法人に対する脅迫罪は成立する?判例を交えて弁護士が解説

法人を脅迫した場合、脅迫罪は成立するのだろうか…

こういった素朴な疑問をお持ちではないでしょうか?

そこでこの記事では、この疑問を解消すべく、脅迫に強い弁護士が判例を交えつつわかりやすく解説していきます。

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法人に対する脅迫罪は成立するか

まず、脅迫罪(刑法第222条)の条文を見てみましょう。

1.生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2.親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

条文を読むと、「」を脅迫した場合に脅迫罪が成立することがわかります。

法律上「人」とは、自然人と法人に分かれます

自然人とは「人間」のことで、法人とは「法律によって権利義務の主体となる資格を与えられたもの」です。

そうすると、法人も「人」に属するので、法人を脅迫した場合にも同罪が成立するようにも思えます。

しかし、刑法222条の「人」とは自然人、つまりは人間を指していると考えられています

条文には、「生命、身体、自由~に害を加えることを告知して」「親族の~」と書かれていますが、法人はあくまでも法律で人と同じ扱いを受けているにすぎず、生命も身体も自由も親族も存在しません

また、脅迫罪は、殺人罪や傷害罪といった人の生命や身体に対する罪に引き続き、逮捕監禁罪、誘拐罪といった人の自由に対する罪と並び、その間に位置しています。

つまり脅迫罪は、刑法体系上、被害者が自然人であることを前提とした犯罪と並んで規定されているということです。

これらの理由から、脅迫罪の客体(犯罪の対象)は自然人に限られると考えられており、会社、NPO法人、独立行政法人、商工会などの法人に対しては脅迫罪は成立しないのです。

※なお、脅迫や暴行を用いて人に義務のないことを行わせる犯罪である「強要罪」についても、脅迫罪と同様の理由で、法人に対しては成立しません。

>> 脅迫罪についてわかりやすく解説|どんな言葉が脅迫罪になる?

判例でも法人に対する脅迫罪の成立は否定されている

法人に対する脅迫罪の成立を正面から取り扱った判例は2つあります。

判例事件概要
大阪高裁昭和61年12月16日判決暴力団員が建設会社の社員2名に対し暴力団を示す名刺を差し出しながら「地元の業者を使わないなら工事ができないようになるぞ。妨害が出ても知らんぞ」などと言った事例です。
高松高裁平成8年1月25日判決政治結社の幹部が電力会社の副支店長に対し政治結社の名刺を手渡したうえ「きちんとした対応をしないなら伊方原発の反対運動を起こす」などと言った事例です。

この2つの判例のどちらも、法人への脅迫罪は成立しないと判示しています

ただし、これらの高裁判例の原審判決(地裁判決)では法人への脅迫罪の成立を認めています。

また、これらは高裁判例ですので、最高裁が原審と同様の判決を下さないとも限りません。最高裁判所の判例が待たれるところです。

自然人に対しては脅迫罪が成立することもある

これまでの説明を聞くと、「じゃあ法人を脅迫する行為は罪にならないの?」と思われることでしょう。

じつは、大阪高裁、高松高裁の判例ともに、法人に対する脅迫罪の成立は否定しつつもそれが自然人に対する脅迫罪の成立に繋がることがあると述べています

以下は大阪高裁判例からの抜粋です。

それら法人の法益に対する加害の告知が、ひいてその代表者、代理人等として現にその告知を受けた自然人自身の生命、身体、自由、名誉又は財産に対する加害の告知に当たると評価され得る場合にのみ、その自然人に対する同罪の成立が肯定されるものと解される。

例えば、「会社を爆破してやる」と言われた場合、それを聞いた代表や社員は自分の命も危険に晒されると感じるでしょう。

法人に対しての害悪の告知が結果としてその法人の代表者や代理人(加害者と話をした社員等)を畏怖させる内容であれば、自然人に対する脅迫罪が成立する余地があるということです。

また、法人の営業活動等に影響を及ぼす言動に対しては、威力業務妨害罪や信用毀損罪が適用されることもあります。

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