「SNSで人と揉めてしまい、住所特定すると言われました。怖いので助けてください」
こういった相談が弁護士に寄せられることがあります。
たしかに、匿名で安心してネットを利用していたのに、住所を特定すると言われたら、押しかけられて危害を加えられるのでは…と不安になりますよね。
では、「住所特定する」という相手の言葉は脅し(脅迫)になるのでしょうか?
また、そもそもインターネットでしか接触したことのない人の住所を特定することが出来るのでしょうか?
ここでは、ネット脅迫問題に詳しい弁護士が、これらの疑問点を解消すべくわかりやすく解説していきます。
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目次
「住所特定する」は脅迫になる?
人を脅迫すれば、脅迫罪(刑法222条)が成立することがあります。
刑法222条では、「ある人、またはその人の親族の、生命・身体・自由、名誉、財産に対して害を加えることを告知して脅迫した者は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処する」と書かれています。
つまり、脅迫罪が成立するには、害悪の告知がされる必要がありますが、「住所特定する」という台詞は、生命、身体、自由、名誉、財産のどれに対しても害を加える内容ではありません。
そのため、言われた側が脅しだと受け止めたとしても、脅迫罪が成立する可能性は低いでしょう。
ただし、「住所特定する」だけでなく、「特定して家に行ってやる」と言われた場合、一般的には、暴力を受けたり家の物を壊されたりするのではと畏怖(恐怖)するのが普通です。
そのためこの場合は、脅迫罪が成立する余地があるでしょう。
脅迫罪の成立要件については以下の関連記事で詳しく書かれていますので是非ご一読ください。
そもそも住所特定なんてできるの?
ネットで言い争いになった場合、IPアドレスや個体識別番号から住所特定してやると脅されることがあります。
では本当にそんなことが可能なのでしょうか?
原則、IPアドレスや個体識別番号を知ることはできない
IPアドレスとは、インターネット上の住所のようなもので、123.456.789.01といった数字(番号)で構成されています。
また、個体識別番号とは、携帯やスマホ、タブレットなどの各端末に割り振られた固有の数字のことです。
携帯会社によってその呼び方は異なり、ユーザーIDやUIDなどと呼ばれています。
しかし、そもそもの話、IPアドレスや個体識別番号を一般ユーザーが知ることはできません。
皆さんがSNSやブログに投稿したり、誰かとDM(ダイレクトメッセージ)やチャットをした場合に、「IPアドレスを抜いてやる!」などと相手が息巻いていたとしても、単なるハッタリですので心配不要です。
例外として、サイト運営者であれば知ることができる
単にサイトの一利用者であれば、上記のように何も知ることができませんが、サイト運営者(管理者)であれば別です。
サイト運営者であれば、自分のサイトにアクセスした人のIPアドレスや個体識別番号を収集することができ、サーバーのログを確認することでそれらを知ることができます。
そのため、揉めた相手がサイト運営者であれば、これらを知られてしまうこともあるでしょう。
では、IPや識別番号から住所(その他、氏名など)を調べることはできるのでしょうか?以下で説明します。
IPアドレスから住所特定はできない
まずは以下のリンクをクリックして、あなたのIPアドレスをご自身で確認してみましょう。
ご覧のように、ただの数字の羅列です。
この数字の羅列からわかることは、サイト訪問者がどんなブラウザ(Chrome、safariなど)を利用しているのか、どのプロバイダー(docomo、au、softbank、ocnなどのインターネット接続事業者)と契約しているのかといったものです。
また、IPアドレスから大まかな住所を調べるサイトもありますが、国や都道府県まではわかっても、市区町村レベルでは正確ではなく、もちろん細かな番地等は一切判明しません。
つまり、IPアドレスから住所等の個人情報を特定することは基本的にはできないのです。※例外があります。後で解説します。
参考:IPアドレス開示請求は意味ない?犯人特定ができない4つのケース
個体識別番号から住所特定はできない
個体識別番号とはどんなものか実際に見てみたい方は、電話発信画面で、「*#06#」と入力すれば表示されます(15桁の数字)。
IPと同様に単なる数字の羅列であることがおわかりいただけると思います。
しかしながら、個体識別番号は、各端末に割り振られた世界に一つしかない番号です。
そのため、その番号を辿って住所特定される余地があるのでは?と不安に思われる方もいることでしょう。
しかしご安心ください。以下のサイトをご覧になっていただけたらわかりますが、各通信会社は、個体識別番号から利用者を特定することができないと明言しています。
しかも、警察等の公的捜査機関から問い合わせがあっても、何も回答できることがない(つまり個体識別番号から利用者特定ができないということ)と断言しています。
通信会社すら個体識別番号から利用者特定ができないのに、一個人が住所特定などできるはずもないことはご理解いただけたと思います。
住所特定されないために注意すべきこと
上で触れたように、原則的には、IPアドレスを人に知られることはありませんし、仮に知られたとしても住所まで調べられることはありません。
ただし、アナタが相手の個人情報をネットで晒したり誹謗中傷の書き込みをして、相手のプライバシー権や名誉権を侵害すれば話は別です。
この場合、相手方は発信者情報開示請求という法律で認められた手続きに則って、アナタの氏名や住所などの個人情報を取得することができます。
そうなれば、損害賠償請求をされたり、名誉棄損罪や侮辱罪で警察に被害届を出されるリスクもあるでしょう。
そのため、ご自身も人の権利を侵害するような書き込みをしないようにしましょう。
また、携帯番号から住所を調べることもできますので、ネットで知り合った素性も良くわからない相手に安易に携帯番号を教えないことも重要です。
「住所特定する」と言われた時の対処法
基本的には無視かブロックの対処法で十分です。
どうしても不安ならご自身のSNS等のアカウントを削除しましょう。
或いは、ブログ/掲示板やSNSの運営者に通報することで、相手のアカウントを停止(垢BAN)してもらえる場合もあります。
「住所を特定する」といった台詞に加え、「特定して、家に押しかける・殴りに行く・殺す・自宅に火をつける・住所をネットに晒す」などと脅された場合には、警察に脅迫被害の相談をしてもいいでしょう。
なお、警察が被害届を受理してくれない場合や、民事事件として穏便に解決したい場合は、脅迫被害に強い弁護士に相談するようにしましょう。
弁護士に依頼すれば、逆に脅迫加害者の身元を特定し、交渉により脅迫行為をやめさせたり、慰謝料請求することもできます。
弊所では、弁護士による全国無料相談を受け付けておりますので、ネットの脅迫被害でお困りの方はお気軽にご相談ください。相談する勇気が解決への第一歩です。
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