不同意わいせつの3つの判例を弁護士が解説

2023年7月の刑法改正により、「強制わいせつ罪」と「準強制わいせつ罪」が統合され、新たに「不同意わいせつ罪」が誕生しました。改正から間もないため、どのような行為が有罪となり、どのような事情が量刑に影響するのか、実際の裁判例を通じて理解したいとお考えの方も多いのではないでしょうか。

  • 13歳未満へのわいせつ行為と被害者供述の信用性が争点となった判例
  • 薬物を用いた計画的な性暴力で拘禁刑6年が言い渡された判例
  • 写真面割りの信用性が争点となり無罪が言い渡された痴漢の判例

本記事では、弁護士が上記3つの裁判例を詳しく解説します。なお、不同意わいせつ事件について早急に対応したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をご利用ください。

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13歳未満の児童に対する不同意わいせつ事件の判例

事案の概要

本件では、被告人が集合住宅(団地)の階段において、当時6歳の女児(Aさん)に対し、衣類の上から左胸を手のひらで触るわいせつな行為をしたとして、不同意わいせつ罪で起訴されました。

被告人は公判において、「無断侵入を怪しまれないよう声をかけ、ついてこないように肩を軽く押さえただけである」、「胸は触っていない」と反論し、無罪を主張していました。

一方で、被害者であるAさんは、事件直後に父親へ被害を訴え、その後の専門的な聴取(代表者聴取)においても、胸を掴まれた状況や「内緒ね」と言われた状況を具体的に証言していました。

判例文抜粋

裁判所は、被告人の弁解を退け、被害女児の証言の信用性を高く評価して以下のように判示しました。

「代表者聴取におけるAの供述内容は、Aが本件被害を受けた直後に父親に対して申告した被害内容と整合している。当時小学1年生であったAが、年齢相応の素直な表現を用いて供述していることに照らしても、Aの供述が実体験に基づかないものであるとは考え難く、Aの供述には信用性が認められる」。

一方、「被告人の供述は、胸を触られた旨のAの供述とは異なっている上、屋上でコーヒーを飲むために判示団地に立ち入ったとか、無断侵入の発覚を恐れて幼少のAに話しかけたなどという供述内容自体が不自然、不合理である。また、被告人は捜査段階において、AのTシャツの柄を見たくてAの左胸付近をつかんだ旨供述していたのに対し、公判廷においては上記のとおり供述を変遷させたと認められるところ、変遷の理由を合理的に説明していない。被告人の供述は信用できない」(東京地方裁判所令和7年6月25日判決)。

弁護士の解説

改正後の刑法では、16歳未満の者に対してわいせつな行為をした場合、暴行や脅迫の有無にかかわらず「不同意わいせつ罪」が成立します(176条3項)。

これは、年少者には性的な行為について有効に同意する判断能力が備わっていないと法律上みなされるためです。なお、被害者が13歳以上16歳未満の場合は、行為者が5歳以上年長であることが要件となりますが、本件の被害者は6歳であるため、この要件は問題となりません。本件でも、胸を触ったという事実が認定された時点で、同意の有無を議論するまでもなく犯罪が成立しています。

被告人には過去にも児童に対する強制わいせつ罪での実刑判決があり、裁判所は同様の犯行を繰り返している点や不合理な弁解を続けて反省が見られない点を厳しく評価しました。その結果、拘禁刑1年6月の実刑という判断が下されています。

薬物混入により意識を失わせた不同意わいせつ罪の判例

事案の概要

本件は、刑法改正(不同意わいせつ罪・不同意性交等罪の新設)をまたぎ、長年にわたり知人らへ性暴力を繰り返した事例です。被告人は約7年間にわたり、大学の後輩や知人ら計6名の男性に対し、自宅等でわいせつな行為を繰り返していました。

多くの被害者は飲酒による酩酊や睡眠中で抵抗できない状態(旧法上の「抗拒不能」)にありましたが、最後に被害に遭ったAさんに対しては、被告人が飲料に睡眠改善薬をひそかに混入させ、意識を失わせるという極めて計画的で卑劣な手法が用いられました。

被告人はこれらの一連の性的行為をスマートフォンで動画撮影し、記録を保持し続けていました。

判例文抜粋

裁判所は、被告人の「悪ノリだった」という弁解を退け、犯行の常習性と悪質性を厳しく指摘しました。

「Aに対しては、睡眠改善薬を併用するなど、手口としては、一層卑劣である。本件犯行は、被害者らが、いずれも意識を失っていて、性的行為に関する判断が出来ない状況下で行ったものであるから、被害者らの性的自由に対する侵害は大きく、その尊厳を無視したものであって、悪質性も高い。そして、被害者らは、当初は性被害に遭ったことすら気付かず、捜査進捗によって事後的に知らされたという経緯からすれば、嫌悪感を抱くのは当然であり、その精神的被害も大きい。加えて、被告人は、約7年間にわたって、複数の被害者に対し繰り返し犯行を重ねていることからすれば、常習性も認められる。」(東京地方裁判所立川支部令和7年6月18日判決)

弁護士の解説

改正後の不同意わいせつ罪・不同意性交等罪では、アルコールや薬物を用いて「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」にさせた場合に犯罪が成立します。本件は改正をまたぐ事案であるため、行為の時期によって適用法も異なり、改正前(2023年7月12日以前)の行為については、被害者が「抗拒不能」の状態にあったことを要件とする旧法(準強制わいせつ罪・準強制性交等罪)が適用されます。

本件では薬物混入という手段が被害者の意思を完全に封じる悪質な形態と判断され、裁判所はその点を特に重く見ています。

なお、本件ではわいせつ行為にとどまらず、より重大な「不同意性交等罪」(改正前の行為については「準強制性交等罪」)や、同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にさせて性的な姿態を撮影する行為を処罰する「性的姿態等撮影罪」も成立しています。

結果的に、被告人には拘禁刑6年の実刑判決が言い渡されています。

不同意わいせつ罪で起訴されたが無罪が言い渡された事例(電車内痴漢)

事案の概要

この事例は、混雑した電車内で15歳の女子児童(Aさん)が、目の前に立っていた人物からスカート内に手を入れられるといったわいせつな行為を受けた事件です。

行為者は現行犯逮捕されませんでしたが、捜査機関は防犯カメラ映像から「オレンジ色のジャンパー」、「黒いバッグ」などの特徴に合致する人物として被告人を特定しました。

事件から約3週間後、Aさんは20枚の写真の中から被告人の写真を「犯人である」と指し示しましたが、被告人は一貫して否認を続け、裁判では「被告人が本当に犯人なのか」という犯人識別供述の信用性が最大の争点となりました。

判例文抜粋

裁判所は、捜査機関と被害者の双方が「似ている別の人」を誤って犯人と断定した可能性を指摘し、以下のように判示しました。

「被告人が犯人ではなかったとしても、捜査機関により犯人と特定され被害児童も被告人の顔写真を犯人のものと間違えた合理的な疑いが残るということであり、当裁判所としてはこの可能性を無視できないと判断した」。

「被害児童が記憶していた犯人の特徴はそれなりにありふれたもので、・・・被害児童は、その後の写真面割りの手続の中で、被告人の写真を犯人のものと特定したものの、被害児童が指摘する犯人の特徴を持つ写真が限られていたなどの理由から、被害児童が見たのが被告人の顔でなかったとしても、犯人と似た特徴を持つ被告人の写真を選ぶことはあり得た。そうすると、一連の経過の中で、被告人が犯人と似ていたために犯人と間違えられた合理的な疑いが残る」(青森地方裁判所八戸支部令和6年12月6日判決)。

弁護士の解説

この判決は、痴漢事件などの密室・混雑下での犯人特定において、慎重な検討が必要であることを示した裁判例です。

写真面割り(写真選び)において、提示された20枚の写真のうち、Aさんが挙げた「眼鏡」、「小太り」、「白髪混じり」といった特徴を全て満たす写真は被告人を含め2枚しかありませんでした。

つまり、「犯人の顔を正確に覚えていたから」ではなく「消去法で一番似ている人を選んだ」という疑いが残る事案だったのです。被害者の供述や証言が有罪認定にどこまで影響するかについては、被害者の証言だけで有罪になることはある?痴漢事件を例に解説で詳しく紹介しています。

そして、捜査機関は防犯カメラから被告人を浮上させたものの、その服装(オレンジ色のジャンパー等)は特異なものとまでは言えず、200名近い乗客の中に似た人物が他にもいた可能性が残りました。

刑事裁判では「合理的な疑いを超える証明」がなければ有罪にはできません。本件は、客観的証拠の不足と記憶の不確かさを理由に、無罪という結論に至りました。

関連記事:痴漢冤罪の4つの対処法と5つのNG行動|逃げるのが厳禁な理由

不同意わいせつ事件でお困りの方は弁護士にご相談ください

今回ご紹介した3つの裁判例が示すように、不同意わいせつ罪の結論は、被害者の年齢や行為の悪質性、証拠の信頼性など、事案の具体的な事情によって大きく異なります。

不同意わいせつ事件において弁護士が果たす役割は、捜査の初期段階から始まります。被害者との示談交渉は逮捕直後から動き出すことで成否が変わりますし、否認事件では証拠の精査や供述の組み立てを早期に行うことが重要です。初動が遅れるほど、選択肢は狭まっていきます。

ご自身や家族が逮捕・勾留されている場合、あるいは警察から任意同行を求められている場合など、状況がどの段階であっても、一人で抱え込まずにご相談ください。精神的な負担も大きいなかで判断を迫られることへの不安は、よく理解できます。

当事務所は性犯罪事件を含む刑事事件を多数取り扱っており、全国どこからでも無料相談をご利用いただけます。まずはお気軽にお電話またはメールでご連絡ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

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