脅迫罪は警察が動かない?3つの理由と対処法を解説

「脅迫されたのに、警察が動いてくれない」「どうせ取り合ってもらえないだろう」。そんな思いを抱えていませんか。

結論からいえば、脅迫罪は内容と証拠しだいで警察が動く犯罪です。対面や電話、手紙、SNSやメールなど、手段を問わず、脅迫が逮捕につながった例も実際に珍しくありません。ただし、動いてもらうには、押さえておくべき順序とコツがあります。

この記事では、恐喝・脅迫事件の解決実績が豊富な弁護士が、次の点を解説します。

  • どんな言葉・書き込みが脅迫罪になるのか
  • なぜ警察は動いてくれないのか
  • 相談前にやるべき証拠の保全方法
  • 警察を動かすための対処法

なお、脅迫被害についてお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。

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脅迫罪とは?どんな言葉・書き込みが該当するのか

脅迫罪とは、本人やその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に害を加えると告げて(これを「害悪の告知」といいます)、人を脅す犯罪です。刑法222条に定められています。

第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

出典:刑法|e-Gov法令検索

法定刑は2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金です。
※拘禁刑は、2025年6月1日に懲役刑と禁錮刑を一本化した刑罰です。本記事では現行の「拘禁刑」で表記しています。

脅迫罪に当たる言葉・当たらない言葉

害悪を告げる手段は問いません。対面や電話はもちろん、メールやLINE、SNSへの書き込みであっても、内容しだいで脅迫罪に問われるケースもあります。面と向かって「殺すぞ」と告げる場合も、掲示板に「〇〇を殺す」と書き込む場合も、同じように脅迫罪に当たり得ます。

ただし、害悪の告知の対象は本人かその親族に限られます。「お前の友人を殴る」「アナタの知人の家に火をつける」のように、本人とも親族とも関係のない第三者への告知は脅迫罪には当たりません。

脅迫に当たるかどうかは、一般の人が怖いと感じる程度の告知かどうかで判断されます。実際に被害者が怖がったかどうかまでは問われません。逆に「呪うぞ」「一生許さない」といった抽象的な言葉だけでは、成立しにくいとされています。脅迫罪に当たる言葉の線引きは「脅迫罪になる言葉・ならない言葉は?成立要件と刑罰を解説」で詳しく解説しています。

なお、金品を脅し取れば恐喝罪(10年以下の拘禁刑)、義務のないことを無理にさせれば強要罪(3年以下の拘禁刑)と、より重い罪に問われることもあります。

無差別の殺害予告・爆破予告は威力業務妨害になりやすい

「〇〇駅で爆弾を爆発させる」「小学校に乱入して殺しまくる」のような、不特定多数に向けた犯行予告はどうでしょうか。

このようなケースでは加害の対象が広く、特定の個人や親族に向けられていないため、脅迫罪ではなく威力業務妨害罪(3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)が適用されるのが一般的です。予告を受けて対応や中止を迫られた施設・イベント主催者などの業務を妨害したと評価されるためです。

脅迫罪なのに警察が動かないのはなぜ?3つの理由

前提として、警察は被害の申告を受ければ、犯罪が成立するかどうかを調べる立場にあります。脅迫だからといって、警察が動かないわけではありません。それでも動きが鈍く見えるのは、主に次の3つの事情があるためです。

理由1:民事不介入の原則があるから

警察は、個人どうしの私的な争い(民事トラブル)には立ち入らないのが原則です。これを民事不介入といいます。「脅された」「いや脅していない」という言い分の食い違いだけだと、当事者間の問題と見られ、捜査に踏み込みにくくなります。たとえば「貸したお金を返さないなら家族に言いふらす」と言われたケースや、近隣トラブルの延長で口論になったケースは、刑事事件よりも私的な争いと受け取られやすい典型です。

理由2:客観的な証拠が足りないから

脅迫は言葉で行われることが多く、証拠が残りにくい面があります。録音やスクリーンショットといった裏づけがないと、警察は事件として立件しにくいと判断しがちです。口頭で脅されただけで録音もメモもない、脅迫のメッセージをすでに削除してしまった、といった状態では、警察が事実関係を確認できず、動きづらくなります。

理由3:事件性が低いとみられるから

殺人や強盗などの重大事件と比べると、軽く見られやすいのも実情です。限られた人員のなかで、緊急性や危険性が低いと判断されると、対応が後回しになることがあります。一度きりの軽い暴言で実害も出ていない段階では、緊急性が低いと見られがちです。逆に、脅しが何度も繰り返されている、具体的な日時や手段が示されているなど危険性が高いほど、警察は重く受け止めます。

裏を返せば、この3つを一つずつ解消していけば、警察は動きやすくなります。まずは、脅迫でも警察が動いた事例を確認したうえで、具体的な進め方を見ていきましょう。

脅迫罪でも警察が動いた実際の逮捕事例

脅迫罪は親告罪(被害者の告訴がないと起訴できない犯罪)ではありません。そのため、被害者本人でなくても、第三者の通報や警察のサイバーパトロールをきっかけに捜査が始まり、逮捕に至ることもあります。

近年、ネット上の脅迫的な書き込みやメールで逮捕された例として、以下のようなものがあります。

  • 2024年、任天堂の問い合わせフォームに「会場のやつらも殺す」などと約40回投稿し、大型イベントを中止に追い込んだ公務員の男が、威力業務妨害の疑いで逮捕されました(京都新聞 2024年4月報道)。
  • 2025年、人気バンドの所属事務所に「中止しないとメンバーやファンの誰かが刺される」とメールを繰り返した男が、威力業務妨害の疑いで逮捕されました(2025年1月報道)。

これらは公人や企業が対象で報道された一例にすぎません。対面や電話、知人とのトラブルでの脅迫でも、悪質なものは検挙されています。一般の人が被害者となる脅迫でも、内容や証拠しだいで警察が捜査し、逮捕に至るケースは数多くあります。

ただし実務上は、殺害予告のような重大な事案を除き、被害者本人による被害届や告訴の提出がないと、警察が動きにくいのが実情です。

警察に相談する前にやるべき証拠の保全

警察に相談に行っても、脅された証拠がなければ動いてもらいにくくなります。相談に行く前に、まず証拠を確保しておきましょう。

ネット上の書き込みは、投稿者やサイト運営者によって削除・編集されることがあります。口頭や電話での脅迫も、記憶だけでは裏づけになりません。次の手順で保全してください。

  1. 脅迫の文面を、URLと投稿日時がわかる形でスクリーンショットや印刷で保存する。口頭・電話であれば録音やメモを残す
  2. 脅迫部分だけでなく、その前後のやり取りもあわせて保存する(脅迫に当たるかは全体の文脈で判断されるため)
  3. いつ・どこで・誰から何をされたかを、時系列でメモにまとめる

ネットやSNS、メールで脅された場合の対処法そのものは「LINEやメールで脅されたら脅迫罪?成立条件と5つの対処法」でくわしくまとめています。

脅迫で警察を動かす対処法

証拠を整えても警察が動いてくれないときは、次の方法を組み合わせて働きかけます。

被害届・告訴・相談の違いを知る

警察への連絡には種類があり、効果が異なります。

  • 相談:警察に助言を求めること。捜査につながるとは限らない
  • 被害届:被害があった事実を届け出るもの。受理されても捜査開始が約束されるわけではない
  • 告訴:犯人を処罰してほしいという意思表示。受理されれば捜査機関は捜査を尽くす立場になる

犯人の処罰まで望むのであれば、被害届よりも告訴のほうが有効です。

弁護士に刑事告訴を依頼する

告訴状は、犯罪事実を正確に記載しないと受理されにくく、警察も受理に慎重になりがちです。証拠不十分などを理由に、受理を渋られることも少なくありません。

弁護士に依頼すれば、受理されやすい告訴状を作成でき、弁護士名で提出することで受理される率が上がる傾向があります。加害者の処罰を強く望むのであれば、弁護士への依頼を検討するとよいでしょう。被害届と告訴の違いや出し方は「恐喝・脅迫の被害届を出す3つのメリットと出し方をわかりやすく解説をわかりやすく解説」で解説しています。

被害届や告訴を受理してもらえないときは

窓口で被害届や告訴を受け取ってもらえないこともあります。それでも打つ手はあります。告訴は刑事訴訟法上、警察(司法警察員)だけでなく検察官に対しても行えます(刑事訴訟法241条)。所轄の警察署で対応してもらえないときは、都道府県警察の本部に相談する、検察庁に告訴状を提出する、といった方法も検討できます。

ただし、実際に捜査を担うのは警察であることが多いため、まずは証拠を整えたうえで警察に再度かけ合うのが基本です。提出先の見極めや、受理されやすい書面の準備は、弁護士に任せると確実です。
脅された場合の対処法の全体像や、弁護士に依頼したときの費用・相談から解決までの流れは「脅された時の対処法は?恐喝・脅迫被害の相談先も弁護士が解説」で確認できます。

加害者を特定し、慰謝料を求める

警察が刑事事件として動いてくれない場合でも、脅迫で受けた精神的な苦痛について、民事で慰謝料を請求できます。相手が誰か分かっていれば、そのまま請求の手続きに進めます。

問題になるのは、匿名の書き込みなど相手が分からないケースです。その場合でも、警察の捜査関係事項照会(捜査のために事業者へ情報の開示を求める手続き)や、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)に基づく発信者情報開示請求によって、投稿者の氏名や住所を特定できる場合があります。その費用や流れについては「発信者情報開示請求とは?費用や期間などの情報をまとめました」で解説しています。

脅迫被害の相談先・窓口の選び方

脅迫の相談先は警察署だけではありません。緊急度や内容によって、適した窓口は変わります。

  • 今まさに危害が及びそう:迷わず110番(すぐ動いてもらうための番号)
  • 犯罪に当たるか判断がつかず、まず相談したい:警察相談専用電話「#9110」(受付は平日の日中が中心)
  • ネットやSNS上の脅迫:警察庁のサイバー事案に関する相談窓口からオンラインでも通報・相談できる
  • つきまといや嫌がらせを伴う:警察署の生活安全課
  • 警察だけでは解決が難しい:弁護士や法テラス(収入要件を満たせば無料相談や費用立替の制度あり)

どこに相談すべきか迷ったら、証拠を持参して最寄りの警察署か#9110に連絡すれば、適切な窓口を案内してもらえます。

警察が動かないとき、やってはいけない3つの行動

警察がなかなか動いてくれないときでも、次の行動は避けてください。かえって自分が不利になります。

相手に直接抗議や仕返しをする

相手の家に押しかけたり脅し返したりすれば、今度はあなたが脅迫罪や暴行罪に問われ、加害者と被害者の立場が入れ替わってしまうおそれもあります。直接やり取りせず、証拠を固めて再度相談する、弁護士に任せるなど、落ち着いた対応を心がけましょう。

相手の情報をネットにさらす

相手の名前や住所、顔写真をネットにさらすと、プライバシーの侵害や名誉毀損罪・侮辱罪に問われるおそれがあります。真偽が不確かなまま投稿すれば、逆にあなたが損害賠償を求められることもあります。相手の情報は拡散せず、スクリーンショットなどで保存して証拠として残し、警察や弁護士に示すほうが解決につながります。

事実を誇張して通報する

被害を大きく見せようと事実を盛ったり、ありもしない被害を訴えたりすると、虚偽告訴罪などに問われるおそれがあります。また、一度でも大げさな申告をすると、本当に伝えたい被害まで疑われ、かえって動いてもらいにくくなります。被害は冷静に、正確に伝えることが、捜査を前に進める近道です。

脅迫罪と警察対応に関するよくある質問

警察が動かないうちに脅迫罪が時効になることはありますか?

脅迫罪の公訴時効は3年です(刑事訴訟法250条2項6号)。最後に脅迫を受けた日から3年が過ぎると、検察官は起訴できなくなり、加害者を処罰できなくなります。警察がなかなか動いてくれないからと放置している間に、この3年が過ぎてしまうこともあります。証拠も時間とともに集めにくくなるため、早めに動くことが大切です。時効の起算点や、民事の慰謝料請求の時効については「脅迫罪の時効は何年?民事(慰謝料)の時効も併せて解説」でくわしく解説しています。

本人以外でも告訴や通報はできますか?

告訴ができるのは、原則として被害者本人とその法定代理人です(刑事訴訟法230条・231条)。無関係な第三者は告訴できませんが、犯罪があったと思う人は誰でも告発・通報ができます(同法239条)。脅迫罪は親告罪ではないため、被害者の告訴がなくても、第三者の通報や警察のパトロールをきっかけに、警察が捜査し起訴することは可能です。

警察が対応してくれないとき、苦情を申し立てられますか?

できます。警察職員の対応に問題があると感じたときは、都道府県の公安委員会に文書で苦情を申し出る制度があります(警察法79条)。公安委員会は申出を誠実に処理し、結果を文書で通知します。ただし、公安委員会は個別の捜査を直接指揮できないため、捜査そのものを進めたいときは、証拠を整えて警察署や検察庁に告訴するのが基本です。

脅迫被害でお困りの方は弁護士にご相談ください

脅迫罪は、内容と証拠しだいで警察が動く犯罪です。動いてもらう鍵は、証拠の保全と、被害届より一歩進んだ刑事告訴にあります。

弁護士に依頼すれば、受理されやすい告訴状の作成から、加害者の特定、慰謝料の請求交渉までを一任できます。弁護士名での告訴は受理率が上がりやすく、被害を放置するほど相手の行為がエスカレートするリスクも抑えられます。

脅迫を受けると、いつ実行されるかわからない恐怖から、日常生活にも支障をきたすことがあります。すでに身の危険を感じている場合や、相手が誰か分からない場合でも、動き出すのが早いほど打てる手は増えます。一人で抱え込まないでください。

当事務所は脅迫・恐喝事件に注力し、被害者・加害者の双方から数多くのご相談をお受けしてきました。依頼者を守るため弁護士が迅速に動きます。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご連絡ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

脅迫・恐喝被害の解決に豊富な実績を持つ。一般社団法人 詐欺・不当要求対策協会の代表理事として、不当要求対策の研究・啓発活動にも取り組んでいる。「警察沙汰にしたくない」「家族や会社に知られたくない」といった被害者特有の事情に寄り添い、粘り強い交渉で解決に導く。他の事務所で断られた案件にも積極的に対応。

脅迫・恐喝被害 不当要求対策 リベンジポルノ 美人局被害 男女トラブル
メディア掲載 フジテレビ「とくダネ」/ ダイヤモンド・オンライン / @DIME / サイゾー 他多数
講演実績 「不当要求対応の基礎」「犯罪組織によるマネー・ロンダリングと投資詐欺への法的処置」等
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