背任罪で逮捕されたらどうなる?流れと早めにとるべき対応

「背任罪で逮捕されたらどうなるのか」「会社に告訴されたら、すぐに逮捕されてしまうのか」と不安を抱えていませんか。背任罪で逮捕されると、起訴するかどうかが決まるまで最長23日間身柄を拘束されることがあり、起訴されれば刑事裁判で刑罰が決まります。

もっとも、2025年の検察統計では、背任の疑いで検察庁が処理した人のうち、逮捕されたのは約4人に1人です。会社に疑いを持たれた段階で動けば、示談や損害の弁償によって、逮捕や重い処分を避けられる可能性があります。ただし、いったん逮捕されると、ほとんどの人がそのまま勾留されているため、早めの対応が欠かせません。

この記事では、背任・横領事件の刑事弁護に取り組む弁護士が、次の点について解説します。

  • 背任罪で逮捕されるケースと在宅で進むケース
  • 逮捕から起訴・判決までの流れと拘束期間
  • 逮捕や重い処分を避けるためにとるべき対応

お読みいただくことで、ご自身が逮捕される可能性をどう見積もればよいか、そして今のうちに何をすべきかを判断できます。

なお、背任事件でお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。ご相談は地域を問わず承っています。

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背任罪はどんな罪?成立する要件と刑罰の重さ

背任罪は、会社などから財産にかかわる仕事を任された人が、その信頼を裏切って会社などに財産上の損害を与えたときに成立する罪です。刑法247条が定める背任罪の刑罰は、5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。

(背任)

第二百四十七条 他人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、五年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

出典:刑法|e-Gov法令検索

成立するのは、次の4つがすべてそろったときです。

  • 会社などのために事務を処理する立場にあること(この立場にある人でなければ単独では罪に問われないため、背任罪は「身分犯」と呼ばれます)
  • 自分や第三者の利益を図る目的、または会社などに損害を与える目的があること
  • 任された任務に背く行為をしたこと
  • 会社などに財産上の損害が生じたこと

たとえば、融資の担当者が回収の見込みがない相手に無担保で貸し付ける行為や、購買の担当者が見返りを受け取って相場より高く発注する行為が、逮捕や起訴につながりうる典型例です。

取締役や監査役などの役員が同じような行為をした場合は、会社法960条の特別背任罪となり、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。特別背任罪については「特別背任罪とは?成立要件・罰則と事例・判例を解説」で詳しく解説しています。

拘禁刑は、2025年6月1日施行の改正刑法で懲役と禁錮を一本化した刑罰です。同日より前の行為には、背任罪の改正前の法定刑(懲役5年以下または罰金50万円以下)が適用されます。

よく比べられる横領罪は、預かっているお金や物を自分のものにする罪です。背任罪は、そうした行為がなくても、上の4つの要件がそろえば成立します。背任罪の刑は、横領罪のうち会社のお金を着服する業務上横領罪(10年以下の拘禁刑)より軽く定められています。もっとも、損害額が大きい事案や手口が悪質な事案では、逮捕されたうえで実刑判決が言い渡されることもあります。

背任罪の公訴時効(起訴できる期限)は5年です(刑事訴訟法250条2項5号)。要件や横領罪との違い、時効の詳細は「背任罪とは?成立要件と刑罰、横領罪との違いをわかりやすく解説」をご覧ください。

背任罪の発覚から逮捕・裁判までの流れ

背任の疑いをかけられてから処分が決まるまでは、会社の対応、警察と検察の捜査、刑事裁判の順に進みます。背任罪で逮捕されるとは限らず、逮捕されないまま捜査が進む在宅事件になることもあります。

背任罪の疑いが会社に発覚してから判決までの流れ(会社に発覚→被害届・告訴をきっかけに警察が捜査〈逮捕なら最長23日・逮捕されなければ在宅〉→検察官が起訴か不起訴かを判断→正式な裁判で執行猶予か実刑かの判決)

会社に発覚してから被害届・告訴に至るまで

背任罪の疑いは、会社の社内調査などで発覚することがあります。会社は帳簿や取引の記録、メールなどを確認したうえで、必要に応じて本人から事情を聴きます。

その後の会社の対応は、損害の弁償や示談の話し合いに応じる、懲戒処分などの社内の処分にとどめる、警察に被害届や告訴状(処罰を求める書面)を出す、のいずれか、またはその組み合わせです。事件が表に出ると取引先や株主からの信用にかかわるため、まずは返済についての話し合いを求めてくる会社もあります。一方で、話し合いがまとまらなかった場合や、損害額が大きく悪質だと判断された場合には、告訴に踏み切ることがあります。告訴や被害届が出された後の捜査の進み方については「被害届を出されたらどうなる?流れと取り下げ・対処法」もあわせてご確認ください。

会社が被害者となる背任罪は、会社からの告訴がなくても警察が捜査し、検察官が起訴できる罪(非親告罪)です。被害届や告訴をきっかけに捜査が始まると、後日逮捕される例もあります。会社の調査が始まった段階で弁護士に相談すれば、示談によって被害届や告訴を出されずに解決できる可能性があります(具体的な対応は後で説明します)。

逮捕されるケースと在宅事件で進むケース

2025年の検察統計では、背任罪の疑いで検察庁が処理した266人のうち、逮捕されたのは69人(約26%)です。逮捕された69人のうち68人は、そのまま勾留(逮捕に続く身柄の拘束)が認められています(出典:検察統計 2025年 表25-00-41|e-Stat)。

つまり、検察庁が処理した人のおよそ4人に3人は逮捕されずに捜査が進んでいますが、いったん逮捕されると、ほとんどの場合そのまま身柄拘束が続きます。

通常逮捕は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がある場合に、裁判官が出す逮捕状によって行われ、明らかに逮捕の必要がない場合は逮捕状が出されません(刑事訴訟法199条)。実務上、逮捕の必要があるかは、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかどうかで判断されます。背任事件では、次のような事情があると、逮捕の必要があると判断されやすくなります。

  • 帳簿やデータを書き換えたり、取引先や同僚と口裏を合わせたりするおそれがある
  • 疑いを否認している
  • 被害額が大きく、重い処分が見込まれる

反対に、住所や勤務先が定まっていて、会社の調査や警察からの呼び出しに応じ、損害の弁償や示談の話し合いが進んでいるような場合は、逮捕されずに在宅事件として捜査が進む可能性があります。その場合の捜査の期間や流れは「在宅事件の流れと期間|起訴率・不起訴率と身柄事件との違い」をご参照ください。

ただし、在宅事件でも捜査は続き、起訴されれば刑事裁判を受けることになります。有罪になれば前科がつく点は、逮捕された場合と変わりません。

逮捕から起訴・不起訴の判断までの最長23日間

背任罪で逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官に送致します(刑事訴訟法203条)。検察官は、身柄を受け取ってから24時間以内、かつ逮捕から72時間以内に、引き続き身柄を拘束する「勾留」を裁判官に請求するかを決めます(同法205条)。

勾留請求が認められると原則10日間勾留され、やむを得ない事由があればさらに最大10日間延長され(同法208条)、逮捕から起訴・不起訴の判断までに最長で23日間、身柄の拘束が続く場合があります。背任事件は、取引の記録や帳簿を一つひとつ確認して損害額を確定させる必要があるため、勾留の延長が認められる例もあります。また、弁護士以外の人との面会を禁じる「接見禁止」がつくと、家族とも会えなくなります。

逮捕されると勤務先や家族に知られるほか、事件の規模によっては報道されるケースもあります。

取調べでは、自分の意思に反して話す必要はありません(黙秘権)。話した内容は供述調書にまとめられますが、内容が事実と違うときは訂正を申し立てることができ、署名を断ることもできます(同法198条)。署名した調書は、後の裁判で証拠として使われることがあります。

同じ2025年の検察統計では、在宅事件も含めて背任罪で起訴か不起訴かが決まった262人のうち、起訴されたのは92人(約35%)、不起訴は170人でした。不起訴のうち98人は、犯罪を証明する証拠が足りない「嫌疑不十分」が理由です(出典:検察統計 2025年 表25-00-08|e-Stat)。

起訴された後の刑事裁判と判決

起訴されると刑事裁判が開かれます。罰金刑で終わる見込みの事件では、法廷を開かない略式の手続きがとられることもあります。逮捕・勾留されたまま起訴された場合は、保釈(保釈金を納めて釈放してもらう制度)を請求して身柄の拘束を解いてもらえる可能性があります。保釈金の相場は「保釈金とは?相場は150万〜300万円|返還条件や払えない場合も解説」にまとめています。

2025年(令和7年)の司法統計では、全国の地方裁判所で背任の罪により拘禁刑などの有罪判決を受けた26人のうち、18人(約7割)は刑の全部の執行が猶予され、8人が実刑でした(刑の種類は懲役・拘禁刑・禁錮の合計、出典:司法統計年報(刑事編)令和7年 第34表|裁判所)。背任罪で起訴されても執行猶予がつく可能性はあり、被害弁償や会社との示談ができているかどうかが、その判断に大きく影響します。

一方で、有罪になれば執行猶予がついても前科が残ります。逮捕や刑事処分とは別に、会社から懲戒解雇などの処分や損害賠償の請求を受けることもあり、示談で解決していなければ、刑事裁判が終わった後も賠償の問題は続きます。前科がつくと、経理や財務など、お金の管理を任される仕事への再就職も難しくなりがちです。公務員の場合は、拘禁刑以上の刑が確定すると、執行猶予がついても原則として失職します(国家公務員法76条・38条1号、地方公務員法28条4項・16条1号)。

逮捕や重い処分を避けるために早めにとるべき対応

背任罪の疑いをかけられたときは、逮捕の前でも後でも、早く動くほど選べる手段が多く残ります。ここでは、逮捕や処分に備えてとるべき4つの対応を説明します。

できるだけ早く弁護士に相談する

会社に背任罪の疑いを知られた直後は、弁護士が会社との窓口になって事実関係を整理し、弁償や示談の話し合いを進めます。

逮捕された後は、弁護士が面会して取調べへの対応を助言するとともに、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示す意見書を検察官や裁判官に出して、勾留しないよう求めます。勾留が続いている間も会社との示談交渉を進め、検察官に不起訴とするよう働きかけます。

起訴された後は、保釈を請求して早期の釈放をめざし、裁判では弁償や示談の状況、本人の反省や謝罪などの事情を示して、執行猶予つきの判決を求めます。

本人が逮捕されている場合は、家族が弁護士に依頼することもできます。ご家族が依頼するときの具体的な手順は「逮捕後すぐ弁護士を呼ぶには?呼び方・費用・連絡方法を解説」で説明しています。

会社と示談し、損害を弁償する

背任罪は会社の財産に損害を与える罪のため、損害を弁償し、会社と示談できているかどうかが、処分を決めるうえで重視されます。

会社に生じた損害を弁償して示談が成立すれば、会社が被害届や告訴を見送り、逮捕に至らずに解決することがあります。すでに被害届や告訴が出された後でも、起訴される前に示談が成立すれば不起訴処分となる可能性が高まり、起訴された後であれば量刑を決める事情として考慮されます。

示談では、被害者である会社が加害者を許すという意思表示(宥恕)や、被害届・告訴を取り下げる旨を示談書に盛り込めるよう、弁護士が交渉します。損害額をすぐに全額払えない場合でも、分割払いを提案して合意する方法もあります。会社が求める金額が実際の損害より大きいこともあるため、取引の記録などをもとに金額を確かめてから交渉に入るのが望ましいです。示談の進め方や示談金の考え方は「刑事事件で示談するメリットは?示談金相場と流れを徹底解説」をご覧ください。

捜査機関に知られる前なら自首を検討する

自首とは、自分から捜査機関に犯罪の事実を申告し、その処分を委ねることです。罪を犯した人が、捜査機関に発覚する前に自首したときは、刑を軽くすることができると定められています(刑法42条1項)。

背任罪では、会社に知られていても、捜査機関に発覚する前であれば自首が成立します。ここでいう「発覚」とは、捜査機関が犯罪の事実と犯人の両方をつかんでいる状態をいうため、会社がすでに被害届を出し、警察があなたを特定して捜査している場合は、自首にあたりません。

刑を軽くするかどうかは裁判所の判断に委ねられるため、自首するかは、逮捕される可能性や会社との示談の見込みとあわせて判断する必要があります。弁護士に同行を依頼すると何が変わるか、費用はどの程度かは「自首に弁護士が同行するメリットと費用|弁護士なしでも大丈夫?」で解説しています。

背任にあたらないと考えるなら早めに争う方針を立てる

経営上の判断として行った、または上司の指示に従っただけだとして、背任罪にあたらないと考える場合は、安易に疑いを認める供述をしないよう注意が必要です。

背任罪で有罪とするには、任務に背いたこと、自分や第三者の利益を図る目的または会社に損害を与える目的(図利加害目的)があったこと、会社に損害が生じたことなどを、検察官が証拠によって証明しなければなりません。結果として会社に損失が出ても、合理的な経営判断の範囲内の行為であれば任務違背にあたらない場合があります。ただし、上司の指示や社内の決裁を経ていても、それだけで任務違背が否定されるとは限りません。実際の裁判で背任罪の成立が争われた事件のうち、否定された例と認められた例は「背任罪の判例を弁護士が解説」で紹介しています。

疑いを否認していると逮捕の必要があると判断されやすくなるため、争う場合は、決裁の文書や指示を受けたメール、取引の記録など、自分に有利な証拠を早めに確保し、弁護士と供述の方針を決めてから、逮捕前後の取調べに臨むことが大切です。

背任罪で逮捕されそうな方・逮捕された方は早急にご相談ください

背任罪で逮捕されたのは、検察庁が処理した被疑者の約26%ですが、逮捕されるとほとんどの場合そのまま勾留されます。拘禁刑などの有罪判決を受けた人の約7割には執行猶予がついていますが、執行猶予がついても前科は残ります。逮捕を避けられるか、処分をどこまで軽くできるかは、会社との示談や損害の弁償をどれだけ早く進められるかに大きく左右されます。

弁護士に依頼すれば、会社との話し合いの窓口を任せられるほか、逮捕された後も、勾留を防ぐための働きかけや取調べへの助言、不起訴や執行猶予に向けた弁護活動を、段階に応じて進めることができます。ご本人だけで会社と向き合うと、求められた金額をそのまま受け入れてしまったり、話し合いがこじれて告訴に進まれたりするおそれもあります。

会社から突然事情を聴かれ、この先どうなるのかと眠れない日を過ごしている方もいるでしょう。会社から「告訴する」と告げられている方、警察から事情聴取の連絡を受けた方、ご家族が逮捕された方は、ためらわずご相談ください。

当事務所は、背任・横領をはじめとする刑事事件を多数取り扱ってきた実績があります。依頼者の不利益を最小限に抑えるため、弁護士が迅速に動き、全力を尽くしてあなたを守ります。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご連絡ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

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