
「横領の時効は何年で、いつから数えるのか」「このまま待てば逃げ切れるのか」。罪を犯してしまい、そうした不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
刑事の時効は、単純横領罪が5年、業務上横領罪が7年、占有離脱物横領罪(遺失物横領罪)が3年で、犯罪行為が終わった時から進行します。もっとも、この期間が過ぎても、被害者にお金を返す民事責任が残ることがあります。
この記事では、横領事件の解決実績が豊富な弁護士が、次の点について解説します。
- 刑事と民事の時効は何年か
- いつから進行し、どんなときに止まるのか
- 発覚する理由と時効を待つリスク
- 発覚の前でも後でも、今すべきこと
お読みいただくと、ご自身の場合にいつ完成するかの見通しと、今からできることが分かります。
なお、お困りの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。早期対応が結果を左右します。ご相談は地域を問わず承っています。
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横領の時効は何年?
刑事の時効(公訴時効)とは、犯罪が終わってから一定の期間が過ぎると、検察官が起訴(刑事裁判にかけること)できなくなる制度です。時効が完成すれば、その事件で刑罰を受けることはなくなります。
時効期間は法定刑(法律で定められた刑の重さ)によって決まっており(刑事訴訟法第250条)、横領にかかわる3つの罪では次のようになります。
| 罪名 | 法定刑 | 公訴時効 |
| 横領罪(単純横領罪) | 5年以下の拘禁刑 | 5年 |
| 業務上横領罪 | 10年以下の拘禁刑 | 7年 |
| 占有離脱物横領罪(遺失物横領罪) | 1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料(1,000円以上1万円未満の金銭罰) | 3年 |
※拘禁刑は、懲役と禁錮を一本化して2025年6月1日に導入された刑罰です。2025年5月31日以前の横領には改正前の懲役刑が適用されますが、刑の上限の年数と公訴時効の年数は変わりません。
ほかの罪名の場合の年数は「刑事事件の時効は何年?公訴時効を一覧表で犯罪別に解説」で確認できます。
横領罪(単純横領罪)は5年
友人から預かったお金を使い込む、借りている物を勝手に売るなど、預かっている他人の物を勝手に自分の物にすると、横領罪(刑法第252条第1項)が成立します。
法定刑は5年以下の拘禁刑で、「長期10年未満の拘禁刑に当たる罪」にあたるため、横領罪(単純横領罪)の公訴時効は5年と定められています(刑事訴訟法第250条第2項第5号)。
この罪が成立するための条件は「横領罪とは?3つの種類と構成要件・罰則を解説」で詳しく説明しています。
業務上横領罪の公訴時効は7年
会社の経理担当者が売上金を着服する、集金を任された人が集めたお金を生活費に回すなど、仕事として預かっている他人の物を横領すると、業務上横領罪(刑法第253条)に問われます。
法定刑は10年以下の拘禁刑で、「長期15年未満の拘禁刑に当たる罪」にあたるため、業務上横領罪の公訴時効は7年になります(刑事訴訟法第250条第2項第4号)。
ただし、会社のお金を管理する立場にない人が、管理する担当者と共謀して横領に加わった場合は、単純横領罪の刑が科されるため(刑法第65条第2項)、その人の公訴時効は5年になります(最高裁令和4年6月9日判決)。
業務上の立場にあたるかどうかなど、成立要件の詳細は「業務上横領罪とは?刑罰の重さと判例を解説」をご参照ください。
占有離脱物横領罪(遺失物横領罪)は3年
道に落ちていた財布など、持ち主の手を離れた落とし物(拾得物)を自分のものにすると、占有離脱物横領罪(遺失物等横領罪。刑法第254条)にあたります。道で拾ったお金を使ってしまった場合や、拾った物を売った場合も同じです。
法定刑は1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料で、「長期5年未満の拘禁刑又は罰金に当たる罪」にあたるため、占有離脱物横領罪の公訴時効は3年です(刑事訴訟法第250条第2項第6号)。
置き忘れてすぐの物を持ち去った場合などは、占有離脱物横領罪ではなく窃盗罪(公訴時効7年)にあたることがあります。どちらになるかの境目は「占有離脱物横領罪とは?遺失物横領・窃盗との違いを弁護士が解説」で整理しています。
横領の民事の時効は3年または20年
刑事責任の時効が過ぎても、民事の時効(消滅時効)は別に進むため、横領したお金を返す(損害を賠償する)よう求められる可能性は残ります。
民事の時効は、被害者が損害と加害者を知った時から3年、または横領をした時から20年で、どちらか一方が過ぎると損害賠償を請求する権利は時効によって消滅します(民法第724条)。被害者が横領と加害者に気付かないうちは3年の期間は始まりません。一方、20年の期間は、被害者が横領に気付いていなくても進みます。
被害者は、不当利得として返還を求めることや、業務上横領なら雇用契約に反する行為(債務不履行)として損害賠償を求めることもあります。これらの場合は、請求できると知った時から5年、請求できる時から10年で時効にかかります(民法第166条第1項)。なお、2020年3月31日以前の横領や雇用契約では、改正前の民法などが適用され、期間が異なることがあります(民法の一部を改正する法律附則第10条)。
いずれの期間も、返済を約束する書面に署名したり一部を返済したりすると、民事の時効はその時から数え直しになります(民法第152条第1項)。請求を受けてもすぐには払えない場合の進め方は、「横領で返済できないとどうなる?2つの対処法を弁護士が解説」にまとめています。
落とし物を自分のものにした場合も、持ち主から返還や賠償を求められる可能性があります。
横領罪の時効はいつから進行する?
公訴時効は、横領行為が終わった時から進行すると定められています(刑事訴訟法第253条第1項)。ここでは、時効を数え始める時点(起算点)と、時効の進行が止まる場合を説明します。
横領行為が終わった時点
横領罪には未遂を罰する規定がなく、他人の物を自分のものとして使う・売却する・隠すなど、持ち主でなければできない扱いをした時点で罪が成立します。横領はこの時点で行為が終わるため、その時点が、時効の起算点になり、その後に物を持ち続けても変わりません。後で売るなどすれば、別の横領として時効が進むことがあります。
例えば、次の時点が起算点です。
- 横領罪(単純横領罪):知人から預かったカメラを質に入れた時点
- 業務上横領罪:集金した売上金を会社に入れずに使った時点
- 占有離脱物横領罪(遺失物横領罪):拾った財布を自分のものにした時点
拾った財布を、初めは交番に届けるつもりで持ち帰った場合、その時点では罪は成立しません。その後、中のお金を使う、財布を売るなど、自分のものとして扱う行為をした時点が起算点になります。
公訴時効は、被害者が横領に気付いているかどうかに関係なく進みます。共犯者がいる場合は、最後の行為が終わった時から、全員の時効を数え始めます(刑事訴訟法第253条第2項)。
複数にわたる横領行為があった場合の起算点
会社のお金を何回かに分けて着服するなど、横領行為が複数にわたる場合は、原則として1回ごとに別の罪となり、時効の起算点もそれぞれの行為の時点になります。
例えば、2021年4月10日に着服した分は、業務上横領罪の時効7年により、2028年4月9日が終わった時点で時効が完成する計算です。刑事の時効では、着服した日を1日目として数えるためです(刑事訴訟法第55条第1項ただし書)。
ただし、同じ手口で間を置かずに繰り返したことなどから、全体が1つの罪(包括一罪)として扱われる場合には、最後の横領が終わった時から数えることになります。どちらにあたるかは、行為の間隔や手口などから事案ごとに判断されます。
時効の進行が止まる場合
次の期間は、横領の時効の進行が止まります(刑事訴訟法第255条第1項)。
- 犯人が国外にいる期間
- 起訴された後、犯人が逃げ隠れていたために、起訴状の写しを届けることなどができなかった期間
また、共犯者の1人が起訴されると、ほかの共犯者の時効も止まり、その裁判が確定した時から再び進みます(刑事訴訟法第254条第2項)。いずれの場合も、止まっていた期間の分だけ完成が先に延びるのであって、それまでに進んだ期間が消えるわけではありません。
横領はなぜ発覚する?
横領は、時効が完成する前に発覚することも少なくありません。罪の種類ごとの主なきっかけは、次のとおりです。
- 業務上横領:担当者の異動や退職に伴う引継ぎ、決算や監査での帳簿の確認、事情を知った同僚からの内部通報など
- 単純横領:持ち主から「返してほしい」と言われて返せない、売った物が持ち主や知人の目にとまるなど
- 占有離脱物横領(遺失物横領):防犯カメラの映像、落とし物の届出との照合、拾った物の売却やカードの利用など
業務上横領では、お金の動きが帳簿や口座の記録に残ります。不足が見つからないよう別のお金で穴埋めを繰り返すと、つじつまを合わせる金額がふくらみ、かえって横領が見つかるきっかけにもなります。何年もたってから、記録の見直しで発覚することもあります。
会社が横領に気付くと、社内での聞き取りや証拠の確保を進めたうえで、警察への被害届(被害を申告する書類)や告訴状(処罰を求める書類)の提出を検討します。
落とし物の場合は、持ち主が警察に遺失届(落とし物の届出)を出していると、拾った物を売ったり使ったりしたことをきっかけに届出と照らし合わされ、拾った人が特定されるおそれがあります。
落とし物を売った場合に発覚するかどうかは「遺失物横領はバレない?バレる前にすべきことを解説」で詳しく取り上げています。
横領罪の時効完成を待つリスク
時効の完成を待つ間は、いつ発覚するか分からない不安を抱えたまま、何年も過ごすことになります。発覚すれば、次のような事態になりかねません。
発覚すれば逮捕・勾留されるおそれがある
時効の完成前に横領が発覚して逮捕されると、警察は48時間以内に事件を検察官へ送り(送検)、検察官は24時間以内に、勾留(引き続き身柄を拘束すること)を裁判官に請求するかを決めます。勾留は原則10日間で、延長されるとさらに最大10日間続くため、逮捕から最長23日間、身柄を拘束されることがあります。
その間は警察署の留置施設などで過ごすことになり、仕事に行けないため、勤務先に事件を知られるきっかけにもなります。起訴された後も、保釈(保証金を納めて身柄の拘束を解かれること)が認められなければ身柄拘束が続き、裁判が終わるまで数か月に及ぶこともあります。なお、逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断されれば、逮捕されずに捜査が進む(在宅事件)場合もあります。
有罪になれば前科がつき、職も失いかねない
横領は、何円以上なら逮捕・起訴されるという決まりはありませんが、被害額が高額で、弁償もできていない場合は、起訴されて執行猶予(一定期間、刑の執行を見送ること)がつかずに実刑判決となり刑務所に入る可能性が高まります。単純横領罪と業務上横領罪の法定刑には罰金がないため、起訴されれば正式な裁判になります。
起訴されると、ほとんどの場合は有罪となり前科がつきます。令和6年に全罪名で裁判が確定した20万3,801人のうち、無罪は96人(0.05%)でした(令和7年版犯罪白書)。
仕事への影響も大きく、業務上横領が勤務先に発覚した場合は、懲戒解雇となる可能性が高いでしょう。
横領をしてしまったときにすべきこと
横領が発覚する前でも、発覚した後でも、時効の完成を待たずに早く動くほど、選べる手立ては多くなります。中心になるのは、被害の弁償と弁護士への相談です。
被害を弁償して示談を目指す
まず考えたいのは、横領したお金や物を返し(被害弁償)、謝罪したうえで、被害者と示談(話し合いで解決し、合意した内容を書面にすること)をすることです。
捜査機関に知られる前に示談が成立すれば、被害者が被害届や告訴を出さずに済ませる可能性が高まり、事件にならずに終わることもあります。すでに捜査が始まっていても、示談の成立は、不起訴(裁判にかけられずに終わること)や執行猶予の判断で有利な事情として考慮されることが期待できます。
横領した金額は、被害者と本人の認識が食い違うこともあるため、記録をもとに確かめます。そのうえで返済の方法を話し合い、示談書には、被害届や告訴を出さない・取り下げる条件と、合意した額のほかは互いに請求しないという条項(清算条項)を入れておくことが大切です。
実際にいくらで示談がまとまっているのかは「業務上横領の示談金相場は?示談を成功させる5つのポイント」をご確認ください。
弁護士に相談する
横領された会社や持ち主は、加害者本人に強い不信感を持っていることもあり、本人どうしの話し合いは感情的になりがちです。弁護士が代理人として間に入ることで、返済の方法や金額を落ち着いて話し合いやすくなります。
捜査機関に犯人が自分だと知られていない段階なら、自首(自ら捜査機関に罪を申し出ること)も選択肢になります。この段階で自首すれば、刑が軽くなる(減軽される)ことがあります(刑法第42条第1項)。自首する際には、弁護士が同行することもできます。
すでに発覚している場合や逮捕された後でも、弁護士は早期の釈放や不起訴に向けた弁護活動を行います。できるだけ早く弁護士に相談してください。相談や依頼にかかる費用の目安は「横領事件に強い弁護士とは?依頼するメリットと費用を解説」で紹介しています。
横領の時効が気になる方は弁護士にご相談ください
横領の公訴時効は罪の種類によって3年から7年ですが、民事責任はそれより長く残ることがあり、時効が過ぎるのを待つだけでは問題は解決しません。
当事務所は、横領事件の示談交渉や不起訴処分の獲得に多数の実績があります。依頼者の不利益を最小限に抑えるため弁護士が迅速に動き、全力を尽くして守ります。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

