
「会社や法人を脅迫しても脅迫罪にはならないの?」「法人相手でも犯罪として処罰される可能性はある?」このような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、法人に対する脅迫罪は原則として成立しません。脅迫罪の対象(客体)は自然人(人間)に限られると解されているためです。ただし、法人への脅迫が結果として代表者や社員個人に対する脅迫と評価される場合には、その自然人に対する脅迫罪が成立する余地があります。
この記事では、法人に対して脅迫罪が成立しない理由を条文と判例をもとに、脅迫事件に強い弁護士がわかりやすく解説します。
なお、法人への脅迫行為について早急に対応したいとお考えの方は、この記事をお読みいただいた後、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談をご利用ください。
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法人に対する脅迫罪は成立するか
まず、脅迫罪(刑法第222条)の条文を見てみましょう。
1.生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金に処する。
2.親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
※拘禁刑とは、2025年6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役刑と禁錮刑が一本化された刑罰のことです。
条文を読むと、「人」を脅迫した場合に脅迫罪が成立することがわかります。
法律上「人」とは、自然人と法人に分かれます。
自然人とは「人間」のことで、法人とは「法律によって権利義務の主体となる資格を与えられたもの」です。
そうすると、法人も「人」に属するので、法人を脅迫した場合にも同罪が成立するようにも思えます。
しかし、刑法222条の「人」とは自然人、つまりは人間を指していると考えられています。
条文には、「生命、身体、自由~に害を加えることを告知して」「親族の~」と書かれていますが、法人はあくまでも法律で人と同じ扱いを受けているにすぎず、生命も身体も自由も親族も存在しません。
また、脅迫罪は、殺人罪や傷害罪といった人の生命や身体に対する罪に引き続き、逮捕監禁罪、誘拐罪といった人の自由に対する罪と並び、その間に位置しています。
つまり脅迫罪は、刑法体系上、被害者が自然人であることを前提とした犯罪と並んで規定されています。
これらの理由から、脅迫罪の客体(犯罪の対象)は自然人に限られると考えられており、会社、NPO法人、独立行政法人、商工会などの法人に対しては脅迫罪は成立しないのです。
※なお、脅迫や暴行を用いて人に義務のないことを行わせる犯罪である「強要罪」についても、脅迫罪と同様の理由で、法人に対しては成立しません。脅迫罪と強要罪・恐喝罪の違いについて詳しくは脅迫罪になる言葉・ならない言葉は?成立要件と刑罰を解説で解説しています。
判例でも法人に対する脅迫罪の成立は否定されている
法人に対する脅迫罪の成立を正面から取り扱った判例は2つあります。
| 判例 | 事件概要 |
|---|---|
| 大阪高裁昭和61年12月16日判決 | 暴力団員が建設会社の社員2名に対し暴力団を示す名刺を差し出しながら「地元の業者を使わないなら工事ができないようになるぞ。妨害が出ても知らんぞ」などと言った事例です。 |
| 高松高裁平成8年1月25日判決 | 政治結社の幹部が電力会社の副支店長に対し政治結社の名刺を手渡したうえ「きちんとした対応をしないなら伊方原発の反対運動を起こす」などと言った事例です。 |
この2つの判例のどちらも、法人への脅迫罪は成立しないと判示しています。
ただし、これらの高裁判例の原審判決(地裁判決)では法人への脅迫罪の成立を認めています。
また、これらは高裁判例ですので、最高裁が原審と同様の判決を下さないとも限りません。最高裁判所の判例が待たれるところです。
自然人に対しては脅迫罪が成立することもある
これまでの説明を聞くと、「じゃあ法人を脅迫する行為は罪にならないの?」と思われることでしょう。
じつは、大阪高裁、高松高裁の判例ともに、法人に対する脅迫罪の成立は否定しつつも、自然人に対しては脅迫罪が成立しうると述べています。
以下は大阪高裁判例からの抜粋です。
それら法人の法益に対する加害の告知が、ひいてその代表者、代理人等として現にその告知を受けた自然人自身の生命、身体、自由、名誉又は財産に対する加害の告知に当たると評価され得る場合にのみ、その自然人に対する同罪の成立が肯定されるものと解される。
例えば、「会社を爆破してやる」と言われた場合、それを聞いた代表や社員は自分の命も危険に晒されると感じるでしょう。
法人に対しての害悪の告知が結果としてその法人の代表者や代理人(加害者と話をした社員等)を畏怖させる内容であれば、自然人に対する脅迫罪が成立する余地があるということです。
また、法人の営業活動等に影響を及ぼす言動に対しては、威力業務妨害罪や信用毀損罪が適用されることもあります。脅迫被害を受けた場合の具体的な対処法については脅された時の対処法は?恐喝・脅迫被害の相談先も弁護士が解説で詳しく紹介しています。
法人への脅迫被害でお困りの方は弁護士にご相談ください
法人に対する脅迫罪は原則として成立しませんが、代表者や社員個人への脅迫と評価されれば自然人に対する脅迫罪が成立する可能性があります。また、威力業務妨害罪や信用毀損罪など、脅迫罪以外の犯罪が適用されるケースも少なくありません。
会社や法人が脅迫を受けている場合、「脅迫罪にならないなら泣き寝入りするしかないのか」と不安に感じるかもしれません。しかし、脅迫罪以外にも相手の責任を追及できる手段は複数あり、弁護士に早い段階で相談することで、刑事・民事の両面から適切な対処法を見つけることができます。
「取引先や顧客から脅迫的な言動を受けて業務に支障が出ている」「社員が脅されているが、どのような法的措置がとれるかわからない」といった状況でお悩みの方は、おひとりで抱え込まず弁護士にご相談ください。
当事務所では、脅迫・恐喝被害の解決実績が豊富にあり、ご相談者様の状況に応じた最善の対処法をご提案いたします。全国どこからでもご利用いただける無料相談を実施しておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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この記事の監修者
脅迫・恐喝被害の解決に豊富な実績を持つ。一般社団法人 詐欺・不当要求対策協会の代表理事として、不当要求対策の研究・啓発活動にも取り組んでいる。「警察沙汰にしたくない」「家族や会社に知られたくない」といった被害者特有の事情に寄り添い、粘り強い交渉で解決に導く。他の事務所で断られた案件にも積極的に対応。

