
※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。
事案の概要(相談前の状況)
状況:勤務先の飲食店から高額の賠償請求を受けている
Aさんは接待飲食店であるクラブに勤務しておりましたが、勤務先でトラブルを起こし、店に迷惑をかけてしまいました。
店のオーナーであるBさんは、Aさんに対し、警察を介入させず、示談での解決をするのであれば、Bさんの請求に応じるしかないと要求しました。AさんはBさんの請求額が数百万円とあまりにも高額であったことから、本当に支払う義務があるのかどうか分からず迷ったものの、刑事事件になることは避けたいと考え、Bさんの要求を受け入れることにしました。
Bさんは、Aさんに対し、逃げられてしまう可能性もあるので店で働きながら示談金を払うよう要求してきました。他に働き口も無かったことからAさんはこの要求も受け入れました。
BさんはAさんが何ら争うことをせず、自身の要求を全て受け入れたことから、さらに自分の要求を通せると考えたようです。Aさんの給料を一方的に減額する一方、雑用の全てを任せました。また、給料の半分を弁済として天引きしていましたが、金額が少ないと非難し、性風俗店で勤務することを強要してきました。
さらに、Aさんの携帯電話を没収し、少しでも気に入らないことがあるとAさんに対して暴言を吐くほか、暴力をふるって怪我をさせたこともありました。
Aさんは自分が招いたことだからやむを得ないと我慢しながら、Bさんに対して弁済を続けておりましたが、最初に聞いていた弁済額が減るどころか、あらゆる因縁をつけられ、金額はどんどん増えていくという状況でした。
朝から晩まで行動を管理され、暴言や暴行を受け続けたことで、Aさんは精神に不調をきたします。Aさんの異常な状態に気づいた交際相手が、Aさんから事情を聞きだし、弊所に連れてきました。
弁護士の対応と解決への流れ
Aさんは相談時も酷く怯えており、Bさんに自分の行動が監視されているのではないかとしきりに不安を口にしていました。また、Bさんから、いつでも刑務所に送ることができると言われ続けたことから、過去にBさんの店で起こしたトラブルにより、警察に捕まってしまうのではないかと心配しておりました。
Aさんが過去に起こしたトラブルの内容を伺うと、たしかに、刑事責任を負う可能性はありましたが、お伺いする限り、客観的な証拠が無いようだったので、警察は簡単には動けないだろうということ、仮に警察が介入してきたとしても、Bさんに対し弁済を続けており、今後も正確な金額が分かるのであればその限りにおいて弁済をする意向があることを伝えましょうと説明しました。
そのうえで、当職から、Aさんの刑事責任がどうなるかという問題やBさんに対する弁済も重要だが、最も重要なことはAさんの心身の安全を確保することであると伝えました。
Aさんは、いわば洗脳状態にあり、Bさんから逃げることができないと考えておりました。相談が終わった後も、Bさんの店に戻るという話をしていたため、暴行を受けるような場所に戻ってはいけないと説得し続けました。
かなり時間を要しましたが、少しずつAさんは落ち着き始め、Bさんとの直接の関係を解消したいと本音を語ってくれるようになりました。ただ、やはり恐怖心が大きいことから、自分でBさんとやり取りをするのは不可能であるとのことで、当職が対応を引き取ることになりました。
相談当日もAさんはBさんの店で勤務する予定であったことから、ご依頼を受けた後、すぐにBさんに連絡をして、当職がAさんの代理人になったことを伝えました。併せて、Aさんは今後Bさんの店には出勤しないこと、Aさんに直接の連絡をすることはしないで欲しいと伝えました。
Bさんは逆らうはずのないAさんが代理人を通じて連絡してきたことに驚いた様子でしたが、すぐに自分の主張を始めました。Bさんが言うところでは、AさんはBさんの店でトラブルを起こし、自ら示談金の額を決めて支払うと言ってきた、給料の半分を弁済に回すと言ってきたのもAさんである、携帯電話は自ら置いていったし、むしろ預かって欲しいと言われた、脅迫や暴行の事実は一切ない、Aさんが店に居ることで逆に迷惑をしており、むしろ出勤をして欲しくないと考えていたところ、とのことでした。
当職からは、事実認識に大きな隔たりがあることを説明したうえで、BさんがAさんに対して引き続き示談金を支払うよう請求するのであれば、法的な根拠を明らかにしたうえ、書面で当職まで連絡するよう伝えました。
Bさんは弁護士に相談し、連絡をすると話しておりましたが、その後、何カ月経過してもBさんや代理人の弁護士から連絡が来ることはなく、一応の終件となりました。
解決結果と弁護士のコメント
刑事処分:被害届提出なし(逮捕回避・前科つかず)
本件では高額な賠償請求をするとともに、弁済のための労働を強制し、継続的な暴言や暴行で支配するという凄惨な事案でした。
過去にお受けした案件にも本件と同様に、職場で起こしたトラブルについて刑事事件にされたくなければ要求を飲むよう働きかけられたケースがありましたが、いずれのケースでも要求を飲む前に当職が介入したため、適切な範囲での賠償と無理のない支払によって刑事事件化を回避することができました。本件でも、もっと早く介入することができていればここまで辛い思いをせずに済んだかもしれません。
不当要求(法的な根拠のない請求や、不相当に過大な請求を、暴行など不当な手段によって実現しようとすること)の事案では、周囲に相談させないよう孤立させ、ことあるごとに不安を煽るという手口が用いられることが多くあります。最初こそ相手方の要求はおかしいと感じるようですが、少しずつ判断能力が低下し、次第に相手方の言うことが全てであると考えるようになっていくようです。
本件のように、24時間拘束されていた訳ではなく、警察や弁護士に相談するタイミングがあったにもかかわらず、マインドコントロールのように心が支配されていきます。Aさんの交際相手がAさんの異変に気づき、相談に連れて来てくれたので、たまたま介入をすることができましたが、異変に気づいてくれる人間が周りに居なかったならば、いつまでも抜け出せずにいた可能性もあります。
不当な要求を受けた場合、すぐにご相談をいただくことが重要です。一度、相手方の要求を受け入れれば、相手方の要求はエスカレートし、少しずつ抜け出せなくなっていく可能性があります。このように脅迫や恐喝による不当要求でお困りの場合の対処法については、「脅された時の対処法は?恐喝・脅迫被害の相談先も弁護士が解説」もあわせてご覧ください。
以前、不当要求はヤクザなど反社会的勢力に属する人物から受けるものであると考えられておりました。しかしながら、最近ではヤクザなどが相手方となる場合に限らず、普通の方が相手方になる場合でも散見されます。ネットを通じて、相手方の身元が分からないまま関係を深めることが珍しくなくなった状況が、不当要求のトラブル増加の一因になっている気がします。
いつでも不当要求に巻き込まれる可能性があることを頭に留め、少しでも自分での対応に困るようであれば、速やかに弊所までご相談をいただきたく思います。
あわせて読みたい:
| 誰でも気軽に弁護士に相談できます |
|
この記事の監修者
脅迫・恐喝被害の解決に豊富な実績を持つ。一般社団法人 詐欺・不当要求対策協会の代表理事として、不当要求対策の研究・啓発活動にも取り組んでいる。「警察沙汰にしたくない」「家族や会社に知られたくない」といった被害者特有の事情に寄り添い、粘り強い交渉で解決に導く。他の事務所で断られた案件にも積極的に対応。

