弊所にはこのような相談が数多く寄せられています。
具体的には次のような脅し文句がよく用いられます。
- 別れるなら死んでやる
- 俺らの不倫関係をお前の夫や職場に全部バラす
- 性行為の際に撮影した動画をネットに流出させる
- 今まで俺がお前に費やしたお金を返すまで別れさせない
- 別れるなら慰謝料を払え
- 殺すぞ・殴るぞ・お前の人生を滅茶苦茶にしてやる など
酷いケースだと暴力も併用して彼女を恐怖に陥れ、自分の元から逃げ出せないようにする彼氏もいます。
そこでこの記事では、脅迫被害に強い弁護士が、彼氏に脅されて別れられない女性に向けた対処法を解説していきます。
記事を最後まで読んでも問題解決しない場合は、気軽に弁護士まで相談してください。
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目次
彼の脅迫言動はどんな犯罪に該当する?
脅迫罪に該当するケース
生命・身体・自由・名誉・財産に対し「害を加える旨を告知して人を脅迫した」場合には脅迫罪が成立します(刑法第222条1項参照)。
「別れたら死ぬ」などと言われているだけではあなたの生命や身体に対して害悪を告知して意思活動の自由を侵害しているわけではありません。したがって「自分が死んでやる」という発言だけでは脅迫が成立する可能性は小さいでしょう。
しかし、「オレが死んだら皆あなたが殺したと思う」「オレが死んだらもうこの地域(や会社)にいることはできない」「付き合っていたことをお前の旦那にばらすぞ」などと言う場合には、意思決定の自由や名誉を侵害する可能性があるため脅迫罪に該当する可能性があります。
これは脅迫罪になる言葉?ならない言葉?強要罪・恐喝罪と何が違う?
強要罪に該当するケース
生命・身体・自由・名誉・財産に対して「害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ」たり「権利の行使を妨害」した場合には強要罪が成立します(刑法第223条1項)。
「別れたら何をするかわからない」など身体に対する害悪の告知と受け取れる言動をして「だからこのままの関係を続けよう」と交際の継続を要求するような場合には強要罪に該当する可能性があります。
ストーカー規制法に該当するケース
ストーカー規制法において犯罪となる「ストーカー行為」とは、同一の者に対し身体の安全・住居等の平穏や名誉が害され、行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法で「つきまとい等」を行ったり、位置情報無承諾取得等を反復したりすることをいいます(同法第2条4号)。
彼氏や浮気相手の行動が「つきまとい等」に該当するのは以下のような場合です。
- つきまとい、待ち伏せ、住居・勤務先などの付近で見張り、押し掛け、うろつく場合
- あなたの行動を監視しているようなことを告げる場合
- 面会や交際その他の義務のないことを行うように要求する場合
- 著しく粗野・乱暴な言動をする場合
- 無言電話、拒否したにもかかわらず連続して電話やメールをしてくる場合
「別れるなら死んでやる」と何度も電話やメールを送りつけてくる行為は、ストーカー規制法上「つきまとい等」に該当する可能性が高い行為です。
自殺関与罪に該当するケース
自分が自殺することは何の犯罪にも該当しません。しかし他人をそそのかしたり手助けしたりして自殺させた場合には話が違います。
「死ね」は脅迫罪やその他の犯罪に当たらないの?にも書かれているように、もし彼氏が、「俺と別れるなら死ね」「死んで詫びろ」と繰り返し迫ってきた場合には脅迫罪が成立する可能性があります。また、「死ね」と繰り返し言われた彼女が実際に自殺に着手して死亡した場合は自殺教唆罪、自殺未遂に終われば未遂罪が成立する可能性もあります。
また、彼氏が彼女に対して「死ね」と繰り返し告げることで彼女を精神的に完全に支配し自殺に追いやったようなケースでは、被害者自身を利用して殺人を完成させたと考えられるため、「殺人罪」が成立する可能性があります。
彼氏に脅迫されて別れられない時の対処法
①脅されて怖くてもズルズルと関係を続けない
「別れるなら死んでやる」「付き合っていたことを旦那にばらすぞ」と彼氏や不倫相手に脅されたとしてもズルズルと関係を継続するべきではありません。
彼氏や不倫相手が「本当に死んだらどうしよう」、「浮気をバラされたら今の家庭を失うことになって困る」と考えていつまでも今の交際関係を続けてしまう人もいるかもしれません。
しかし、今の関係を続けていったとしてもあなたに幸せが訪れない可能性が高いでしょう。
たとえ「自殺する」と脅されようが、いつかは関係を終わらせ断ち切る必要があります。「仮に彼氏が自殺したら自分は責任を負うのだろうか…」とご心配の方は、「自殺してやる」は脅迫罪に当たる?本当に自殺されたら責任を負う?に目を通してみましょう。
また、彼との関係が不倫の場合には、脅されてズルズルと関係を続ければいずれは夫や第三者に発覚することで終焉を迎えることになるでしょう。その場合には家庭に壊滅的なダメージを与えることがほとんどです。そのため、話し合いで別れられる可能性があるのであれば粘り強く関係解消に努めるべきなのです。
別れ話をする際に彼氏が感情的になってしまうリスクがある場合には、できるだけ第三者が多く出入りするような場所を利用するようにしましょう。具体的には利用客の多いファミレスやカフェなどで話し合いをすることがオススメです。
②脅されて慰謝料を払ってはいけない
「別れるなら慰謝料を払え」と脅してくる場合もあります。慰謝料とは相手方の故意・過失によって精神的苦痛を被ったことに対してそれを慰謝する目的で支払われる損害賠償金です。
通常、離婚などで別れる際に支払われる慰謝料は「夫婦として日常生活を営む権利・利益」の毀損やそれを侵害したことに対する精神的苦痛について支払われるものです。しかし、浮気相手の場合には婚姻関係にありませんので保護すべき利益が想定できません。したがって、相手方から「慰謝料を払え」と脅されたとしても応じる義務はないのです。
さらに、彼氏が金銭を要求してくる目的はほとんどのケースで「お金」ではありません。慰謝料の他にも時には交際時に彼氏が支払ったデート費用やプレゼント費用を請求してくることがありますが、これは多額の金銭を要求されて困っている彼女の様子を見ることで、別れを告げられた怒りや復讐心を満たすための行動である可能性もあるのです。
お金を払ったところでこの満たされぬ復讐心が消えることはありませんので、「お金で解決するなら」と安易に支払わないことが重要です。
③彼を絶対に刺激しない
別れ話になるとあなたを脅すような彼氏ですので、できるだけ相手を刺激するような行動・発言は避けるべきです。
彼を刺激する発言としては、彼の行動が上記で説明したような犯罪行為に該当している場合でも、「そのことを指摘する」ことはNGです。つまり「あなたがしていることは脅迫罪・ストーカー規制法違反だ」などと指摘してはいけません。
すでに彼はあなたとの別れを予感して必死の抵抗を見せている可能性があります。そこで彼の行動が犯罪行為だと指摘することで、ますます彼氏を追い詰める結果となるかもしれません。追い詰められた彼氏がさらなる問題行為に出ないようにするためにも上記のような指摘は避けるべきです。
また関係を清算させるために共通の友人や知人を介入させることもおすすめはできません。
なぜなら「死んでやる」などあなたを脅迫している事実が周囲に発覚することで彼氏を激昂させてしまうリスクがあるからです。また共通の知人・友人は以下で紹介する「警察や弁護士」のように一定の権限や法的な知識があるプロとは異なります。したがって話し合いがこじれた場合やさらなるトラブルに発展した場合には実行力を持って制圧したり法的に対処したりすることができません。
したがって、脅されて別れられないケースで警察・弁護士以外の私人をトラブルに介入させるべきではないと言えます。
④少しでも危険を感じたら身の安全を確保する
少しでも身の危険を感じた場合には、身の安全を確保することを最優先してください。彼氏・浮気相手がしていることは脅迫・強要などの犯罪行為にあたる可能性が高いですが、さらに行き過ぎると暴力など物理的な脅威へと変貌を遂げる可能性もあります。
そのため、しばらくは会わないようにしたり連絡を控えたりして物理的に距離を置くことも検討してください。
また、彼氏・浮気相手に実家の所在を知られている場合には、親御さんにも現状を伝えて警戒してもらう必要があるかもしれません。令和4年2月には、元カレが交際相手の女性宅に押し入り母親を殺害した痛ましい事件もありました。実家が知られているようであれば家族の身の安全を守るためにも厳重な警戒をすべきでしょう。
⑤警察に相談して逮捕してもらう
身の危険を感じた際にはすぐに警察に相談しておくことが重要です。彼氏・浮気相手が行っている行動が犯罪行為に該当する場合には、警察が捜査に動いてくれ、彼氏を逮捕してくれることも期待できます。また、彼氏の行為がストーカー行為に該当する場合には警告を発してくれる場合があります。また事案に応じて、あなたの住所の近辺の見回りを強化してくれたり定期的に様子を確認してくれたりするケースもあります。
ただし警察に相談に行ったことが彼に知られるとかえって彼が逆上してつきまとい行為が過熱してしまう可能性もあります。そのため身の危険が及ぶ段階にまで至っていないケースであれば以下で説明するようにまずは弁護士に相談して穏便に解決を図る方法を検討してみてください。
⑥弁護士に相談して穏便に解決してもらう
警察に相談した際には刑事事件として立件され、彼氏が逮捕されあなたも被害者として事情聴取を受けなければならない可能性もあります。そのようにことを荒立てずできるだけ穏便に解決する方法を探りたいという方はひとまず弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士は法律のプロであるため仕事として当事者間に介入しています。そのためいきなり公権力である警察組織に突き出されたと彼氏が感じて、無用に刺激するリスクも低いと考えられます。
また弁護士に事件を依頼すれば、あなたの代理人として行動してくれます。そのため彼氏との話し合いや交渉についてはすべて弁護士が代わりに行ってくれますので、あなたが矢面に立って彼氏と口論したり脅迫めいた言動を受け止めたりする必要がなくなります。具体的な解決についても弁護士が立案してくれますし、あなたは弁護士からの報告を受けるだけで済みますので、精神的な負担はかなり軽減されるでしょう。
弊所では、彼氏に脅されて別れられない女性から多くのご依頼を頂いており、穏便に解決してきた実績もあります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、まずはお気軽にご相談ください。相談する勇気が解決への第一歩です。
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