
「内縁の妻(夫)でも、亡くなったパートナーの財産を相続できるのだろうか」「今の家に住み続けられるのか」。パートナーに先立たれた方や、もしものときに備えておきたい方の中には、こうした不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
婚姻届を出していない内縁の妻(夫)には、法律上の相続権がありません。もっとも、遺言や生命保険で財産を遺してもらうことはでき、相続人がいなければ特別縁故者(亡くなった人と生計を同じくしていた人など)として財産を受け取れる場合もあります。
この記事では、内縁関係のトラブルに強い弁護士が、次の点について解説します。
- 内縁の妻(夫)に相続権はあるのか
- パートナーの財産を受け取る5つの方法
- 亡くなった後も今の家に住み続けられるか
お読みいただくことで、いまの状況で使える手段と、急いで動くべきことを整理できます。
なお、亡くなったパートナーの財産や住まいのことでお悩みの方は、一人で抱え込まず、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談をご利用ください。地域を問わずご相談を承っています。
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内縁の妻(夫)に相続権はない
内縁の妻(夫)は、何年一緒に暮らしていても、法律で定められた相続人にはなれません。民法で常に相続人になるとされている配偶者は、婚姻届を出した法律上の夫婦に限られるためです。
内縁(事実婚)は、婚姻届を出していないものの、お互いに夫婦として暮らす意思を持ち、実際に共同生活を送っている関係を指します。夫婦同然に暮らしていても、遺産相続の場面では、法律上の配偶者と同じ扱いは受けられません。どのような暮らしぶりであれば内縁にあたるのかは、「内縁の妻とは?メリット・デメリットと認められる条件を解説」で解説しています。
亡くなった人(被相続人)に法律上の配偶者がいればその配偶者が常に相続人となり、あわせて、子がいれば子が、子がいなければ親などが、親などもいなければ兄弟姉妹が相続人になります。遺言がなければ、相続財産はこうした法定相続人の間で分けられ、内縁の妻(夫)の取り分はありません。
相続人に保障される遺留分(最低限の取り分)もありません。長年にわたって介護を続けていても、親族が相続人に請求できる特別寄与料(介護などの貢献に応じたお金)は、親族にあたらない内縁の妻(夫)には認められていません。
一方、内縁の夫婦の間に生まれた子(非嫡出子)は、父親が認知(自分の子であると法的に認めること)していれば父親の相続人になります。認知された子の相続分は、婚姻している夫婦の間に生まれた子と同じです。
認知されないまま父親が亡くなっても、子の側から認知の訴え(死後認知)を起こせます。期限は、父親の死亡から3年以内です。子の側が実際にどのように訴えを起こすのかは、「死後認知とは?訴えの期間と手続き、相続への影響」をご参照ください。
内縁の妻(夫)が財産を受け取る5つの方法
相続権がなくても、内縁の妻(夫)がパートナーの財産を受け取る道がなくなるわけではありません。主な方法は、次の5つです。
- ① 遺言で遺贈してもらう
- ② 生前贈与を受けておく
- ③ 生命保険の受取人に指定してもらう
- ④ 相続人がいなければ特別縁故者として財産分与を申し立てる
- ⑤ 遺族年金を請求する
どの方法を使えるかは、パートナーが存命か、亡くなった後かによって変わります。判断の流れは、次の図のとおりです。
① 遺言で遺贈してもらう
遺言があれば、相続人ではない内縁の妻(夫)にも財産を遺すことができます。遺言で財産を譲ることを遺贈といい、「全財産の3分の1」のように割合で指定することも、「自宅の土地と建物」のように、不動産などの特定の財産を指定することもできます。
パートナーが亡くなったときは、まず、あなたに財産を遺す内容の遺言書が残されていないかを確かめてください。
これから備える場合は、公証人が作成する公正証書遺言にし、遺言執行者(遺言の内容を実現する人)も決めておいてもらうと、形式の不備で無効になるおそれを減らせ、遺贈の手続きも相続人の協力に頼らず進めやすくなります。
ただし、法律上の配偶者や子・親が相続人になる場合は、遺留分に当たるお金の支払いを相続人から求められることがあります(遺贈された家そのものを返す義務はありません)。相続人が兄弟姉妹だけなら、遺留分はありません。
遺贈で受け取った財産は、相続税の対象になります。内縁の妻(夫)は、法律上の配偶者にも、亡くなった人の子や親(一親等の血族)にもあたらないため、相続税がかかる場合は税額が2割加算されます。この2割加算は、特別縁故者として受け取った財産や死亡保険金にも当てはまります。
法律上の配偶者が受け取った財産は、1億6,000万円か法定相続分(法律で決められた取り分)のいずれか多い金額までなら、配偶者の税額軽減により相続税がかかりませんが、内縁の妻(夫)はこの制度を使えません。一緒に暮らしていた家の土地を遺贈で受け取っても、相続税を計算するときに土地の評価額を減らせる小規模宅地等の特例も対象外です。相続税がかかる場合は、遺贈を受けた内縁の妻(夫)が納める立場になるため、税額の見込みを早めに確かめておくと安心です。
② 生前贈与を受けておく
元気なうちに、パートナーから財産を贈与してもらうこともできます。贈与は、あげる側ともらう側の合意で成立する契約なので、婚姻届を出していない内縁の妻(夫)との間でも有効です。
1年間(1月から12月まで)にもらった財産の合計が110万円以下なら、贈与税はかかりません。110万円を超えると、超えた部分に贈与税がかかるため、まとまった財産を移すときは税額を確かめておきましょう。
生前贈与なら、亡くなる前に財産の名義が移るため、遺言書が見つからない、形式の不備で無効になるといった心配をせずに済みます。後から相続人ともめないよう、贈与の内容は書面に残しておくのが望ましいです。
③ 生命保険の受取人に指定してもらう
パートナーが自分にかけている生命保険で、死亡保険金の受取人に内縁の妻(夫)を指定してもらう方法です。受取人として指定された人が受け取る保険金は、受取人固有の財産として扱われ、原則として相続人との遺産分割の話し合いの対象になりません。葬儀の費用や当面の生活費の備えとしても使えます。
もっとも、受取人になれる人を法律上の配偶者や近い親族に限っている保険会社もあります。内縁の妻(夫)を指定できるかどうかは、二人とも戸籍上の配偶者がいないことや、一定の期間同居していることなど、保険会社が定める条件しだいです。加入中の保険の扱いは、保険会社に問い合わせてもらいましょう。保険会社に内縁関係を示す必要が出たときに手がかりとなる資料については、「内縁関係を証明する方法と11の書類・証拠を解説」もあわせてご確認ください。
なお、パートナーが保険料を負担していた死亡保険金は、遺贈で取得したものとみなされ、相続税の対象になります。相続人が受け取る場合に使える非課税枠(500万円×法定相続人の数)は、内縁の妻(夫)には使えません。
④ 相続人がいなければ特別縁故者として財産分与を申し立てる
相続人が一人もいないときに使えるのが、特別縁故者として財産の分与を受ける方法です。特別縁故者とは、亡くなった人と特別の縁故があった人のことで、法律は、生計を同じくしていた人と療養看護に努めた人をその例に挙げています。家庭裁判所が相当と認めれば、清算後に残った財産の全部または一部を受け取れます(民法958条の2)。
同居して家計を共にしていた内縁の妻(夫)は、生計を同じくしていた人として申し立てるのが典型です。ただ、分与を認めるかどうか、どれだけ分けるかは家庭裁判所が判断するため、必ず全部を受け取れるわけではありません。
手続きは、家庭裁判所に相続財産清算人(亡くなった人の財産を管理・清算する人)を選んでもらうところから始まります。まだ選ばれていなければ、選任を申し立てます。清算人が選ばれると、家庭裁判所が、相続人がいれば名乗り出るよう公告(広く知らせる手続き)をします。この公告の期間は6か月以上です。
期間内に相続人が現れなければ、その期間が終わってから3か月以内に、亡くなった人の最後の住所地の家庭裁判所へ分与を申し立てます。この3か月の期限は、清算人や裁判所から知らせてもらえるものではありません。期限を過ぎると申し立てられなくなるため、公告の期間を自分で確かめておくことが大切です。
申立ての準備や、相続人がいるかどうかの調査に不安があるときは、弁護士に相談してください。
⑤ 遺族年金を請求する
遺族年金は、相続とは別の制度です。国民年金法と厚生年金保険法は、遺族年金を受け取れる「配偶者」に、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある人を含めています。そのため、内縁の妻(夫)も、亡くなったパートナーに生計を維持されていたなどの要件を満たせば、遺族年金を受け取れる可能性があります。
遺族年金は遺産ではないため、遺言があるかどうかや、相続人がいるかどうかで請求できるかが決まるものではありません。請求の際は、内縁関係にあったことや、生計を維持されていたことを書類で示す必要があります。要件を満たすと認められる基準や、実際にどの書類をそろえればよいのかは、「遺族年金を内縁(事実婚)の妻が受給する条件と必要な証明書類」で解説しています。
パートナーが亡くなった後も今の家に住み続けられる?
住まいの扱いは、賃貸か持ち家か、相続人がいるかどうかで変わります。
なお、2020年4月に施行された民法の改正で、亡くなった配偶者の家に住み続けられる配偶者居住権・配偶者短期居住権が設けられましたが、これらは法律上の配偶者のための制度で、内縁の妻(夫)には使えません。相続権がないことも、改正の前後で変わっていません。
パートナーが借りていた賃貸住宅の場合、借地借家法36条により、相続人が一人もいなければ、一緒に暮らしていた内縁の妻(夫)が借主としての権利と義務を引き継ぎます。未払いの家賃があれば、その支払い義務も引き継ぐことになります。引き継ぎたくないときは、相続人がいないと知ってから1か月以内に、家主へその意思を伝える必要があります。
相続人がいる場合は、借主の権利は相続人が引き継ぎます。それでも、最高裁昭和42年2月21日判決は、家主から立ち退きを求められた内縁の妻が、相続人の引き継いだ借主の権利(賃借権)を持ち出して住み続けられるとしています。ただし、内縁の妻自身が借主になるわけではありません。
パートナー名義の持ち家は、相続人がいなければ、④の特別縁故者として分与を申し立てる道があります。遺言で家を遺されておらず相続人がいれば、家は相続人のものになるため、明け渡しを求められることがあります。事情によっては、相続人からの明け渡しの求めが権利の濫用(権利の行使として許されないこと)にあたるとして、認められなかった裁判例もあります。
相続人から家を出るよう求められても、すぐに応じる前に、住み続けられる余地がないか弁護士に相談してください。
内縁の妻(夫)の相続で困ったら弁護士に相談を
内縁の妻(夫)には相続権がないため、財産を引き継ぐには、遺言・生前贈与・生命保険といった生前の備えか、亡くなった後の特別縁故者の申立てや遺族年金の請求が必要になります。
弁護士に依頼すれば、遺言の作成から、相続人との話し合い、特別縁故者の申立てまでを任せられます。相続人から遺留分侵害額請求としてお金を求められたときや、家の明け渡しを求められたときも、あなたに代わって交渉します。
長く連れ添ったパートナーを亡くした悲しみの中で、相続人とのやり取りや期限のある手続きを一人で進めるのは大きな負担です。「相続人から家を出てほしいと言われた」「申立ての期限に間に合うか不安」「元気なうちに遺言を準備してもらいたい」といった場合も、早めにご相談いただければ、取れる手段を一緒に整理できます。
当事務所は、内縁関係を含む男女問題の解決に力を入れています。残されたあなたの暮らしを守るため、弁護士が迅速に動きます。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
この記事の監修者
男女問題・男女トラブルに強い法律事務所の代表弁護士。事務所全体で年間1,500件以上の男女トラブル相談を受けており、不倫慰謝料、妊娠トラブル、婚約破棄、パパ活トラブル、ストーカー被害など、他人に相談しづらい問題を穏便かつ内密に解決することを得意とする。相手の暴力的・脅迫的な言動にも弁護士が毅然と対応し、依頼者の平穏な生活を取り戻すために全力を尽くしている。

