
「詐欺罪の懲役は何年になるのか」「初犯なら執行猶予がつくのか」。ご本人やご家族がまず知りたいのは、この見通しではないでしょうか。
司法統計(令和7年)で詐欺の第一審判決を見ると、実刑は43.7%、執行猶予は56.3%でした。懲役の長さは1年以上3年以下に81.9%が集中しています。
つまり詐欺罪で問われるのは、条文の上限である10年ではなく、多くの場合は1年から3年のどこに収まるか、執行猶予がつくかどうかです。
なお2025年6月1日から懲役・禁錮は拘禁刑に一本化されました。本記事では条文の引用を拘禁刑とし、統計や判決、読者になじみのある表現には「懲役」を使います。
この記事では、詐欺事件の刑事弁護に強い弁護士が、以下の内容を解説します。
- 詐欺の懲役は平均何年になるのか
- 実刑と執行猶予の割合、初犯の扱い
- いくらから実刑になるのか、量刑を分ける事情
- 実刑を避けるために今できること
お読みいただくことで、ご自身の事案が実刑と執行猶予のどちらに近いのか、判決までに何をすれば結果が変わるのかを整理できます。
なお、詐欺事件でお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。地域を問わずご相談を承っており、早期対応が結果を左右します。
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詐欺罪の刑罰は10年以下の懲役で、罰金刑はない
量刑の見通しの前に、法律が定める刑の枠を確認します。罰条は刑法246条です。
第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
出典:e-Gov法令検索
1項は財物をだまし取った場合、2項は飲食代の支払いを免れるなど財産上の利益を得た場合です。注目すべきは、罰金刑が定められていない点です。窃盗罪は「10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」(刑法235条)で罰金を選べますが、詐欺罪にその選択肢はありません。
有期の拘禁刑は1か月以上20年以下(刑法12条1項)で、詐欺罪はこのうち10年までが上限です。詐欺と別の罪を含め、2件以上の罪が併合罪(まとめて裁かれる複数の罪)となる場合は、上限が15年に引き上げられます(刑法47条本文)。
2025年6月から懲役・禁錮は拘禁刑に一本化された
刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)により、2025年6月1日から懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました。
注意が必要なのは、適用される刑が行為の時点で決まることです。令和7年版犯罪白書は「同法の施行日である令和7年6月1日より前に行った行為については同法施行前の刑が適用される」としています(出典:令和7年版犯罪白書 第2編第3章第1節)。
そのため、2025年5月までの行為について今後出る判決では、言い渡される刑は懲役です。
罰金刑がないため略式手続では終わらない
罰金を払って早く終わらせたい、と考える方は少なくありませんが、詐欺罪にその道はありません。略式手続は、簡易裁判所が公判を開かずに書面だけで刑を決める手続きですが、刑事訴訟法461条は「公判前、略式命令で、百万円以下の罰金又は科料を科することができる」と定めており、対象は罰金と科料に限られます。
罰金刑のない詐欺罪はこの対象に入らず、起訴されれば法廷で審理を受ける正式な裁判になります。裁判自体を避けたい場合に目指すのは、罰金ではなく不起訴です。
未遂や共犯でも詐欺罪に問われる
だまそうとしたものの財物や利益を得られなかった場合は、詐欺未遂罪に問われます(刑法250条)。裁判所は刑を減軽することができ(刑法43条本文)、減軽するときは上限が10年から5年に下がります(刑法68条3号)。
また、二人以上で共同して犯罪を実行した者はすべて正犯とされます(刑法60条)。現金を受け取る役割だけを担った受け子であっても、共犯として詐欺罪に問われることがあります。未遂の量刑傾向は「詐欺未遂罪とは?刑罰・量刑傾向、判例と逮捕後の流れを解説」で詳しく解説しています。
詐欺の懲役は平均何年?司法統計で見る刑期の分布
条文の上限は10年ですが、実際の懲役はもっと狭い帯に集まっています。司法統計年報 令和7年(2025年)第34表から、詐欺の罪で第一審の有罪判決を受けた3,166人の内訳を見ます。
| 刑期 | 実刑 | 全部執行猶予 | 計 |
| 6月未満 | 6人 | 0人 | 6人 |
| 6月以上1年未満 | 43人 | 16人 | 59人 |
| 1年以上2年未満 | 284人 | 733人 | 1,017人 |
| 2年以上3年未満 | 398人 | 629人 | 1,027人 |
| 3年 | 146人 | 404人 | 550人 |
| 3年超5年以下 | 392人 | 対象外 | 392人 |
| 5年超7年以下 | 97人 | 対象外 | 97人 |
| 7年超10年以下 | 17人 | 対象外 | 17人 |
| 10年超15年以下 | 1人 | 対象外 | 1人 |
| 合計 | 1,384人 | 1,782人 | 3,166人 |
※10年を超える刑があるのは、詐欺が他の罪と併合罪として一度に裁かれ、上限が15年に引き上げられた場合などです(刑法47条本文)。令和7年は拘禁刑への移行年(施行2025年6月1日)にあたるため、この表の人員は懲役・拘禁刑・禁錮を合算した数値です。出典:裁判所 司法統計(令和7年 司法統計年報 刑事編 第34表)
最も多い刑期は2年以上3年未満
最も多いのは懲役2年以上3年未満の1,027人、次いで1年以上2年未満の1,017人、3年の550人です。
1年以上3年以下だけで2,594人、全体の81.9%を占めます。詐欺の懲役は平均何年か、という問いには、この帯が実勢の答えになります。
なお司法統計は刑期を区分ごとの人数で公表しており、平均年数そのものは示していません。
一方で、懲役3年を超える判決も507人(16.0%)あります。その大半は3年超5年以下の392人ですが、7年を超える判決も18人にのぼります。
実刑になった場合の刑期はどのくらいか
実刑は1,384人。内訳は懲役2年以上3年未満が398人で最も多く、次いで3年超5年以下が392人、1年以上2年未満が284人です。
ここで効いてくるのが、刑法25条1項が執行猶予の対象を3年以下の拘禁刑に限っていることです。3年を超えた507人は全員が実刑になります。
もっとも、実刑1,384人のうち877人(63.4%)は懲役3年以下でした。3年以下に収まれば執行猶予の可能性は残りますが、収まったからといって実刑を免れるわけではありません。
詐欺罪が成立する要件と主な手口
詐欺罪の成立には、次の4つが一連の流れでつながっていることが必要です。
- 人を欺く行為(欺罔行為)
- 相手の錯誤
- 錯誤に基づく処分行為
- 財物・利益の移転
どれか1つでも欠ければ詐欺罪の既遂は成立せず、詐欺未遂罪や別の罪にあたるか、民事上の問題にとどまります。
あわせて故意も必要です。刑法38条1項は「罪を犯す意思がない行為は、罰しない」と定めており、だますつもりがなければ詐欺罪にはあたりません。
①人を欺く行為(欺罔行為)
人を欺く行為(欺罔行為)とは、相手を勘違いさせる働きかけをいい、財物の交付や財産上の利益に向けられたものである必要があります。
たとえば、架空の儲け話をもちかけて金銭を受け取る行為、返す意思も能力もないのに必ず返すと言って借りる行為が典型例です。
黙っていることが欺罔行為になる場合もあります。多く渡された釣銭と気づきながら黙って受け取る釣銭詐欺が典型です。成立要件と詐欺の種類は「詐欺罪とは?成立要件・欺罔行為の意味・罰則・詐欺の種類を解説」にまとめています。
②相手の錯誤
錯誤とは、欺く行為によって相手が陥る勘違い・誤解のことです。この錯誤は欺く行為から生じたものである必要があり、欺く行為があっても相手が錯誤に陥らなかった場合、詐欺罪は未遂にとどまります。
③錯誤に基づく処分行為
処分行為とは、勘違いした相手が自分の意思で財産を渡すことをいい、詐欺罪に欠かせない要素とされます。ここが、相手の意思に反して奪う窃盗罪との分かれ目です。
たとえば「ご主人が家の前で倒れています」と嘘を言って家から出させ、その隙に財布を持ち去った場合は、相手が渡したわけではないため詐欺罪ではなく窃盗罪になります。
④財物・利益の移転
財物または利益が実際に移転したことが必要です。現金なら手渡し、振込みなら口座への入金で、ここに至らなければ詐欺罪は未遂にとどまります。
特殊詐欺・結婚詐欺など詐欺の主な手口
詐欺罪は一つの条文で幅広い手口を対象にしており、どの類型かで争点も量刑も変わります。
件数が最も多いのは特殊詐欺です。電話やSNSで親族や公的機関の職員を装い、現金やキャッシュカードを交付させる手口で、オレオレ詐欺・還付金詐欺・預貯金詐欺などが含まれます。現金を受け取る受け子や電話をかける架け子といった役割に分かれ、末端の関与でも共犯として問われます。
保険金詐欺や給付金詐欺は事故や事業の実態を偽って申請するもの、結婚詐欺・ロマンス詐欺は恋愛感情を利用して金銭を交付させるものです。無銭飲食や釣銭詐欺のように被害額の小さい類型もあります。
他人のIDでインターネットバンキングにログインして預金を移すなど、人ではなく機械を欺いた場合は、詐欺罪ではなく電子計算機使用詐欺罪(刑法246条の2)が問われます。法定刑は詐欺罪と同じ10年以下の拘禁刑です。
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詐欺は実刑になるのか、執行猶予がつくのか
判決の前に、起訴されるかどうかという関門があります。検察統計年報 令和7年(2025年)表5によると、詐欺の起訴人員は8,248人、不起訴人員は7,751人で、起訴率は51.6%でした。刑法犯全体の25.0%と比べると約2倍です(出典:e-Stat 検察統計年報 令和7年)。
裁判で無罪となる確率はごくわずかです。令和7年版犯罪白書によると、令和6年に裁判が確定した20万3,801人のうち無罪は96人(0.05%)でした(出典:令和7年版犯罪白書 第2編第3章第2節)。争わない事件では、焦点は有罪か無罪かではなく、懲役が何年か、執行猶予がつくかに移ります。
次の分かれ道が実刑か執行猶予かです。実刑は刑務所に収容される判決、執行猶予は一定期間刑の執行を待ってもらい、その期間を無事に過ごせば刑を受けずに済む判決をいいます。
実刑43.7%・執行猶予56.3%という実際の割合
司法統計 令和7年に詐欺罪で有罪となった3,166人のうち、執行猶予は1,782人、実刑は1,384人でした。実刑になる確率は43.7%、執行猶予がつく確率は56.3%で、半々に近い数字です。
懲役の長さごとに見ると、執行猶予の割合は3年で73.5%、2年以上3年未満で61.2%、1年以上2年未満で72.1%、6月以上1年未満で27.1%です。刑期が短ければ猶予されやすい、という関係にはなっていません。
なお執行猶予がついても有罪判決であることに変わりはなく、前科は残ります。猶予期間中に再び罪を犯せば猶予が取り消されることもあります。この点は「執行猶予でも前科はつく!猶予期間が経過したら前科は消える?」で整理しています。
執行猶予がつくための3つの条件
執行猶予がつくには、刑法25条1項が定める要件を満たす必要があります。条件は次の3つです。
- 言い渡される刑が3年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金であること
- 前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがないこと。処せられたことがあっても、その執行を終わった日または免除を得た日から5年以内に拘禁刑以上の刑に処せられていないこと
- 情状により、執行を猶予することが相当と認められること
1つ目は刑そのものについての条件です。懲役3年を超えれば、どれほど有利な事情があっても執行猶予はつきません。
2つ目でいう「拘禁刑以上」は拘禁刑と死刑を指すため、前科が罰金だけであればこの条件はクリアできます。制度の詳細は「執行猶予とは?実刑との違いや認められる条件をわかりやすく解説」をご覧ください。
3つ目の情状については、このあとの「詐欺はいくらから実刑になる?量刑を左右する事情」で詳しく扱います。
初犯でも実刑になることはある
初犯なら必ず執行猶予、ということはありません。初犯でいきなり実刑になること、いわゆる一発実刑は、詐欺罪では現実に起きています。
そもそも起訴の段階で、初犯は珍しくありません。検察統計 令和7年によると、詐欺で起訴された8,248人のうち5,517人(66.9%)が前科のない初犯者でした(出典:e-Stat 検察統計年報 令和7年)。初犯であることは起訴猶予を検討する事情の一つですが(刑事訴訟法248条)、それだけで起訴を免れるわけではないことがわかります。
実際の判決でも、後述する裁判例のなかに、初犯で実刑となった例があります。なお、初犯だけを取り出した実刑率や懲役の平均は公表されていません。初犯かどうかは考慮される事情の一つにすぎず、組織的な特殊詐欺への関与や被害弁償の不足があれば、初犯でも実刑はありえます。続いて、量刑を左右する事情を具体的に見ていきます。
詐欺はいくらから実刑になる?量刑を左右する事情
詐欺罪に「いくら以上なら実刑」という金額の線引きはありません。被害額で実刑と執行猶予を分ける規定は法律になく、実際の判決も金額だけでは決まっていません。被害が2億円を超えても執行猶予がついた裁判例がある一方、1,000万円規模で実刑になった事例もあります。
詐欺罪の量刑は、次のような事情を組み合わせて判断されます。
| 事情 | 実刑に傾きやすい | 執行猶予に傾きやすい |
| 被害額 | 高額で、損害が残ったまま | 弁償され、実質的な損害が残っていない |
| 被害者数・件数 | 被害者が複数、犯行の繰り返しがある | 単発で、被害の広がりがない |
| 組織性と役割 | 組織的な詐欺で主犯・指示役など中心的な立場 | 関与が従属的で、利得も小さい |
| 弁償・示談 | 弁償も示談もできていない | 被害弁償が済み、示談や宥恕(被害者が許す意思の表明)が得られている |
| 前科 | 同種の前科がある、執行猶予中の再犯 | 前科前歴がなく、再犯の可能性が高いとはいえない |
このうち特に影響の大きいものを、順に見ていきます。
被害額と被害件数が量刑に与える影響
詐欺罪の量刑で被害額は中心的な事情ですが、金額だけで結論は決まりません。高額でも被害が回復していれば刑は軽くなり、金額が中程度でも役割が重ければ実刑になります。
件数の影響を示すデータもあります。令和3年版犯罪白書が特殊詐欺の事犯者について行った特別調査(母集団は確定記録調査対象者)では、全部実刑となった人の割合は事件1件で34.7%、2件で72.1%、3件で92.3%、4件で77.8%、5件以上で92.3%でした。同白書は事件数ごとに母数が異なる点への留意も求めています。特殊詐欺に限った数値である点にもご注意ください。
受け子・出し子など組織的な詐欺への関与
オレオレ詐欺や還付金詐欺で現金の受取や引き出しを担う受け子・出し子であっても、特殊詐欺への関与は詐欺罪の量刑を重くする方向に働きます。前述の特別調査は、役割ごとの割合も示しています。
執行猶予がまったくつかない「全部実刑」の割合は、主犯・指示役が84.2%、電話をかける架け子が83.6%、犯行準備役が64.5%、受け子・出し子でも54.9%でした。比較対象として同白書が挙げる令和2年の地方裁判所における詐欺全体の全部実刑は47.2%です(出典:令和3年版犯罪白書 8-5-3-16図)。
このデータは特殊詐欺の事犯者を対象とした特別調査によるもので、全国を継続的に集計した統計ではありません。それでも、末端の役割だから執行猶予が見込めるとはいえません。
被害弁償と示談が成立しているか
詐欺罪の判決文で、有利な事情としてはっきり示されるのが被害弁償です。被害が回復していることを重くみて執行猶予を選んだ裁判例もあります。
弁償は、判決までに間に合わせることに意味があります。第一審の判決後に支払った分は、控訴審が職権で取り調べたときに初めて考慮される可能性が出てくるにとどまります(刑事訴訟法393条2項)。
もっとも、弁償をすれば必ず執行猶予がつくわけでもありません。被害が事後的に回復されていても、犯行を主導した立場を理由に実刑が維持された裁判例もあります。
前科の有無と反省の姿勢
詐欺罪の量刑で、前科には2つの意味があります。1つは執行猶予の要件そのものです。前科があっても、前述のとおり刑の執行を終えた日などから5年が経過していれば妨げにはなりません。もう1つは情状としての評価で、前科前歴がなく再犯の可能性が高いとはいえない、という判断が執行猶予の理由として判決文に書かれます。
反省の姿勢も、それだけで結論を変えるものではなく、被害弁償や再発防止と合わせて評価されます。
詐欺罪の裁判例では実刑と執行猶予がどこで分かれたか
判決を4件見ていきます。要約は当事務所の言葉で、出典を示します。
大阪地方裁判所 令和6年1月16日判決は、懲役2年・執行猶予4年を言い渡しました。市の業務委託をめぐって水増し・架空の請求を行い、2つの市から合計2億円を超える金額を詐取した事案です。判決は「詐取金額は非常に高額であり…結果は重大というほかない」としながら、被害弁償が済んで財産的被害が回復していることを「刑事責任を大幅に軽減する事情」と評価しました。だまし取った現金を自分のものにする類型ではなく、計画性も高いとはいえないとしたうえで、前科前歴のない被告人に実刑は酷であるとして猶予を付しています(判決文PDF)。
広島高等裁判所 令和5年11月30日判決(令和5年(う)第76号)は、懲役3年6月の実刑を維持しました。持続化給付金や家賃支援給付金の名目で、共犯者と共謀して7件の詐欺に及んだ事案です。前科はなく被害も事後的に回復されていましたが、判決は犯行を立案した首謀者であるとして「刑の執行を猶予するのを相当とするほど被告人の刑事責任を軽くみることはできない」としました(判決文PDF)。
福岡高等裁判所那覇支部 令和6年11月26日判決(令和6年(う)第15号)は、原判決を破棄して懲役1年6月・執行猶予3年を言い渡しました。窃盗・詐欺と組織的犯罪処罰法違反が問われ、量刑は犯情の重い窃盗を基準に決まった事案です。判決は前科がないことと、窃盗の被害について被害品の還付と被害金額の弁償がされていることを、有利に酌むべき事情として挙げています(判決文PDF)。
4件目は報道による事例です。借金の返済のため闇バイトに応募し、特殊詐欺の受け子をしていた20代前半の女性が、初犯でありながら懲役2年8か月の実刑判決を受けました。被害は5件で約1,000万円、両親の協力で150万円を弁済していたと報じられています(関西テレビ 2021年4月29日報道)。裁判所名や判決年月日は報道からは確認できません。
4件の量刑を並べると、分かれ目は金額ではなく、被害がどこまで回復したかと、事件のなかでどんな立場にいたかにあります。
実刑を避けるために今できること
詐欺罪で実刑を避けるために動かせる事情は、そう多くありません。逆にいえば、その数少ない部分に早く手をつけるほど結果は変わります。取り組むべきことは次の3つです。
- 被害者と示談・被害弁償を進める
- 発覚前なら自首を検討する
- 刑事事件に強い弁護士に早く相談する
被害者と示談・被害弁償を進める
詐欺罪で最も効果が大きいのは、被害者への対応です。被害弁償はだまし取った額を返すこと、示談は賠償の条件を被害者と合意して書面にすること、宥恕はその示談書で被害者が処罰を望まないと表明することをいいます。いずれも量刑で有利に考慮されますが、どれがどれだけ効くかは事案によります。
捜査機関に事件が知られていない段階で示談が成立すれば、被害届や告訴状が出されない可能性があります。逮捕後なら早期釈放や不起訴、起訴後なら保釈や執行猶予につながることもあります。
ただし、被害者への連絡をご本人やご家族が直接行うことは避けてください。詐欺の当事者からの連絡に応じる被害者はまれですし、口裏合わせを疑われれば、証拠隠滅のおそれがあるとして身柄拘束の理由にもなります。
連絡先を知らない場合でも、被害者の意向しだいで弁護士には伝えられます。示談金の相場や進め方は「刑事事件で示談するメリットは?示談金相場と流れを徹底解説」で詳しく説明しています。
発覚前なら自首を検討する
まだ犯人が誰かを捜査機関が把握していない段階であれば、詐欺罪でも自首は選択肢になります。刑法42条1項は「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」と定めています。
被害届が出て事件そのものは知られていても、犯人が誰かまで特定されていなければ自首は成立します。逆に、犯人が特定された後に出向いた場合は出頭であって、法律上の自首にはあたりません。減軽するかは裁判所の判断ですが、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを示す材料になります。
自首すれば逮捕を免れるわけではありません。出頭の時期や説明の仕方で結果が変わるため、弁護士に相談して同行してもらう形が安全です。
刑事事件に強い弁護士に早く相談する
示談も自首も、時期を逃すと効果が下がります。相談が遅れるほど選択肢は減ります。逮捕前なら逮捕回避と不起訴、逮捕後なら早期釈放、起訴後なら執行猶予と、狙える結果が段階的に下がるからです。
弁護士に依頼すれば必ず不起訴になる、という保証はありません。もっとも、被害者との連絡窓口になる、身柄拘束を争う、検察官に意見書を出すといった手段を、ご本人だけで進めるのは困難です。
詐欺罪でも、不起訴になれば裁判は開かれず、有罪判決も前科もつきません。不起訴の種類や前歴との違いは「不起訴とは|無罪との違いと不起訴になる理由・前科前歴の有無」で解説しています。
詐欺で逮捕されたらどうなる?起訴までの流れ
詐欺で捜査を受けた人が全員逮捕されるとは限りません。身柄を拘束するかどうかは、逃亡や証拠隠滅のおそれがあるかで個別に判断されます。なお令和6年の詐欺の認知件数は5万7,324件、検挙率は28.2%ですが、これは事件が検挙されたかどうかの割合であり、すでに被疑者として特定された人が逮捕されるかどうかとは別の統計です(出典:令和7年版犯罪白書)。
なお詐欺罪は、原則として親告罪(起訴に被害者の告訴が要る罪)ではなく、告訴がなくても捜査や起訴は行われます。例外は親族間の詐欺で、配偶者・直系血族・同居の親族との間なら刑が免除され、その他の親族との間は告訴がなければ起訴できません(刑法251条・244条)。この点は「詐欺罪は親告罪ではありません」で説明しています。
逮捕から起訴・不起訴まで最大23日かかる
詐欺罪で逮捕された場合、手続きは次のように進みます。
- 逮捕され、警察官の弁解録取(言い分の聴取)を受ける
- 逮捕から48時間以内に検察官へ送致される(送検)
- 送致から24時間以内に、検察官が裁判官へ勾留を請求する
- 勾留(起訴前の身柄拘束)が認められると10日間拘束される(最大10日間の延長あり)
- 原則として勾留期間内に起訴・不起訴が決まる
通常逮捕には、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由と、逃亡または証拠隠滅のおそれ(逮捕の必要性)が必要です。1つの事件では、起訴・不起訴が決まるまでの身柄拘束が最大23日間に及びます。
逮捕から勾留が決まるまでは、弁護士以外の面会は原則として認められません。勾留が決まればご家族の面会も可能になりますが、共犯がいる事件では接見禁止がつき、起訴まで弁護士以外と会えないこともあります(刑事訴訟法81条・207条1項)。勾留の要件や早期釈放の方法は「勾留とは?逮捕との違いと要件、勾留期間を解説」で取り上げています。
逮捕されずに在宅で捜査が進むこともある
身元がはっきりしていて、逃げるおそれも証拠を隠すおそれも小さいと見られた場合は、詐欺罪でも逮捕されず、在宅のまま捜査が進みます。呼び出しに応じて取調べを受け、仕事を続けながら処分を待つ形です。
在宅でも起訴・不起訴が判断される点は変わらず、処分までの期間に法律上の上限がないため、数か月に及ぶこともあります。
詐欺罪の量刑についてよくある質問
最後に、詐欺罪の量刑について特によく寄せられる質問にお答えします。
詐欺の初犯だと懲役は何年になりますか?
初犯だから懲役何年、という決まりはありません。司法統計では詐欺の有罪判決の81.9%が刑期1年以上3年以下に収まっていますが、これは初犯・再犯を通じた全体の分布です。初犯だけを取り出した刑期の統計は公表されておらず、初犯であることだけを根拠に刑期を見積もることはできません。実際に何年になるかは、被害額・役割・被害回復といった事情で決まります。
詐欺罪はいくらから実刑になりますか?
詐欺罪に金額の基準はありません。実刑と執行猶予を分ける金額の線引きは法律になく、2億円超の詐取でも執行猶予がついた例があります。
判断材料は金額のほか、被害回復の有無・役割・前科などです。詳しくは量刑を左右する事情をご覧ください。
詐欺は1発で実刑になりますか?
初犯でも実刑になることはあります。懲役が3年を超えれば執行猶予はつけられませんし、3年以下でも実刑となった人が司法統計で確認できます。
特殊詐欺への関与は重く評価され、受け子・出し子でも半数を超える人が全部実刑となった調査があります。
日本では詐欺罪は軽い罪ですか?
軽い罪ではありません。刑罰は10年以下の拘禁刑だけで罰金刑がなく、有罪であれば実刑か執行猶予つきの拘禁刑が原則です。
軽く見られがちな背景や立件のハードルについては「詐欺罪は立件が難しい?立証に必要な証拠と事件後の対処法」で扱っています。
詐欺罪の公訴時効は何年ですか?
詐欺罪の時効期間は7年です。刑事訴訟法250条2項4号が長期15年未満の拘禁刑にあたる罪の時効を7年と定めており、10年以下の拘禁刑の詐欺罪はこれにあたります。
起算点は犯罪行為が終わった時(刑事訴訟法253条1項)、共犯がいる場合は最終の行為が終わった時です(同条2項)。犯人が国外にいる間は、時効の進行が止まります。逃げ隠れている場合も、そのために起訴状の謄本を送達できなかったときは同じく止まります(同法255条1項)。
詐欺罪の懲役・実刑でお悩みの方は弁護士にご相談ください
詐欺罪で有罪になれば、刑務所に行くか、執行猶予を得て社会に残るかのどちらかです。前述の裁判例のように、前科がなく被害が回復していても、主導的な立場だったことを重くみて実刑となった例があります。初犯であることだけを頼りに実刑を免れると考えるのは危険です。
結果を分けるのは、被害弁償や示談、果たした役割の説明を判決までにどれだけ積み上げられたかで、逮捕や起訴を待ってからでは間に合わないことが少なくありません。
「逮捕されるかもしれない」「家族が逮捕されてしまった」「起訴されたらどうなるのか」。強い不安のなかで、何から手をつけるべきかを判断するのは簡単ではありません。当事務所では、詐欺被害者との示談交渉、早期釈放、不起訴の獲得を得意としており、多数の解決実績があります。ご依頼者の不利益を最小限に抑えるため、弁護士が迅速に動き、全力を尽くして守ります。
全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
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この記事の監修者
刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

