家族に脅迫されたので警察に逮捕してもらいたい。
父母・兄弟・姉妹とはいえ、脅迫という犯罪を犯した以上はしっかりと法的責任をとらせたい。そう考える方は少なくありません。
とはいえ、「家族間では脅迫罪は成立するの?」「家庭内のことなので警察は動かないのでは?」という疑問をお持ちの方もいることでしょう。
そこでここでは、①家族間でも脅迫罪は成立するのか②警察は動いてくれるのか、この2点につき、弁護士がわかりやすく解説します。
法律に詳しくなくても5分ほどで読めるようになっています。
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目次
そもそも脅迫罪とは?
脅迫罪とは、本人やその親族の生命、身体、自由、名誉、財産に危害を加えることを告げて脅迫する犯罪で、2年以下の懲役または30万円以下の罰金刑となっています(刑法222条)
具体的には、①「殺すぞ」(生命)②殴るぞ(身体)③監禁してやる(自由)④不倫していることを会社にばらしてやる(名誉)⑤家に火をつけてやる(財産)といった言葉などがあれば脅迫罪が成立します。
家族間でも脅迫罪は成立する?
刑法には、家族間だからという理由で成立しない犯罪はありません。
親子・兄弟・祖父母・叔父伯母・従姉妹・孫といった家族や親族間であっても脅迫罪は成立します。
家族間だと成立しない犯罪があると聞いたことがありますが?
繰り返しとなりますが、家族という関係性を理由として成立しない犯罪はありません。
ただし、成立した犯罪の刑罰が免除される、親族相盗例という特別の規定が刑法には設けられていますので確認してみましょう。
親族相盗例とは
親族相盗例とは、家族・親族の間で起きた一部の犯罪の刑罰を免除したり、親告罪(告訴しないと起訴できない犯罪)とする刑法の規定(刑法244条)です。
親族相盗例が適用されると、犯罪は成立するが刑罰が課されない(お咎めなし)または、被害家族が刑事告訴をしないと刑事裁判にならないということです。
もともと、親族相盗例という規定は、家族間での争いごと(とくに、お金や物の被害といった軽微な犯罪)には法律は関与しないという、刑法立法者の考えに基づいています。
脅迫罪には適用されない
ただし、この親族相盗例が適用される犯罪は、窃盗罪・詐欺罪・横領罪・恐喝罪やこれらの未遂罪で、脅迫罪には適用されません。
父母が子供を、子供が父母を、兄が弟を、弟が妹を、祖父母が孫を…脅迫すれば、通常通り、脅迫罪が成立し、有罪になれば刑罰が課されます。
恐喝罪には適用される
恐喝罪とは、暴力や脅迫を手段として、お金や物を脅し取る犯罪です。
例えば、息子が母親に対して「金をくれないなら家に火をつける」、夫が妻に対して「殴られたくなければ財布の中身を全部よこせ」といった言動をすれば恐喝罪が成立します。
しかし、恐喝罪には親族相盗例が適用されます。有罪判決になっても刑罰が免除されるため、逮捕後に起訴(刑事裁判にかける手続き)されることもなく釈放されるのが一般的です。
家族による脅迫が金品を要求するための手段であった場合には、刑事罰を与えて責任をとらせることはできませんので注意が必要です。
家族間での脅迫で警察は動いてくれる?
家族間でも脅迫罪が成立するとはいえ、警察が動いてくれなければ目的達成とはいえないでしょう。
実際に相談サイトに寄せられた家族間での脅迫被害についての相談内容を見てみましょう。
これらの相談内容で全てを語ることができないにせよ、実際のところ、家族間での脅迫では警察は及び腰です。事件化してくれる期待はあまり高くないと考えた方が良いかもしれません。
とはいえ、家族間といえども、暴力が伴った場合には、暴行罪や傷害罪で逮捕される事例もあります。
兵庫県警網干署は23日、口論になった長女(28)を殴ったとして、大阪府警曽根崎署の交番相談員、濃野雅士容疑者(60)=兵庫県姫路市網干区高田=を暴行の疑いで現行犯逮捕した。濃野容疑者は「手を払ったかもしれないが、酔っていてよく覚えていない」と容疑を一部否認している。
また、配偶者(事実婚・同姓関係も含む)による生命・身体への脅迫の場合は、DV防止法による保護命令(被害者に近づいてはいけない・同居している家から退去しなさいという命令)を裁判所に出してもらえます。保護命令に加害者が違反すると警察に逮捕されて刑事罰を与えられることもあります。
法的責任をとらせたいなら弁護士に相談
家族同士だからという理由で相手を脅して良いことにはなりません。家庭内だからこそ外部の者にはわからない積もりに積もった苦悩や怒りの感情もあることでしょう。
とはいえ、脅迫で警察に被害届を出しても、家庭内で事態を収めるように追い返されるケースがあることは既に説明しました。
それでも尚、脅迫の加害者である家族に何らかの法的責任をとらせたいと考えるようであれば弁護士にご相談ください。
弁護士が代理することで刑事告訴の告訴状が受理される可能性が高まります。また、刑事事件にならなくとも民事で責任追及することも可能です。
脅迫問題に詳しい弁護士にまずは相談することをお勧めします。
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