メンズエステはマッサージなどのリラクゼーションサービスを提供するお店であり、性風俗店ではありません。にもかかわらず、お客の中には女性セラピストに欲情してわいせつな行為を迫ってきたり、中にはレイプ(本番強要)をしてくるケースもあります。
当事務所の弁護士が複数の被害女性ににお話を伺ったところによると、精神的ショックで頭が真っ白になってしまい、被害後にどのような対応をとるべきか思い浮かばなかったという方がほとんどでした。
そこでこの記事では、メンズエステでの性被害問題に強い弁護士が、
- メンズエステでレイプされたらまずすべきこと
- メンズエステでレイプをした客に適用される犯罪
- レイプされた場合の慰謝料・損害賠償について
- メンズエステでレイプされた場合の対処法
- レイプ加害者と示談する時の注意点
について徹底解説していきます。
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目次
メンズエステでレイプされたらまずすべきこと
まずは、メンズエステでレイプされた直後に女性がとるべき対処法について解説していきます。
緊急避妊薬を服用する
メンズエステでレイプされた場合、予期せぬ妊娠の危険性が存在しています。
そのため、そのような最悪の事態を回避するためには、「緊急避妊薬(アフターピル)」を服用して妊娠しないように対処することが重要となります。
緊急避妊薬は、性交渉の後に取れる唯一の避妊方法です。ただし性交以後、72時間以内に緊急避妊薬を服用しなければ、避妊効果を期待することができないため、すぐに対処することが重要になります。また、緊急避妊薬の避妊効果については8割程度と言われています。
現状、緊急避妊薬を入手するためには医師の処方箋が必要ですので、すぐに産婦人科を受診する必要があります。保険が利用できない自費診療となるため、費用については各医療機関に確認することが必要です。
緊急避妊薬を服用することの副作用として、不正出血や頭痛、吐き気、疲労感、眠たくなるなどの症状があらわれることが知られています。これらの症状は一時的であると言われていますが、症状が続く場合には医師に相談するようにしてください。
参考:緊急避妊薬とは| 経口避妊薬(OC)について|あすか製薬株式会社
性病の検査をする
メンズエステでレイプされた場合には、すぐに産婦人科を受診する必要があります。
その1つ目の理由としては、上記で述べた緊急避妊薬を処方してもらうためです。そして2つ目の理由として、性感染症や膣内の怪我の検査をしてもらうためです。
「性感染症」とは、性行為で感染する病気の総称を指します。
相手が性暴力・性加害の常習犯の場合や、不特定多数の相手と性行為を行っている場合などでは、加害者から感染させられる可能性があります。
性感染症はケースバイケースで症状が軽かったり、なかったりすることがあるため、感染していることに気付かないケースもあります。そのため、必ず検査を受ける必要があるでしょう。
治療に必要となったお金については、加害者に損害賠償として請求することができます。
証拠を確保する
メンズエステでレイプ被害に遭った場合には、後々の責任追及のためにも証拠を残しておくことが重要です。
すぐに産婦人科を受診すれば、妊娠の検査や精子の採取を行い、客観的な検査結果が書面として残ります。怪我や性感染症の罹患などに伴う心身の損傷や精神的な苦痛を立証するためにも、医師による診断書の作成は重要な意味があります。
そして、できるだけレイプの痕跡が残っている状態で専門医を受診することが重要です。
シャワーを浴びて痕跡(お客の唾液、精液など)を洗い流してしまったり、着用していた衣服や下着を洗濯・処分したりせず、証拠となり得るものはできるだけそのままの状態で保管しておいてください。
また、メンズエステ店によっては施術ルームに防犯カメラを設置していることがあるため、レイプ被害に遭ったら店の責任者に事実を伝えたうえで、防犯カメラ映像を消去せずに保存するようお願いしておきましょう。
これらは、警察に被害届・刑事告訴状を提出して刑事責任を追求していく際に重要な証拠物となります。
メンズエステでレイプをした客に適用される犯罪
メンズエステでレイプされた場合、加害者である相手方の客にはどのような犯罪が成立することになるのでしょうか。
性犯罪とひと言で表現しても、相手の行為や発生した結果によって適用される罪名や刑罰などは異なる可能性があります。加害者がどのような刑事責任を負う可能性があるのかという点の参考にしてください。
メンズエステでレイプされた場合に適用される典型的な犯罪と刑罰については、次の2つです。
不同意性交等罪
一定の行為や事由により、「被害者が同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」性交等(性交のほか、肛門性交、口腔性交)をした場合、「不同意性交等罪」の罪に問われます。
たとえば、
- メンズエステで客から力ずくで押さえつけられ性交された場合
- 逆らったら殺すなどと脅迫されて性交された場合
- 客から差し入れらた食べ物や飲み物の中に薬物が混入しており、抵抗できない状態にさせられ性交された場合
- アルコールを飲まされ酩酊状態で性交された場合
といったケースでは、加害者は不同意性交等罪に問われることになります。
その他にも、「被害者が同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと」「被害者を予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること」を原因として「被害者が同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」性交等を行った場合にも同罪が成立します。例えば、
といったケースでは、被害者が拒絶するいとま(暇)がない又は驚愕・恐怖したことにより、被害者が同意しない意思を形成し、表明若しくは全うすることが困難な状態でレイプされたとも考えられますので、不同意性交等罪が成立する可能性があります。
不同意性交等罪の法定刑は、「5年以上の有期拘禁刑」です(刑法第177条参照)。
なお、これまでレイプ(強姦)については「強制性交等罪」「準強制性交等罪」が適用されてきましたが、令和5年7月13日に改正刑法が施行され、両罪が統合されて「不同意性交等罪」が新設されました。詳しくは、不同意性交等罪・不同意わいせつ罪とは?わかりやすく解説【刑法改正】をご覧になってください。
不同意性交等致傷罪
不同意性交等罪やその未遂を犯し、よって人に傷害を負わせた場合には、不同意性交等致傷罪に問われることになります。
不同意性交等致傷罪の法定刑は、「無期または6年以上の懲役」が科されることになります(刑法第181条2項参照)。
同罪が適用されるのは以下のようなケースです。
- レイプによってアザや怪我など身体に傷害を負ったケース
- レイプによって膣内や性器・内臓に傷害を負ったケース
- レイプにより性感染症に罹患したりPTSD・パニック障害などの精神疾患を負ったケース
「致傷」には、挫傷や裂傷などの外傷だけではなく、PTSDやパニック障害などの精神疾患も含まれます。またレイプされた被害者が逃走して救助を求める際に転倒して怪我をしてしまった場合でも不同意性交等致傷罪が成立することになります。
メンズエステでレイプされた場合の慰謝料・損害賠償について
慰謝料の相場は?
メンズエステでレイプされた場合、被害者は加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求として慰謝料の支払いを求めることができます。
慰謝料とは、レイプ被害によって被害者が負った精神的苦痛を補償するために支払われることになる金銭のことを指します。
慰謝料の相場としては、不同意性交等罪に該当するものから未遂に止まるもの、痴漢のように条例違反に近い加害行為に止まるものなど、ケースバイケースで異なるため慰謝料の相場もかなり幅広くなる可能性があります。
不同意性交等罪が成立する場合の慰謝料としては、およそ200万円〜600万円程度が相場であると言えます。被害者のダメージが大きい場合や加害行為が悪質な場合などには、1000万円近くの慰謝料が認められる可能性もあります。
損害賠償請求はできる?
メンズエステでレイプされた被害者が負傷した場合には、その傷害によって被害者が負うことになった通常の損害については、加害者に賠償を求めることができます。
具体的に、被害者は加害者に以下のような損害の賠償を求めることができます。
- 負傷や性感染症に罹患したことに伴う治療費
- 通院、入院費用
- 仕事を休まざるを得なくなった分の休業損害
- 仕事を辞めざるを得なくなったことにより逸失利益
職場でのレイプ被害のような労災事故の場合には、管轄する労働基準監督署の署長が後遺障害等級を認定することができます。後遺障害については、主治医の診断書や意見書を元に判断することになります。
メンズエステでレイプされた場合の対処法
それでは、メンズエステでレイプをしたお客に対し、被害に遭われた女性はどのような対応をとるべきでしょうか。
警察に被害届・告訴状を提出して事件化する
メンズエステでレイプされた場合には、警察に被害届や告訴状を提出して刑事責任を追求しましょう。
ただし、刑事手続きは犯人に刑事罰を科すべきかどうかを判断するための手続きであり、被害者への賠償など民事手続きとは目的が異なる点には注意が必要です。
したがって、犯人が逮捕・起訴されて刑罰が科されることになったとしても、当然に被害者が負った被害の賠償を受けられるわけではない、という点は理解しておく必要があります。
また、刑事手続きの中では、被害に遭った際の詳細な状況などを捜査機関に話して説明する必要が出てきます。また刑事裁判になった場合には、被害者として証人尋問を受ける可能性もあります。
性犯罪の場合には、女性捜査官による聴取、犯人とは対面せずに別室で証言ができるなど配慮されるケースが多いですが、手続きに参加することによる心理的な負担が存在することは事実です。捜査機関からの質問や弁護人からの尋問などにより二次的に精神的な苦痛を味わう可能性があります。
民事訴訟を提起する
加害者に対して、慰謝料や医療費など損害賠償請求するには、民亊手続きによって実現していく必要があります。
相手方が任意での賠償に応じない場合には、民事訴訟を提起して加害者の財産から強制的に賠償金の支払いを実現するしかありません。民事訴訟では、原告と被告が証拠に基づいて事実を主張・立証し、裁判官が原告の請求が認められるか否かを判断することになります。
勝訴判決を得るには時間がかかり半年から1年程度かかるのが通常です。民事訴訟でも当事者尋問などによって二次的な心理的な負担が生じる可能性はあります。
穏便に済ませたい場合は示談をする
民亊訴訟までは考えておらず、穏便に解決したいという場合には、加害者と示談することを目指すことになります。
「示談」とは、争いごとに関して当事者間でお互い譲歩して話し合いで解決することを指します。加害者が被害者に謝罪し、示談金や解決金といった名目で金銭を支払うことで、被害者から許しを得るということが示談の目的です。
示談が成立した場合には、一定の金額を受け入れることで被害者は加害者の謝罪を受け入れたと考えられていますので、それ以上の金銭その他の請求をすることはできません。
示談を当事者間の話し合いで決着させることができますので、裁判所を通すよりも簡易・迅速に、そして確実に金銭の支払いを受けられることが期待できます。
メンズエステのレイプ加害者と示談する時の注意点
メンズエステでのレイプ被害を刑事事件や民事裁判にすることなく示談を締結することで、二次的な心理的負担を回避して穏便に解決を図ることが可能です。
ただし、示談による解決を選択するにしても、以下で示すように注意すべき点があります。
脅迫して金銭請求してはならない
メンズエステでレイプをした加害者と示談する際には、相手方を脅迫して金銭の支払いを請求してはいけません。
- ○○万円払わなければ、レイプのことを勤務先や家族にバラす
- 賠償金を支払わなければ、すべてインターネット上に公表する
上記のように加害者に対して害悪を告知したり、そのうえで金銭の支払いを要求した場合には、脅迫罪(刑法第222条1項)や恐喝罪(刑法第249条1項)に該当する可能性があります。さらに本当に家族や勤務先、ネット上に加害者が特定できるようにレイプを公表した場合には、名誉棄損罪(刑法第230条1項)や侮辱罪(刑法第231条)に問われる可能性も出てきてしまいます。
加害者から正当に賠償金を受け取ろうという場合には、弁護士を代理人として適法な手続きで請求していくことが重要でしょう。
安易に示談しない・店任せにしない
メンズエステ側としては、事件や警察沙汰にしたくないという動機から「さっさと示談で解決して欲しい」と打診されるケースもあります。
勤務先のメンズエステ店から強引に要請されて低額な金額での示談に応じてしまったり、店が被害者を代理して不当な内容で示談してしまったりする可能性もあります。そのような不当な要請をしてくる勤務先はそもそもグレーな営業形態でメイズエステを経営している可能性があり、警察に目を付けらえてたり、詳しく調べられたりすることを嫌がっているパターンもあります。
適切に請求すればもっと高額な請求ができたはずなのに、低額な金額で示談を成立させてしまったことで、差額を請求することができなくなってしまう可能性が高いです。
一度示談が成立してしまうと、その後金額に納得できない場合であっても原則として追加で請求することはできません。
また一度示談を受け入れてしまうと、その後告訴や被害届を提出して刑事事件とすることも難しくなる可能性もあります。
メンズエステでレイプされた場合に弁護士に依頼するメリット
適切な金額を請求することができる
メンズエステでレイプされた場合に弁護士に依頼するメリットとして、適切な損害賠償金額を請求することができるということです。
損害賠償の費目には医療費・入通院費・慰謝料や休業損害などさまざまな費目が含まれています。
そのため、ご自身だけで賠償を受けようとすると、本来であれば請求できたはずの金銭が抜け落ちてしまう可能性があるのです。
弁護士に依頼しておけば、賠償金額の費目や慰謝料の算定根拠についても過去の判例などを参考に適切に算出することができるのです。
加害者側との交渉・やり取りも一任することができる
性加害・性犯罪の場合、事件以降に犯人と直接やり取りするのは非常に難しいことです。
弁護士に代理人として事件を依頼しておけば、相手方との連絡や交渉についてはすべて一任しておくことができます。依頼者は基本的には弁護士からの報告を受けて判断することになるため、手続き的な負担がかなり軽減します。
裁判対応も任せられる
話し合いで解決できない場合には民事訴訟手続きに移行することになるでしょう。
その場合も書面の作成・提出、裁判所への出廷などは弁護士にすべて任せておくことができます。当事者尋問などについても練習や対策を弁護士と一緒にアドバイスを受けながら進めることができますので、安心して手続きを進められます。
以上のように、メンズエステでレイプされた場合、加害者から正当な賠償金を受け取るためには弁護士に依頼することがおすすめです。
当事務所では、メンズエステでレイプなどの性的加害を行ったお客に対する損害賠償請求を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者のために全力を尽くします。女性弁護士・女性スタッフも在籍しておりますので、メンズエステでレイプなどの性的被害に遭われた女性は当事務所の弁護士にご相談ください。お力になれると思います。
誰でも気軽に弁護士に相談できます |
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