても、応じてもらえないことが少なくありません。被害者にとっては、自分に危害を加えた相手から連絡が来ること自体が恐怖だからです。
そもそも、被害届を出された側が被害者の氏名や連絡先を知らないこともあります。捜査機関が被害者の連絡先を被害届を出された側に知らせることは通常ありませんが、弁護士が窓口となる場合には、被害者本人の同意を条件に弁護士に限って伝えられるのが一般的な取扱いです。
弁護士が間に入れば、真摯な謝罪を落ち着いて伝えたうえで、示談金の額や支払方法、被害届の取り下げに協力してもらえるかを詰められます。捜査機関にも、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを意見書で伝えられます。示談交渉は弁護士にお任せください。
被害者に自分から連絡しない
連絡先を知っていても、自分から被害者に連絡を取るのは避けてください。謝罪のつもりの一報でも、相手には圧力と受け取られかねません。捜査機関からは口裏合わせを図ったと見られ、証拠隠滅のおそれを疑われて逮捕を招くことにもなりかねません。
知人や家族に仲介を頼むのも同じです。被害届を出された側の窓口は、弁護士に一本化してください。
示談書に取り下げと宥恕の意思を書いてもらう
示談がまとまったら、内容を示談書という書面に残します。被害届の取り下げが目的であれば、被害者が被害届を取り下げる意思と、取下げ書の提出に協力してもらう旨を記載します。あわせて宥恕(ゆうじょ・加害者を許し、処罰を求めないという意思表示)の文言があると、検察官が処分を判断するうえで有利な事情として評価されやすくなります。
支払方法や清算条項(当事者間に他の債権債務がないことを確認する条項)も盛り込み、完成した示談書は捜査段階に応じて警察または検察官へ提出します。示談金の決め方は「刑事事件で示談するメリットは?示談金相場と流れを徹底解説」をご参照ください。
被害届を出されてお悩みの方は弁護士にご相談ください
被害届を出されても、受理された時点では処分は何も決まっていません。前科を避けられるかどうかは、検察官が結論を出す前にどれだけ動けたかで大きく変わります。
本人が示談を進めようとすると、相手の処罰感情を強めかねません。弁護士が窓口になれば、謝罪と被害弁償の条件を落ち着いて詰め、捜査機関にも事情を的確に伝えられます。
警察から呼び出しを受けている方、ご家族が逮捕された方、連絡はまだなくても心当たりのある方。先の見えない状況は、精神的な負担も大きいものです。時間が経つほど、選べる手段は狭まっていきます。
当事務所は刑事事件に注力し、被害届の取り下げや不起訴の獲得に取り組んできました。ご依頼者の不利益を最小限に抑えるため、弁護士が迅速に動き、ご家族や勤務先への影響にも配慮しながら対応します。24時間受付で、全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
| 気軽に弁護士に相談しましょう |
|
この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

