盗品等無償譲受罪の判例を弁護士が解説

①常習的なスリと盗品等無償譲受罪が問われた判例

事案の概要

本件は、大学の友人同士である被告人両名が、混雑したダンスクラブ内でのスリ(窃盗)と、その盗品を譲り受けた「盗品等無償譲受罪」に問われた事案です。

被告人Aは、神戸市内のダンスクラブにおいて、混雑に乗じて客のズボンのポケットやバッグから財布2個を相次いで抜き取り、窃取しました。その後、被告人Bは路上において、被告人Aが盗んできたものであると知りながら、電子マネーカードや財布を無償で譲り受けました。

捜査の結果、被告人らは本件以前から遊興費を稼ぐ目的で、飲食店などでのスリを繰り返していたことが判明しました。SNS(LINE)を通じて犯行の成果を自慢し合ったり、互いに犯行を煽ったりするなど、組織的かつ常習的な側面が強い犯行として、その刑事責任が厳しく追及されることとなりました。

判決文の抜粋

「混雑したダンスクラブの店内で被告人Aが2件のスリに及び,被告人Bが事情を知りながら,各スリに係る盗品の一部を被告人Aから無償で譲り受けた・・・被告人らは,遅くとも平成25年秋ころから遊興費欲しさに飲食店にいる客から財布を抜き取るスリを繰り返しており,本件犯行もその一環としてなされたもので,この種犯行に対する常習性の強さを指摘することができる。同じ大学に通う仲間との間でラインに犯行の成果を書き込んで自慢し合ったり,互いに犯行をあおるなどしており,盗犯に対する規範意識が乏しいといわざるを得ない。経済的な被害も軽視できず,被告人らの刑事責任を軽く考えることはできない。」(神戸地方裁判所平成27年3月16日判決)

弁護士の解説

本件の特徴は、単発の犯行ではなく、SNS等で情報共有を行いながらスリを繰り返していたという「常習性」と「規範意識の欠如」にあります。

盗品等無償譲受罪(刑法256条1項)は、盗品を無償で譲り受けることで成立しますが、本件のように窃盗犯(A)と密接に連携し、盗品を事後的に処理・共有する行為は、窃盗犯の犯行を助長させるものとして、裁判所から厳しく評価される傾向があります。

結果的に、被告人Aには懲役2年6月、被告人Bには懲役1年6月が言い渡されましたが、示談の成立や反省の態度が考慮され、いずれも3年間の執行猶予が付されています。

なお、本件のようにスリ(窃盗)の常習性が問題となった事件を含め、窃盗罪全般の量刑傾向や類似事例については「窃盗罪の有名判例を弁護士が解説」もあわせてご確認ください。

②自分の犯罪を隠すための証拠隠滅と盗品等無償譲受罪が問われた判例

事案の概要

本件は、被告人が知人Aによる金庫盗難(窃盗)を手助けし、その過程で発生した「盗品等運搬罪」、「盗品等無償譲受罪」および「証拠隠滅罪」の成否が争われた事案です。

被告人は、Aから「金庫をパクった」と打ち明けられた上で、金庫を車で運び(盗品等運搬罪)、Aが金庫をこじ開ける際に見張りを行いました。その後、中身の記念硬貨などを換金して報酬を得たほか、別の機会にはAが盗んだ財布3点を無償で譲り受けました(盗品等無償譲受罪)。さらに被告人は、犯行の発覚を恐れ、Aと共謀して空になった金庫を海に投棄しました。

判決文の抜粋

「本件は,被告人が,・・・Aが窃取した金庫をその情を知りながら車で運搬し・・・Aから,同人が窃取した時価合計9万1600円相当の財布3点を無償で譲り受けた・・・という事犯である。

被告人は,盗犯者であるAの依頼に応じて盗品の運搬に関わり,さらに,同人から盗品と知りつつそれを譲り受けたもので,安易で利欲的な動機に酌むべき点はない。盗品を運搬してその一部を換金して5万9000円を入手したうち,報酬として3万円を受領しているし,譲り受けた盗品の時価合計は上記のとおりであって,利得は少額ではない。

そうすると,被告人の罪責は軽くないのであって,犯行を認めて反省していること,本犯者に自首を勧めていること,若年で前科のないことなど,原判決が指摘する事情を考慮しても,刑の執行を猶予するのが相当とはいえ,その期間を1年とするのは,上記本件の情状に照らすと,著しく短いといわざるをえ(ない)」(福岡高等裁判所宮崎支部平成17年3月24日判決)

弁護士の解説

盗品等無償譲受罪(刑法256条1項)等の盗品関与罪について、裁判所は「安易で利欲的な動機」と厳しく指摘しました。被告人は単に盗品を受け取っただけでなく、運搬や換金にも関与して報酬を得ており、盗難被害の回復を困難にする悪質な行為であると評価されています。

また、証拠隠滅罪は「他人の刑事事件に関する証拠」を隠滅した場合に成立します。本件の金庫は「他人(A)の窃盗」の証拠であると同時に「自分(被告人)の盗品等運搬」の証拠でもありました。裁判所は、たとえ他人の証拠としての側面があっても、自分の罪を隠す目的で行われたのであれば、防御権の観点から不可罰(罪にならない)とする立場を維持しました。

③窃盗教唆と盗品等無償譲受罪が問われた判例

事案の概要

本件は、強盗致傷や傷害致死といった極めて重大な凶悪犯罪に加え、覚せい剤の使用や窃盗など、多種多様な罪に問われた被告人に対する判決です。

盗品等無償譲受罪に関しては、被告人が共犯者と共謀し、知人に対して自動車の窃盗を「教唆(そそのかすこと)」した際の一連の行為が問題となりました。被告人らは知人に対し、「車が要るから1台用意してくれ」などと依頼して窃盗を決意させ、実際に盗ませた普通乗用自動車1台(時価約280万円相当)を、盗品であることを知りながら無償で譲り受けました。

判決文の抜粋

「被告人は,共犯者と共に知人に対して自動車の窃盗を教唆し・・・,これにより窃取された自動車を無償で譲り受けた上で・・・,この自動車を使用して窃盗行為に及び・・・,また,単独でも窃盗を犯す・・・などしており,特に,ひったくりの事犯・・・については,被告人がBと共に,多数回の同種行為を繰り返す中で犯行に及んだことを考えると,この種事案の常習性も認められ,その利欲的動機に酌量の余地はない。加えて被告人は,・・・刑の執行を終了し,更生に向けて努力すべき立場にいたのに,その1か月余の後には・・・各犯行を敢行し,その後も次々と各犯行に及んでいること,窃盗前科や粗暴犯前科も多数あり十分に更生の機会を与えられているにもかかわらず,さらに今回窃盗等の犯行に及んでいることに鑑みれば,被告人の規範意識の欠如には顕著なものがあり,再犯の可能性も認められる。」(福岡地方裁判所平成14年9月11日判決)

弁護士の解説

本件の判示事項は多岐にわたりますが、盗品等無償譲受罪(刑法256条1項)については、非常に悪質な犯行であると考えられます。

通常、盗品等無償譲受罪は、他人が盗んだものを後から「もらう」ことで成立します。しかし本件では、被告人自身が「盗んでこい」と唆(そそのか)して盗ませた車両を、そのまま無償で譲り受けています。

このように、他人の犯罪を誘発し、その成果物(盗品)を収受する行為は、単に盗品を譲り受けるだけのケースよりも刑事責任が重く評価される傾向にあります。被告人には、強盗致傷や傷害致死といった重大な結果についても併せて責任が問われ、最終的に懲役12年という重い実刑判決が下されています。

本件で焦点となった教唆犯の成立要件や量刑上の扱いについて詳しくは「教唆とは?犯罪の教唆犯の成立要件や学説や論点を交えて解説」で解説しています。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

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刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

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