
①ブックメーカー利用で常習賭博罪の故意を認めた判例
事案の概要
本件は、被告人が約8ヶ月間のうちに合計23日間にわたり、日本国内(福岡県内等)からプロサッカーリーグの試合結果を対象とした賭博を行ったとして、常習賭博罪に問われた事案です。
被告人は、福岡県内にいた共犯者(甲ら)に対して合計227万円にのぼる賭金の申し込みを行い、的中した場合にはハンディキャップに応じた配当金を受け取り、不的中時には賭金を没収されるという約定で賭博を繰り返していました。
被告人は一貫して、「自分は海外のブックメーカーに賭けていると認識しており、甲らはその仲介役に過ぎないと考えていた。海外ブックメーカーへの賭けは適法だと思っていたため、日本国内の業者を相手とする常習賭博罪の故意はなかった」と主張しました。
判決文の抜粋
相手方の存在及びその認識は賭博罪の故意の要素であるが、相手方が誰であるかの認識は故意の要素とはいえないから、被告人には主位的訴因の故意が認められる・・・被告人の認識を前提としても、本件賭博の申込みという実行行為の少なくとも主要な部分が日本国内で行われることの認識に欠けることはなく、かつ、それが国民一般の健全な経済観念、勤労観念に反して射幸心をあおるもので、公正な社会秩序を乱し、我が国の法益を侵害するものである以上、所論指摘の事情は被告人の故意を否定するものではない。(福岡高等裁判所令和5年7月4日判決)
弁護士の解説
本判例は、海外ブックメーカーやオンラインカジノを「日本国内から」利用する行為に対し、非常に厳しい法的判断を下したものです。
被告人は「相手は海外業者だと思っていた」と主張しましたが、裁判所は「賭博の相手方が存在する」という認識さえあれば足り、その相手が「具体的に誰であるか(海外か国内か)」という点までの認識は不要であると判示しました。つまり、国内の違法業者が運営に関与している場合、利用者が「海外サイトだから大丈夫だ」と思い込んでいても、実態が国内での賭博であれば、国内業者を相手方とする賭博罪の故意が認められるということです。
このように海外を装ったオンラインカジノやブックメーカー利用のリスクや、利用が発覚した場合の対処法については「オンラインカジノは違法!罰則と逮捕リスク・利用した場合の対処法」で詳しく解説しています。
②ネットカジノ店長による常習賭博罪の共同正犯が認められた判例
事案の概要
本件は、インターネットカジノ店において、パソコン11台を設置し、客に対して「ブラックジャック」等のギャンブルを行わせていた店長の被告人が、常習賭博罪に問われた事案です。
捜査により、被告人は不特定多数の客を相手に換金可能なポイントを販売し、賭博を繰り返していた事実が発覚しましたが、店の収益のほとんどが県外の第三者に送金されていました。
公判における争点は、組織的犯行として被告人に共犯の責任を問えるかという点でした。
被告人は、「自分は店長ではなく、店を一人で切り盛りしていた経営者である。したがって、誰とも共謀などしていない」と主張し、背後に存在する真の経営者の存在を隠匿しようとしました。
判決文の抜粋
本件カジノ店の収益はほぼ第三者に渡っていること,被告人が報酬で雇われている立場にあることに照らせば,本件カジノ店には被告人以外の経営者が存在することが認められ,判示の期間,店内業務を一人で担っていた被告人は,その氏名不詳者の経営者と共謀をし,店長の立場で判示の常習賭博をしたものと認めることができる。・・・被告人は,判示の期間,営業時間である午後8時から翌日の午前8時まで,定休日である月曜日以外は,本件カジノ店を営業し賭博をしていたのであり,高い常習性が認められる職業的な犯行である。判示の期間における客の賭け金は合計1324万円余り,収益は480万円余りに上っており,賭博の規模としては相応に大きい上,被告人は,店長として店の業務全般を一人で担うなど本件犯行において中心的かつ重要な役割を果たしたものである。(富山地方裁判所令和2年6月16日判決)
弁護士の解説
本判例は、インターネットカジノ店舗における運営実態について判断された事案です。実際の銀行口座への送金記録や、被告人の手元に収益が残っていない不自然さから被告人が「雇われの身」であり、組織的な犯行であることが認定された点は非常に重要です。
また、量刑の面では、懲役1年6月(執行猶予3年)という判決が下されました。
初犯で反省の情を示していたため実刑は免れましたが、裁判所は「高い常習性」と「職業的犯行」であることを強調しています。デジタルフォレンジックや金融機関の記録といった客観証拠によって、行為者の役割が厳格に評価されるため、不自然な弁解は通用しません。
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③野球賭博において実刑判断が示された常習賭博罪の判例
事案の概要
本件は、被告人が徳島県内において、携帯電話のアプリを使用し、プロ野球の公式戦および全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)を対象とした「野球賭博」を繰り返したとして、常習賭博罪に問われた事案です。
被告人は、胴元が開張した賭博場において、1口1万円の賭金を申し込み、特定の試合にハンディキャップを付した勝敗予想を行っていました。約1か月間という短期間のうちに、プロ野球で35日間、高校野球で10日間にわたり、合計2,867口(総額2,867万円)もの極めて高額な賭博に及んでいました。
判決文の抜粋
被告人は,Aとの間で,暗号を使ってインターネットアプリ上でやり取りを行うなど,賭博が容易には発覚しにくい態様で本件に及んだ上,合計2800万円を超える高額な金銭を賭けたことにより,本件に関するAの賭博開張図利行為を助長したと認められる。また,約1か月間で,2800口以上もの賭博行為を繰り返した上,1つの対象試合につき,1口1万円・・・もの高額な金銭を賭け続けたと認められる。これらの態様は本件に関する被告人の積極性を裏付けるだけでなく,上記の前科や本件賭博の内容とも併せ考えると,賭博を繰り返す被告人の習癖が,上記前科の当時から引き続く根深いものであることも表しているというべきである。被告人は,仲の良かったAが野球賭博の話をしていたことから本件に至った旨を述べるが,Aからの誘いがあったとしてもそれを断れなかった事情は特に見当たらず,結局,被告人は上記の根深い習癖に基づき,賭博行為を再開し,利欲的な動機の下で本件に及んだと認められるから,その意思決定は厳しい非難を免れない(徳島地方裁判所令和2年2月7日判決)
弁護士の解説
本判例は、賭博罪の中でも「常習性」が認められるケースにおいて、たとえ本人が「賭ける側(賭客)」であったとしても、その規模や過去の経歴次第では実刑判決(刑務所への収監)が下されることを示す重要な事例です。裁判所が実刑を選択した主要な理由は、被告人の「賭博癖」が矯正されていないと判断されたためです。本件では、1ヶ月で2,800万円以上という高額な賭金額や、暗号を用いた隠語によるやり取りなど、犯行の習熟度と積極性が肯定されています。
野球賭博は、単なる遊びの範疇を超え、反社会的勢力の資金源となるリスクも孕んでいます。本判例のように、スマートフォンのアプリ等を利用して容易に賭けが行える現代において、一度染み付いた「賭博の習癖」がいかに法的に厳しく評価されるかを知っておく必要があります。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

