
※本記事は当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。依頼者のプライバシー保護のため、氏名・年齢・具体的な状況等については一部変更を加えています。
事案の概要(相談前の状況)
状況:反社会的勢力に属する夫から1億円以上恐喝されていたが、さらに生活費を支払うよう要求されていた
Aさんはいわゆるヤクザの構成員であったBさんと婚姻関係にありました。
Bさんは働いている様子はなく、Aさんに対していつもお金を無心してきていたようです。Bさんの要求額は次第に大きくなり、Aさんは性風俗店で働くなどしてお金を工面してきました。
離婚を含めた関係解消も考えたようですが、Bさんが何をするか分からなかったため怖さが勝り、決断ができませんでした。気が付けば、AさんがBさんに対して渡したお金は1億円を超えておりました。
Aさんは長年にわたる性風俗店の勤務やBさんからの度重なるお金の要求によって次第に精神的に不安定になっていきました。そんな状態にあったにもかかわらず、Bさんからは今までと変わらずお金の要求があり、AさんはBさんとの関係継続に限界を感じました。
そんな中、Bさんとの婚姻関係解消のため、弊所に相談に来られました。
弁護士の対応と解決への流れ
Aさんから時系列で、Bさんと知り合ってから現在までの事実経過を伺った後、まず、なぜBさんにお金を渡していたのか事情を確認しました。
Aさんからは、最初こそ好意もあったため、関係を維持するためにお金を渡していたが、途中からは要求金額が大きくなってくるとともに、暴言や暴力などを伴うようになり、恐怖でお金を渡してしまっていたとのことでした。
BさんはAさんの行動を監視しており、いつ、どこへ行くにも報告するよう言われていました。暴言や暴力のほか、Bさんによる監視、また、Bさん以外の人物と接点を持つことを禁じられて孤立させられていたことから、精神的に不安定になり、判断能力が低下していったようです。
Aさんに対して、Bさんの行為について何らかの証拠が残っているか確認をしたところ、LINEやメール、録音や録画といった客観的な証拠はないとのことでした。また、証拠が無かったため、警察にも被害相談をしたことはないことが分かりました。
様々な事情を伺ったうえ、Aさんの意向を確認すると、渡したお金の取り戻しが難しいことは分かっており諦めるつもりであること、ただ、これ以上お金は渡したくないこと、そして一番の希望は、Bさんと一切関わりを持たないようにすることであると分かりました。
Aさんの相談を受けている時にも、Bさんからひっきりなしに連絡が来ていたことから、弊所で対応をお受けすることにしました。Aさんには、今後、Bさんと一切連絡を取らないようにすること、また、刑事事件とするかどうかは別として、Bさんの属性や今までの行動を考えると今後トラブルになる可能性もあることから、最寄りの警察署に速やかに被害相談に行くよう指示しました。
その後、弊所からBさんに連絡をしました。Bさんに対しては、Aさんに直接の連絡をしないよう申し入れ、過去にAさんはかなりのお金を渡しているが、そのお金を返還してもらおうとは現在考えていないこと、ただ、生活費として請求を受けているお金についてはこれ以上支払うことができないこと、また、Aさんは離婚したいと考えていることを伝えました。
Bさんは激昂し、夫婦であるのだから、Aさんには自分の生活費を支払う義務があると主張し、一歩も譲らないとのことでした。Bさんとはその後もかなり話し合いを行いましたが、いくら法的な理屈を説明しても納得はしませんでした。
Bさんのやり口はヤクザらしく、弊所に何度も連絡をしてきたうえ、すぐの折り返しを要求し、折り返しが遅れると延々とクレームを入れてくる、事務員に暴言を吐く、自宅近くの喫茶店などに来なければ話はしないと一方的な要求をする、弁護士会に苦情を申し入れたり、苦情処理の手続を申し立ててくるといった当方を疲弊させようとするものでした。
途中、Bさんに弁護士が代理人として就いたことがありましたが、その代理人も途中で辞任をしてしまいました。
弊所からは、繰り返しBさんの要求には応じかねる、納得がいかなければ調停などの法的手続を利用されたいと申し入れておりました。その結果、Bさんから調停が申し立てられたこともありましたが、一方的に法律を無視した持論を展開し、調停委員にも暴言を吐く始末であり、調停は不調に終わりました。
Bさんとはかなり長い間やり取りをしてきましたが、全く進展はなく、当方からは、裁判所の判断によって当方に義務があることが確認されれば検討するが、話し合いによる解決は不可能であると判断しているため、これ以上の対応はしないと伝えました。
調停を申し立てても自分の希望が通らず、あらゆる揺さぶりをかけても全く進展しなかったため、Bさんは無駄であると考えたのか、突然、離婚に応じると話をしてきました。
離婚の条件を色々要望してきましたが、いずれも拒否し、離婚に応じてくれるのであれば、当方から金銭を支払うことはできないが、過去に支払ったお金について返金を求めるようなことはしないと伝え、離婚届を書いてもらいました。
Aさんに離婚が成立したことを報告したうえ、リスク回避のために、弊所にも今後の連絡先を教えずに引っ越しするよう伝え、本件は終件となりました。
解決結果と弁護士のコメント
ポイント:1億円以上恐喝されていたが、これ以上の金銭要求を拒否し、追加支払いなく離婚を実現
弊所では、ヤクザなど反社会的勢力に属する人物が相手方となる民事事件をお受けしてまいりました。通常の民事事件と異なり、慎重に対応していく必要がありますし、手間がかかることが多い印象です。
まず、すぐに刑事事件となるべき事情がない時でも、警察には相談をしておく必要があります。基本的に、相手方がメリットのないリスクを取ることはないかと思いますが、我々の常識とは異なる考え方をしているところもあり、採算を度外視した行動に出ることもあるからです。
また、法的な理屈を説明しても、スムーズに話が進むとは限らないことに留意する必要があります。本件のように請求を受けている場合には、法的理屈をベースに拒否をするという選択もできますが、当方から何らかの請求をしようとした場合、請求できるだけの理屈と証拠があっても、素直に対応してくれることはほとんどありません。
さらに、資産を分かりやすい形で保有していることは少なく(そもそもヤクザであれば銀行口座を持っておりませんし、それ以外の資産についても他人名義にしたり、預けたりしてうまく隠匿していることが多い印象です)、強制執行によって回収するという方法を使えないことが多々あります。
以上のような事情から、ヤクザなど反社会的勢力に属する人物を相手方とする民事事件においては、権利を実現するというベストな結果を目指しつつも、これ以上の負担を抱えないようにすることや関係を解消するといったことを現実的な落としどころとして考える必要があると言えます。実際にヤクザに脅され続けた末に弁護士の介入で関係を断った事例については「ヤクザから借金後に数百万円請求されるも支払わず関係を清算した事例」もご参照ください。
上記は相手方本人とやり取りする時は当然のこと、弁護士が相手方の代理人に就いた場合でも同様に妥当します。過去には反社会的勢力に属する人物の代理人に弁護士が就いたこともありましたが、相手方本人とのやり取りほどではないにせよ、法的観点からすればスムーズに進むべき話が進まなかったことがありました。
それが弁護士本人の考えに基づくものであったのか、依頼者である相手方に言われるがまま対応していたのかは定かではありませんが、弁護士が代理人に就いたからといってスムーズに解決できる事案ばかりではないことを留意しておく必要があるでしょう。
ヤクザなど反社会的勢力に属する人物との関わりを持てば、トラブルになった際、通常の事案よりも多く苦労をすることになると言えます。関わりを持ってしまう前に、相手方の属性をきちんと把握することが重要です。ヤクザとのトラブルでお悩みの方は「ヤクザとトラブルになって脅された場合の対処法と頼れる相談先」もあわせてご確認ください。
もし関わりを持ってしまったら、関係の解消ができないか検討しましょう。ご自身での判断や対応にお困りの場合には、下手に話を進めず、弁護士や警察に相談しながら進めるようにしてください。
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この記事の監修者
脅迫・恐喝被害の解決に豊富な実績を持つ。一般社団法人 詐欺・不当要求対策協会の代表理事として、不当要求対策の研究・啓発活動にも取り組んでいる。「警察沙汰にしたくない」「家族や会社に知られたくない」といった被害者特有の事情に寄り添い、粘り強い交渉で解決に導く。他の事務所で断られた案件にも積極的に対応。

