
トレントの開示請求で意見照会書が届き、「拒否すれば開示されずに済むのでは」「拒否理由の書き方がわからない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
開示を拒否するには、同封の回答書で「同意しない」を選び、トレントを使っていないなど確認できる事実を理由に書いて、期限内に返送します。ただし、そうすれば必ず開示を防げるわけではありません。裁判所の手続(開示命令)が進んでいる場合は、「同意しない」と回答しても開示が認められることが多いのが実情です。
この記事では、開示請求の対応実績が豊富な弁護士が、次の点について解説します。
- 拒否しても開示に至る場合
- 拒否理由の書き方と避けるべきNG例
- 拒否すべきケースと同意すべきケース
- 不同意の回答後の見通し
この記事を読めば、回答書に何を書き、何を書いてはいけないのかを整理し、返送する前にご自身が拒否すべきかどうかを判断できます。
なお、トレントの開示請求でお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。地域を問わずご相談を承っています。回答には期限があるため、早めの対応が結果を左右します。
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トレントの開示請求を拒否できるのか?
意見照会書で、トレントの開示請求に対して「同意しない」と回答し、拒否の意思を示すことはできます。もっとも、開示するかどうかを最終的に決めるのは、プロバイダや裁判所です。権利侵害が明らかだと判断されれば、拒否しても開示されることがあります。
発信者情報開示請求で届く意見照会書
発信者情報開示請求とは、権利を侵害されたとする人が、侵害した人を特定するために、インターネット接続事業者(OCNやドコモといったプロバイダ)などに契約者の氏名や住所などの開示を求める手続です。
BitTorrentなどのトレントはダウンロードと同時にファイルの断片を他の利用者へ送信する仕組みのため、権利者の監視システムに通信の記録が残ります。権利者は、その記録(IPアドレスと通信日時)をもとに、許諾なく作品を送信したことを著作権(送信可能化を含む公衆送信権。著作権法23条1項)の侵害として、プロバイダに開示を求めます。ダウンロードだけのつもりでも問題になる理由は「トレントはダウンロードのみも違法?開示請求や損害賠償のリスク」で解説しています。
開示請求を受けたプロバイダには、契約者と連絡が取れない場合などを除き、開示に応じるかどうかについて契約者の意見を聴く義務があり(情報流通プラットフォーム対処法6条1項。2025年4月にプロバイダ責任制限法から改称)、開示に応じるべきでないという意見であれば、その理由も聴くことになっています。
この確認のために送られてくるのが「発信者情報開示に係る意見照会書」です。
照会書には回答書が同封されており、開示に同意するかどうかを答えます(書き方は後述します)。回答の前に確認しておきたい照会書の見方や記載内容については「開示請求の意見照会書が届いたら?回答書と正しい対処法」もご覧ください。
拒否しても開示が認められる場合
開示が認められるかどうかは、次の2つの要件を満たすかで決まります(情報流通プラットフォーム対処法5条1項)。
1つは、開示を求める権利者の「権利が侵害されたことが明らか」(権利侵害の明白性)であることです。もう1つは、損害賠償の請求に必要であるなど、「開示を受けるべき正当な理由」があることです。
権利侵害が明らかかどうかの判断では、権利者側が提出する監視システムの記録が証拠として認められることが多いものの、記録の正確性が争われて開示が認められなかった裁判例もあります。
また、権利者が開示を求める方法には、裁判所の手続(発信者情報開示命令の申立てや訴訟)と、裁判外でプロバイダに直接求める「任意開示請求(テレサ書式)」の2つのルートがあります。テレサ書式とは、業界のガイドラインに定められた請求書の書式のことです。
任意開示請求であれば、契約者が拒否するとプロバイダが開示を見送ることが多い一方、裁判所の手続であれば、拒否しても裁判所が開示を命じることが多いのが実情です。
照会書の本文に「発信者情報開示命令の申立て」があった旨や裁判所名・事件番号が書かれていたり、裁判所あての申立書の写しや「甲第○号証」のような証拠番号のついた書類が同封されていたりする場合は、すでに裁判所の手続が進んでいる可能性が高いと考えられます。そうした記載や書類がなく、プロバイダからの照会だけであれば、任意開示請求の段階と考えられます。どちらのルートかで拒否した後の見通しが変わるため、書面を確認しておきましょう。
トレント開示請求の拒否理由と回答書の書き方
トレントの開示請求を拒否するときは、回答書の書き方が結果を左右します。書き方を誤ると、利用を自分で認める内容になってしまい、不利な材料を残しかねません。
「同意しない」を選び、期限内に返送する
同封の回答書で「同意しない」(不同意)を選び、理由を書く欄に、同意しない事情を具体的に記入します。
回答期限は法律で決まったものではなく、ガイドラインの書式では照会書の受領から2週間以内とされています。届いた照会書に書かれた期限を確認し、それまでに返送しましょう。
期限までに回答しないと、特段の主張をしないものとして扱われます。ご自身の事情がプロバイダに伝わらないまま、権利侵害が明らかかどうかの検討が進み、明らかとされた場合は開示に至ることもあります。回答しないまま放置した場合の影響は「トレント開示請求や示談金請求の無視でどうなる?リスクを解説」で紹介しています。
避けるべき拒否理由のNG例
トレントの開示請求で拒否理由を書くときは、次のような書き方をしてはいけません。いずれも拒否の理由として役に立たないうえ、かえって不利になるおそれがあります。
NG例①:「間違えてダウンロードしてしまった」
「間違えてダウンロードしてしまった」という書き方は、トレントソフトを使用したことと、ダウンロードしたことを自分で認める内容です。
トレントではダウンロード中にデータのアップロードも行われるため、権利侵害を認めたものと受け取られ、拒否の理由にはなりません。利用した事実があるなら、拒否ではなく同意を検討しましょう。
NG例②:「記憶にない」とだけ書く
「記憶にない」とだけ書くと、利用した可能性を否定できていないと受け取られます。
正しくは、「トレントソフトをインストールしたことがなく、パソコンにもソフトや履歴が残っていない」「該当日時は外出していて、パソコンの電源も切っていた」など、確認できる事実を具体的に書きます。
NG例③:虚偽の記載をする
実際には利用したのに「使ったことはない」と書くなど、事実と違う内容を書くことは避けてください。
回答書は、その後の裁判所の手続でプロバイダから提出されることもあります。後から利用の記録が示されれば、主張全体が信用されなくなり、交渉や裁判でかえって立場を悪くします。
NG例④:感情的な記載をする
「こんな請求は許せない」「身に覚えがないのに失礼だ」といった感情的な言葉や、開示請求をした側への非難は、開示するかどうかの判断に役立ちません。
正しくは、「トレントソフトを使用した事実はなく、指摘された作品をダウンロードしたこともありません」のように、事実を落ち着いて書きます。
ケース別の記入例を参考に拒否理由を書く
拒否理由の書き方の基本は、ご自身の状況に合わせ、確認できる事実を中心に書くことです。よくある2つのケースの記入例を紹介します。
記入例①:トレント使用の事実がない場合
トレントソフトを使用した事実がなく、該当作品をダウンロードした覚えもない場合は、曖昧な否定ではなく、確認した事実を書きます。
【記入例】
私はトレントソフトを使用した事実はありません。パソコンにトレントソフトをインストールした記録はなく、ダウンロード履歴にも該当作品はありません。必要に応じて、パソコンの解析結果などを提示することも可能です。したがって、開示請求に記載された権利侵害行為は私が行ったものではなく、開示に同意することはできません。
ソフトの有無と履歴の有無を分けて書き、確認の方法にも触れておくと、主張の裏付けが伝わりやすくなります。
記入例②:該当日時にパソコンを使用できなかった場合
指摘された日時に、パソコンを使えない状況にあった場合は、「使っていない」と書くだけでなく、証明できる事実を具体的に書きます。
【記入例】
開示請求に記載された日時(令和○年○月○日○時○分頃)には、私は業務出張で東京に滞在しており、自宅のパソコンは電源を切っていました。出張の事実は、宿泊施設の領収書や交通機関の利用記録で証明が可能です。したがって、開示請求に記載された権利侵害行為は私が行ったものではなく、開示に同意することはできません。
トレントソフトは起動したままにしておくと不在のあいだも送信を続けます。パソコンの電源を切っていた場合は、記入例のように、不在だったことに加えてその事実も書き、不在を裏付ける証拠を手元に用意しておきましょう。電源を入れたままだった場合は、どう書くかを弁護士に確認してください。
なお、記入例はあくまで参考です。書き方は状況によって異なるため、回答書は提出前に弁護士へ確認を依頼すると安心です。
拒否すべきケース・同意すべきケース
トレントの開示請求を拒否するか同意するかの分かれ目は、利用した事実があるかどうかです。判断の流れは次の図のとおりです。
拒否すべきケース
拒否を検討すべき典型は、トレントの利用に身に覚えがない場合です。指摘された日時にパソコンを使っていない、トレントソフトをインストールしたこともないなど、ご自身が利用していないことがはっきりしている場合は、開示を拒否すべきです。
同居の家族や回線を貸した友人など、契約者以外の人が利用していた場合も、その事情を不同意の理由として書くことはできます。ただし、開示されるのは回線の契約者の氏名や住所のため、契約者本人が利用していなくても開示されることがあり、この事情だけで開示を防げるとは限りません。利用した本人が対応を引き受けるなら、同意して、その人に対応を引き継ぐ選択もあります。どちらがよいかは事情によって変わるため、弁護士に相談して決めてください。家族などが利用していた場合の具体的な進め方や回答の考え方については「身に覚えがないトレント開示請求の意見照会書が届いた時の対処法」もあわせてご確認ください。
このほか、請求した人が作品の権利者ではないなど、前述した開示の要件を満たさない事情があれば、それも拒否の理由になります。
同意すべきケース
指摘された作品をトレントでダウンロードした事実がある場合や、利用した可能性を否定できない場合は、同意を検討します。
同意すると、氏名や住所が権利者側に開示され、その後、権利者の代理人弁護士から示談金の支払いを求める通知書が届くのが一般的です。実際に支払う金額の目安や、提示された金額が妥当かどうかの考え方は「トレント開示請求の示談金相場は?高すぎる請求の減額と対処法を解説」をご覧ください。
利用した事実があるのに拒否を続けても、裁判所の手続に進めば、開示が認められる可能性が高くなります。その場合、開示の手続にかかった弁護士費用まで損害賠償として請求されることがあり、支払う額がふくらむおそれがあります。
判断や回答書の書き方に迷う場合は、返送する前に弁護士へご相談ください。
関連記事:AVのトレント利用と開示請求の実態|通知が届いたときの対処法
トレントの開示請求を拒否した後の流れ
拒否の回答をした場合、その後の流れは、権利者が任意開示請求と裁判所の手続のどちらで開示を求めているかによって変わります。任意開示の段階で開示されず、権利者が裁判所の手続に進まなければ、手続はそこで終わります。一方、プロバイダの判断や裁判所の手続で開示されると、権利者から損害賠償を請求されたり、刑事告訴されたりすることがあります。
- プロバイダによる判断と任意開示
- 裁判所への開示請求
- 情報開示後の損害賠償請求または刑事告訴
【ステップ①】プロバイダによる判断と任意開示
トレントの開示請求で拒否の回答を受けたプロバイダは、契約者が書いた理由も踏まえて、開示するかどうかを判断します。不同意の回答があると、プロバイダが任意に開示することは多くありません。
ただし、権利侵害が明らかだとプロバイダが判断すれば、不同意でも開示されることがあります。そのため、拒否する場合の書き方としては、不同意の意思表示に加えて、権利侵害の事実がないことを示す具体的な事情を回答書に書いておくことが大切です。
【ステップ②】裁判所への開示請求
プロバイダが開示に応じなかった場合や、初めから裁判所の手続を選ぶ場合、権利者は、プロバイダを相手に、裁判所へ発信者情報開示命令を申し立てたり、開示を求める訴訟を起こしたりすることができます。開示命令は、2022年10月施行の法改正で設けられた制度で、裁判所が判決ではなく決定によって開示を命じる手続です。
裁判所では、権利が侵害されたことが明らかかどうかなどが審理され、トレントの事案では、多くの場合に開示が認められています。開示が認められると、開示の手続にかかった弁護士費用が損害賠償に上乗せされうる点は、前述の「同意すべきケース」のとおりです。
【ステップ③】情報開示後の損害賠償請求または刑事告訴
開示によって契約者の氏名や住所などの個人情報が権利者に知られると、いよいよ具体的な法的責任の追及が始まります。主なものは、損害賠償の請求と刑事告訴です。
損害賠償では、著作権法114条1項により、受信された複製物の数量に1つあたりの利益額を掛けるなどして損害額が算定されることがあり、数百万円〜数千万円という高額を請求されることもあります。もっとも、弁護士が交渉することで減額できる可能性があります。
また、著作権侵害は、10年以下の拘禁刑(懲役と禁錮を一本化した刑罰)、1000万円以下の罰金またはその両方を科される可能性のある重い罪です(著作権法119条1項)。示談が成立すれば、刑事告訴を避けられる可能性が高まります。この罪で逮捕に至るケースや回避策の具体例は「トレントで捕まる確率は?逮捕される違法行為と対処法を解説」をご参照ください。
トレントで開示請求が届いた方は早期にご相談ください
意見照会書の回答には期限があり、回答書の内容しだいで、その後の手続での立場が変わる場合があります。
弁護士に依頼すれば、ご自身の状況に応じて拒否・同意の判断、回答書の書き方の確認や作成、開示後の示談交渉や和解までをまとめて任せられます。早期に弁護士が介入することで、賠償額の減額や、家族や勤務先に影響が及ばない形での穏便な解決を目指すことも可能です。
「身に覚えがないが、どう書けばよいかわからない」「利用した覚えがあり、拒否してよいか迷っている」といった段階でのご相談でも構いません。一人で抱え込まず、まずは現状をお聞かせください。
当事務所はトレントの開示請求・損害賠償請求の対応実績が豊富にあり、意見照会書への回答から示談交渉、刑事弁護まで一貫してサポートいたします。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
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