
「自己破産するなら、少しでも財産を手元に残しておきたい」このように考える方は少なくありません。
しかし、自己破産の前後に財産を隠したり、親族に譲渡したりする行為は「詐欺破産罪」という犯罪に該当する可能性があります。詐欺破産罪が成立すると、10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金という重い刑罰が科されるだけでなく、免責が認められず借金が残ってしまうこともあります。
この記事では、詐欺破産罪について以下の内容を解説します。
- 詐欺破産罪とは何か、どのような行為が該当するのか
- 詐欺破産罪の刑罰と成立時期
- 協力者にも犯罪が成立するケース
- 破産犯罪が発覚した場合のデメリット
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詐欺破産罪とは?
詐欺破産罪とは、破産法265条に規定されている犯罪で、破産手続きにおいて債権者を害する目的で財産を隠したり、不当に処分したりする行為を処罰するものです。
破産法では破産手続きの公正さを保つために様々な「破産犯罪」を定めていますが、詐欺破産罪はその中でも最も重い刑罰が科される犯罪です。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。
自己破産すると一定以上高額な財産は処分され、債権者への配当などに充当されることになります。しかし、自分の財産を守ろうとして隠してしまう事例が後を絶ちません。処分されるくらいなら自分で壊してしまおうとするケースまで存在します。
詐欺破産罪は、うっかり犯してしまいやすい一方で、最大10年の拘禁刑という非常に重い刑罰が科される犯罪です。
破産者による不正な行為が見過ごされてしまうと、破産制度に対する信頼性が失われ、制度自体の存続すら危ぶまれることになりかねません。そのため、破産法では一定の行為を犯罪として規定し、厳しく取り締まっています。
詐欺破産罪となる4つの行為
破産法265条1項では、以下の4つの行為を詐欺破産罪と規定し、10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金または両方の刑を併科すると定めています。
- ①債務者の財産を隠匿し、または損壊する行為
- ②債務者の財産の譲渡または債務の負担を仮装する行為
- ③債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為
- ④債務者の財産を債権者の不利益に処分し、または債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為
なお、詐欺破産罪が成立するためには、下記の各行為が「債権者を害する目的」をもってなされることが必要とされています。
①債務者の財産を隠匿し、または損壊する行為(破産法265条1項1号)
債務者(破産申立人)の財産を隠したり壊したりする行為が該当します。
自分の財産を隠しただけでも詐欺破産罪は成立するので注意が必要です。
具体的には、以下のような行為がこれにあたります。
- 高価な宝石や貴金属があるにもかかわらず、財産目録に記載せずに申告しない
- 相当額の仮想通貨を保有しているのに、存在を隠して報告しない
- 現金を自宅や知人宅に隠して申告しない
- 処分されるくらいならと、自動車や骨董品などを故意に破壊する
②債務者の財産の譲渡または債務の負担を仮装する行為(同2号)
破産申立人の財産を親族や友人知人などに譲渡してしまったり、譲渡したように仮装する行為が該当します。
また、実際には債務を負担していないにもかかわらず、債務を負担した(借金した)ように仮装する行為も取り締まりの対象となります。
具体的には、以下のような行為がこれにあたります。
- 自分名義のままでは処分されてしまうからと、自動車の登録名義を配偶者や親族に変更する
- 実際には借り入れがないのに、親族から300万円を借りていることにして債権者一覧表に記載し、他の債権者への配当を減らそうとする
- 友人や知人に財産を売却したかのように見せかける偽の契約書を作成する
③債務者の財産の現状を改変して、その価格を減損する行為(同3号)
財産を壊したり傷をつけ、財産の価値を減少させる行為が該当します。
自分の財産を処分されてしまうなら、いっそのこと自分で壊してしまおうなどという事態を予防する趣旨です。
具体的には、以下のような行為がこれにあたります。
- 所有する更地の上に建物を建てたり廃棄物を置いたりして、土地の価値を下落させる
- 借地権付き建物について、わざと借地権を放棄して財産価値を減少させる
④債務者の財産を債権者の不利益に処分し、または債権者に不利益な債務を債務者が負担する行為(同4号)
破産申立人が所有している財産を不当に安く売却してしまったり、不自然に高金利で借金をしたりする行為が該当します。
具体的には、以下のような行為がこれにあたります。
- 時価1000万円のスポーツカーを100万円で売却する
- 不動産を時価の4分の1以下の価格で知人に売却する
- 法定金利を大幅に超える高利貸しから借り入れをする
詐欺破産罪が成立する時期
詐欺破産罪が成立した場合、10年以下の拘禁刑または1000万円以下の罰金またはそれらの併科とされるなど、非常に重い刑罰が科せられる可能性があります。
それでは、債務者の詐欺破産罪に該当する行為は、いつの時点で行われたものが取り締まりの対象となるのでしょうか?
この問題について破産法265条1項では、「破産手続き開始の前後を問わず」と規定しています。
つまり、自己破産を申立てた後だけでなく、破産申立前に行われた行為も詐欺破産罪として処罰される可能性があります。
しかし、破産申立前の行為がすべて処罰の対象となるわけではありません。
取り締まりの対象となるのは、債務者としてすでに債務の支払いが非常に難しくなっており、自己破産するしかないという状態まで行き詰まっている状態で行われた行為に限定されます。
つまり借金はあるものの、まだ十分返済できる状態であれば詐欺破産罪に該当するような行為をしても刑罰に問われる恐れはありません。
これに対して、返済しきれないほど借金が膨らんでしまい、もはや自己破産するしかないと思われるような状態で行った行為に関しては処罰の対象となる可能性が高いということです。
しかし現実問題として、実際にどのような状況における財産の処分行為などが詐欺破産罪に該当するかを判断することは、非常に難しいものです。
自分の判断だけで行った処分行為などが、あとから問題となっては大変です。
判断に迷った場合には、事前に弁護士に相談することをおすすめします。
詐欺破産罪は協力者にも成立する
破産犯罪では、財産の隠匿などをした債務者本人だけでなく、その協力者に対しても犯罪が成立することがあります。
破産犯罪の協力者には、以下のような場合において犯罪が成立することになっています。
- ①破産法265条1項の場合
- ②破産法265条2項の場合
それぞれについて解説いたします。
①破産法265条1項の場合
破産法では詐欺破産罪を行った本人だけに犯罪が成立するのではなく、「情を知って」その行為に加担した協力者にも犯罪が成立する場合があります。
同法265条1項後段では、債務者の財産を債権者の不利益に処分した場合や債権者に不利益な債務を債務者が負担した場合において、その行為の相手方にも詐欺破産罪が成立する旨規定しています。
この場合には、それら行為を行った債務者本人だけでなく、その行為の相手方にも10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金(または併科)が科されることになります。
よくある事例で説明すると、債権者を害する意図を知りながら債務者から不当に安い値段で財産の譲渡を受けたり、債務者に対して必要以上の高金利でお金を貸したりした場合には、財産の譲渡を受けた人やお金を貸した人も詐欺破産罪に問われる恐れがあるということです。
②破産法265条2項の場合
債務者について破産手続開始決定が出ていること又は保全管理命令が発令されていることを知っていながら、債権者を害する目的で債務者の財産を取得したり第三者に取得させたりした場合、破産法265条2項の規定によって詐欺破産罪が成立します。
ここで注意すべき点は、本条文によって取り締まりの対象となる行為は同条1項の場合と異なり、債権者の不利益となる処分行為などに限定されないということです。
つまり、正当な値段で財産を取得した場合であったとしても、債権者を害する目的を持っていれば詐欺破産罪が成立します。
また、債務者と取引した直接の相手方だけではなく、その取引に仲介者がいた場合には仲介者も本条文の規定によって詐欺破産罪に問われることになります。
ただし債務者が行う場合と異なり、その行為が破産手続開始決定前に行われた場合には本罪は不成立となります。
破産犯罪が発覚した場合のデメリット
破産犯罪が発覚した場合、つぎのようなデメリットを受けることになります。
- ①自己破産の免責を受けられなくなる
- ②刑事罰を受ける
- ③取引の効果が無効となる
非常に大切なことなので、それぞれ確認しておきましょう。
①自己破産の免責を受けられなくなる
「免責(めんせき)」とは、破産手続きの最終段階において、裁判所から借金の支払い義務の免除を受けることを言います。
一方、破産法では「免責不許可事由」を定め、債務者に一定の行為がある場合には免責が認められない旨規定しています。
破産法の定める「免責不許可事由」の中には、財産の隠匿や毀損、そして不利な条件での債務の負担などが含まれます。
つまり、財産隠しなどの不正行為は詐欺破産罪に該当するだけでなく、免責不許可事由にも該当します。
当然それらの不正行為を行った場合には、免責が受けられなくなってしまいます。
自己破産を行う最大の目的は、免責を受け借金すべての返済義務の免除を受けることです。
免責を受けられなくなってしまっては、わざわざ自己破産手続きを行った意味の大半がなくなってしまうことでしょう。
ただし、実際の手続きでは免責不許可事由がある場合でも「裁量免責」によって免責が認められる可能性は残ります。
しかし、債務者の不正行為が悪質と判断されるケースでは免責をもらえない可能性が高くなります。
破産犯罪として逮捕・起訴され有罪判決を受けた場合には、不正行為がかなり悪質なケースであることが明らかであるため、裁量免責を受けられる可能性はかなり低いと考えなければいけません。
②刑事罰を受ける
すでにご紹介したように、詐欺破産罪が成立した場合には重い刑罰が科せられます。
軽い気持ちでうっかり行った行為であったとしても、債務者などは詐欺破産罪に問われ、警察に逮捕され裁判を起こされる事態にまで発展する恐れがあります。
さらに裁判において罪状が悪質と判断された場合には、実刑を受け刑務所に入ることになる可能性も否定できません。
仮に罰金刑で済んだとしても、罰金の支払い義務は自己破産でも免除の対象とはならないため、全額支払わなければならなくなってしまいます。
自己破産手続きを行っている人にとって、罰金の支払いはけっして楽なものではないはずです。
もし罰金を支払うことができない場合には、労役場に収容され一定期間強制的に労働させられることになります。
③取引の効果が無効となる
財産の譲渡や債務の負担など、詐欺破産罪に該当する行為には取引の相手方が存在するケースがあります。
そのような行為が詐欺破産罪とされた場合、その取引の法律上の効果が無効となり、はじめから取引がなかったこととされてしまいます。
破産管財人には法律上「否認権」が認められており、管財人によって否認された債務者の取引行為は無効となります。
取引が無効となった場合には、その取引の相手方だけでなく、その後その人と取引した人などにまで迷惑をかける恐れがあります。
詐欺破産罪でお悩みの方は弁護士にご相談ください
詐欺破産罪は、財産隠しや譲渡の仮装など、うっかり行ってしまいがちな行為でも成立する可能性があり、最大10年の拘禁刑という重い刑罰が科されます。さらに免責が認められなくなり、借金問題を解決できないまま刑事責任まで負うことになりかねません。
自己破産を検討している段階では、どのような行為が詐欺破産罪に該当するのか、ご自身で判断することは難しいものです。「これくらいなら大丈夫だろう」と軽い気持ちで行った行為が、あとから問題になるケースも少なくありません。
借金問題を抱えて不安を感じている方、自己破産の手続きを検討している方は、手続きを進める前に弁護士へご相談ください。当事務所では自己破産に関するご相談を全国どこからでも承っております。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

