恐喝罪の構成要件|4つの成立要件と脅迫罪との違いを解説

「お金を脅し取られたが、これは恐喝罪にあたるのか」「どこからが恐喝罪になるのだろう」と、自分の受けた被害が罪に問えるのか確かめたい方も多いのではないでしょうか。

恐喝罪は、暴行や脅迫で相手を畏怖(いふ)させ、財物や利益を出させる犯罪で、法定刑は10年以下の拘禁刑です(刑法249条)。脅し取られた金額の多い少ないにかかわらず、実際にはお金が渡らなかった未遂の段階でも、処罰の対象になります。

この記事では、恐喝・脅迫の被害者対応に強い弁護士が、

  • 恐喝罪の4つの成立要件
  • どこからが恐喝罪になるのか
  • 脅迫罪・強要罪・強盗罪との違い
  • 加害者が受ける処分の見通し

など、被害者の方が知っておきたい情報をわかりやすく解説します。

なお、恐喝の被害でお悩みの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお気軽にご連絡ください。

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恐喝罪とは

恐喝罪とは、暴行や脅迫で相手を畏怖(いふ)させ、その弱った心理につけ込んで金品を交付させたり、財産上の利益を手に入れたりする犯罪です。根拠となる条文は刑法249条で、法定刑は10年以下の拘禁刑、罰金刑はありません。日常的に「カツアゲ」「ゆすり」「たかり」と呼ばれる行為の多くが、この恐喝罪にあたります。相手を脅して怖がらせる「恫喝(どうかつ)」も、それを手段に金品を要求すれば恐喝罪となり得ます。

恐喝罪が守ろうとしているのは、被害者の財産です。同時に、脅されて意思決定をゆがめられない自由も保護の対象に含まれると考えられています。

刑法249条は、財物を脅し取る場合(1項)と、財産上の利益を脅し取る場合(2項)の2つを定めています。前者は「1項恐喝(財物恐喝)」、後者は「2項恐喝(利益恐喝)」と呼ばれます。

(恐喝)
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

出典:刑法 | e-Gov法令検索

1項の典型は、現金や品物を脅し取るカツアゲです。2項は、飲食代やタクシー代の支払いを脅して免れる、借金の返済を脅して免除させる、といった「利益」を得るケースを指します。自分の手元にお金が入らなくても、債務を逃れた時点で恐喝罪は成立し得ます。

※2025年6月1日に施行された改正刑法で、従来の「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」へ統合されました。本記事の法定刑も、この現行法の表記にそろえています。

恐喝罪の構成要件と4つの成立要件

恐喝罪が成立するかどうかは、次の4つの成立要件(構成要件)で判断します。これらが1つでも欠けると恐喝罪は成立せず、未遂や別の犯罪にとどまります。

  • ①恐喝行為(金品を出させるための暴行・脅迫)
  • ②被害者が畏怖したこと
  • ③畏怖にもとづいて財物・利益を処分したこと
  • ④財物・利益が加害者または第三者に移転したこと

学説によっては②③④をまとめて2〜3要件と整理することもありますが、判断の流れは同じです。順番に見ていきます。

①恐喝行為(暴行・脅迫)

恐喝行為とは、財物や利益を出させる手段として加える暴行・脅迫のことです。ここでの暴行・脅迫は、相手の反抗を抑え込んでしまうほど強いものではない、という点が重要です。反抗を完全に抑圧する強さに達していれば、より重い強盗罪(刑法236条)の問題になります。

脅迫とは、害悪を告げて相手を怖がらせること(害悪の告知)をいいます。恐喝罪の脅迫は、脅迫罪(刑法222条)と違って、告げる害悪の内容に制限がありません。脅迫罪が「生命・身体・自由・名誉・財産」への害悪に限られるのに対し、恐喝罪では、たとえば「過去の犯罪を警察に申告する」「不倫や秘密を暴露する」といった告知でも、金銭の要求に結びつけば脅迫にあたります。犯罪事実を捜査機関に申告すると告げて口止め料を出させたケースで、最高裁は恐喝罪の成立を認めています(最判昭和29年4月6日)。害悪を向ける相手も本人に限られず、その親族や交際相手など第三者でもかまいません。告げる方法も、対面の口頭に限らず、電話・メール・LINEのメッセージや、態度で示す暗黙の告知でも成立し得ます。

注意したいのが、正当な権利を行使する場面です。貸したお金を返してもらう取り立てであっても、その方法が社会通念上許される限度を超えていれば恐喝罪が問われます。最高裁は、債務の取り立て手段がこの限度を逸脱した場合、債権額にかかわらず交付させた金額の全額について恐喝罪が成立すると判断しました(最判昭和30年10月14日)。「自分には受け取る権利があるから問題ない」とは言い切れない点に注意が必要です。

②被害者が畏怖したこと

恐喝行為があっても、相手が実際に畏怖しなければ恐喝罪は完成しません。畏怖とは、恐ろしい、応じなければ大変なことになる、と恐れおののく心理状態を指します。

畏怖したといえるかは、その人が実際にどう感じたかだけでなく、同じ立場の一般人なら怖がる程度の脅しだったか、という客観的な視点から判断されます。判断にあたっては、脅した言葉の内容、場所や時間帯、周囲の状況、当事者の年齢・性別・体格差、両者の関係などが総合的に考慮されます。たとえば、夜間の人通りの少ない場所で体格の大きい大人が中学生に金銭を要求すれば畏怖が認められやすい一方、昼間に人の多い場所で小柄な人が複数の屈強な相手に同じ言葉を言っても、畏怖までは認めにくいといった違いが生じます。

「どこからが恐喝罪になるのか」は、被害に遭った方が最も気にされる点です。相手の弱みを握って「ばらされたくなければ金を払え」と口止め料を迫る、裸の画像を盾に「拡散する」と告げて金銭を求める、威圧的な人物を複数同席させて借金の返済を強要しその場で現金を引き出させる、いわゆる美人局による示談金の請求やみかじめ料の取り立てなどが、恐喝罪にあたり得る典型例です。

③畏怖にもとづいて財物・利益を処分したこと

被害者が畏怖し、その恐怖が原因で財物を差し出した、という因果関係が必要です。脅された相手が、怖さからではなく同情や憐れみからお金を渡したような場合は、畏怖による処分とはいえず、恐喝罪は既遂(犯罪の完成)になりません。

このとき問題になるのは恐喝未遂です。脅迫はしたが相手が畏怖しなかった、あるいは畏怖はしたが別の理由で財物を渡した、といった場合には恐喝未遂罪が成立し得ます。

④財物・利益が加害者または第三者に移転したこと

最後に、財物や利益が実際に加害者または第三者の手に移ることで、恐喝罪は既遂となります。被害者が脅されて振り込もうとしたものの、その前に警察へ通報して金銭が渡らなかった場合は、既遂には至りません。

財物の移転は、必ずしも積極的に手渡す形に限られません。飲食代の請求を脅して一時的にあきらめさせ、その場の支払いを免れたケースのように、相手に請求を断念させる形(不作為)でも交付が認められることがあります。

なお、恐喝罪は未遂も処罰されます(刑法250条)。財物が渡らなかったとしても、恐喝行為そのものが立件の対象になり得ます。被害者にとっては、金銭を渡したかどうかにかかわらず被害を訴えられる、という点を押さえておくとよいでしょう。ただし、加害者を訴えられる期間には限りがあり、恐喝罪の公訴時効は原則7年です。時効の数え方や被害回復の進め方については「恐喝罪の時効は何年?刑事7年・民事(慰謝料)3年」で詳しく解説しています。

恐喝罪と似た犯罪との違い

恐喝罪は、脅迫罪・強要罪・強盗罪・詐欺罪と混同されやすい犯罪です。自分の受けた被害がどの罪にあたるかは、訴えられる期限や加害者の処分にも関わります。まず全体像を整理します。

罪名 手段(実行行為) ねらい 法定刑
恐喝罪 暴行・脅迫(反抗抑圧に至らない) 財物・財産上の利益 10年以下の拘禁刑
脅迫罪 脅迫のみ 限定なし(畏怖させること自体) 2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
強要罪 暴行・脅迫 義務のないことの強制 3年以下の拘禁刑
強盗罪 反抗を抑圧する暴行・脅迫 財物・財産上の利益 5年以上の有期拘禁刑
詐欺罪 欺く行為(だます) 財物・財産上の利益 10年以下の拘禁刑

脅迫罪との違い

脅迫罪と恐喝罪を分けるのは、財産を出させる目的があるかどうかです。「殺すぞ」と脅しただけなら脅迫罪ですが、「金を払わなければ殺す」と金銭の要求につなげれば恐喝罪(金銭が渡らなければ恐喝未遂罪)に切り替わります。恐喝罪のほうが財産を奪う点で重く、罰金刑のない法定刑が定められています。脅迫罪が成立する言葉と成立しない言葉の線引きは、「脅迫罪になる言葉・ならない言葉は?成立要件と刑罰を解説」で具体的に解説しています。

強要罪との違い

強要罪は、暴行・脅迫を使って「義務のないこと」を無理にさせたり、権利の行使を妨げたりする犯罪です。土下座をさせる、謝罪文を書かせるといった行為が典型です。奪う対象が財産であれば恐喝罪、財産以外の行為を強いるのであれば強要罪、と整理できます。

強盗罪との違い

強盗罪と恐喝罪の境目は、暴行・脅迫の強さです。刃物を突きつけるなど、相手が抵抗できないほど反抗を抑圧して奪えば強盗罪、そこまで至らず、被害者が自分の判断で渡す余地が残っていれば恐喝罪と評価されます。具体的な線引きは「恐喝と強盗の違いは?わかりやすく解説」をご覧ください。

詐欺罪との違い

詐欺罪と恐喝罪は、どちらも被害者自身が財物を渡す点で共通します。違いは渡させる手段です。詐欺罪はうそで相手をだまし、勘違いさせて渡させる「騙取(へんしゅ)」、恐喝罪は脅して怖がらせて渡させる「喝取(かっしゅ)」という点が異なります。

恐喝罪は非親告罪?親族間には特例あり

恐喝罪は、原則として親告罪ではありません。親告罪とは、被害者の告訴がなければ起訴できない犯罪のことです。恐喝罪はこれにあたらないため、被害者が告訴していなくても、捜査機関が犯行を把握すれば加害者を逮捕・起訴できます。もっとも実際には、被害届や告訴をきっかけに捜査が動き出すケースがほとんどです。

ただし、加害者と被害者が一定の親族関係にある場合には特例があります。刑法251条が窃盗罪の親族特例(244条)を準用しており、配偶者・直系血族(親子や祖父母など)・同居の親族の間で行われた恐喝は刑が免除されます。それ以外の親族(同居していない兄弟姉妹など)の間の恐喝は、親告罪として扱われ、告訴がなければ起訴できません。家族や親族の間でのトラブルでは、この特例が処分に影響することがあります。

恐喝罪の加害者はどうなる?逮捕・処分の流れ

被害に遭った方にとって、加害者がこの先どんな処分を受けるのかは大きな関心事です。公的な統計をもとに、おおまかな見通しを確認します。

恐喝事件は、身柄を拘束されやすい犯罪です。令和7年版の犯罪白書(令和6年のデータ)によると、検察庁が扱った恐喝の被疑者2,038人のうち、逮捕・勾留などで身柄を拘束された割合(身柄率)は73.0%にのぼります。刑法犯全体の35.1%とくらべておよそ2倍で、身柄を取られた被疑者の大半について勾留が請求されています(勾留請求率97.7%)。恐喝は、いったん事件化すると身柄を取られやすい犯罪だといえます。加害者と被害者がもともと知り合いであるケースも多く、後日、被害届をきっかけに逮捕されることも少なくありません。

一方で、起訴される割合(起訴率)は26.5%にとどまります。令和6年に検察庁が処理した恐喝事件では、起訴は397人、不起訴は1,100人でした。不起訴の内訳は、証拠が足りないことなどによる「嫌疑不十分」など599人と、反省や被害弁償・示談の成立を考慮した「起訴猶予」501人に大きく分かれます。加害者の刑事処罰を望む場合は、客観的な証拠を確保し、安易に示談へ応じない姿勢を示すことが、起訴につながりやすくなります。被害届の意味や出し方は恐喝・脅迫の被害届を出す3つのメリットと出し方をわかりやすく解説でも説明しています。

起訴されて有罪となり、地方裁判所で有期の懲役・禁錮を言い渡された恐喝事件は273人で、このうち実刑は93人(約34%)、執行猶予が付いたのは180人(約66%)でした。刑期は1年以上3年以下が大半を占めます。恐喝の回数や被害額、反社会的勢力の関与、前科の有無などが重く考慮され、悪質な事案や前科がある場合には実刑が選ばれやすくなります。

※統計はいずれも令和7年版「犯罪白書」(令和6年・2024年のデータ)による。科刑状況は地方裁判所における有期の懲役・禁錮の言渡しによるもので、2025年6月1日の拘禁刑施行より前の言渡しのため「懲役・禁錮」と表記しています。

恐喝の被害でお悩みの方は弁護士にご相談ください

この記事では、恐喝罪の4つの成立要件や「どこからが恐喝罪になるのか」、脅迫罪・強要罪・強盗罪との違い、加害者が受ける処分の見通しを解説しました。ご自身が受けた被害が恐喝罪に当たるのかどうかは、脅し文句の中身やその場の状況しだいで、判断が分かれることもあります。

弁護士に相談すれば、その被害が恐喝罪にあたるのかを法的に整理したうえで、証拠の集め方や被害届の出し方、加害者への損害賠償・慰謝料の請求まで、見通しを持って進められます。加害者との示談交渉や警察とのやり取りも任せられるため、一人で抱え込むより精神的な負担を軽くできます。

お金を脅し取られている状況は、要求が繰り返されたり、弱みを握られて誰にも言い出せなかったりと、心の負担が非常に大きいものです。すでにお金を渡してしまった場合や、相手からの要求が続いている場合でも、打てる手は残されています。

当事務所は、恐喝・脅迫をはじめとするトラブルを数多く取り扱ってきました。弁護士が窓口に立つことで、加害者と直接やり取りせずに済み、あなたの安全に配慮しながら解決を目指します。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

脅迫・恐喝被害の解決に豊富な実績を持つ。一般社団法人 詐欺・不当要求対策協会の代表理事として、不当要求対策の研究・啓発活動にも取り組んでいる。「警察沙汰にしたくない」「家族や会社に知られたくない」といった被害者特有の事情に寄り添い、粘り強い交渉で解決に導く。他の事務所で断られた案件にも積極的に対応。

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メディア掲載 フジテレビ「とくダネ」/ ダイヤモンド・オンライン / @DIME / サイゾー 他多数
講演実績 「不当要求対応の基礎」「犯罪組織によるマネー・ロンダリングと投資詐欺への法的処置」等
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