不同意性交等罪は親告罪ではなく非親告罪|示談が重要な理由

「不同意性交等罪は親告罪だから、告訴や被害届を取り下げてもらえば起訴されずに済むはず」と考えていませんか。実際には、不同意性交等罪は親告罪ではなく、被害者の告訴がなくても検察官は起訴できます。

もっとも、被害者の意向が処分に関係しなくなるわけではありません。被害者との示談が成立し、許しを得られれば、不起訴や刑の減軽につながる可能性があります。

この記事では、性犯罪事件の解決実績が豊富な弁護士が、次の点について解説します。

  • 親告罪にあたらないとされている理由
  • 告訴が取り消されたら起訴されないのか
  • 告訴がなくても示談をしておくべき理由
  • 示談交渉を弁護士に任せるメリット

お読みいただくことで、告訴の有無に振り回されず、いま何をしておくべきかを判断できます。

なお、性犯罪の疑いをかけられてお困りの方は、この記事をお読みいただいた後、当事務所の無料相談へお早めにご連絡ください。地域を問わずご相談を承っており、早めのご相談がその後の結果を左右します。

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不同意性交等罪は親告罪にあたらず告訴がなくても起訴されることがある

不同意性交等罪(「不同意性交罪」と表記されることもあります)は、2023(令和5)年7月13日施行の刑法改正によって新しく設けられた罪で、改正前に強制性交等罪と準強制性交等罪に分かれていた処罰規定を一本化したものです。この罪は親告罪ではなく、被害者の告訴がなくても検察官は起訴することができます。

親告罪と非親告罪では告訴の扱いが異なる

親告罪とは、被害者などからの告訴(犯罪の事実を捜査機関に申告して、犯人の処罰を求める意思表示)がなければ、検察官が起訴(刑事裁判にかけること)できない犯罪をいいます。名誉毀損罪・侮辱罪・器物損壊罪・過失傷害罪などがその例です。

親告罪の場合、起訴される前に告訴が取り消されると、検察官は起訴できなくなります(告訴の取消しは公訴の提起があるまで可能です。刑事訴訟法237条1項)。一方、不同意性交等罪では、告訴が取り消されても、被害届が取り下げられても、それだけで起訴の可能性が消えるわけではありません。起訴するかどうかは、事件の内容や被害者の意向などを踏まえて検察官が判断します。

なお、被害届は被害にあった事実を警察に知らせる書類で、犯人の処罰を求める意思表示までは含みません。この点で告訴とは区別されます。

2017年の改正で強姦罪が非親告罪になった経緯

かつての強姦罪(いわゆるレイプを処罰していた罪)は、刑法180条により、告訴がなければ起訴できない親告罪とされていました。性犯罪を厳罰化した2017(平成29)年7月13日施行の刑法改正で強姦罪が強制性交等罪に改められた際にこの規定が削除され、告訴の有無にかかわらず起訴できる罪になっています。親告罪のままでは、処罰を求めるかどうかの判断を被害者自身が背負うことになり、それが大きな精神的負担になっていると指摘されていたためです。2023年の改正で不同意性交等罪に改められた後も、非親告罪であることに変わりはありません。

2017年の改正より前、つまり同年7月13日より前の行為についても、改正の時点で既に告訴が取り消されていたなど、法律上告訴をすることができなくなっていた事件を除き、改正後は告訴がなくても起訴できるとされています(平成29年法律第72号附則2条2項)。何年も前の出来事だからといって、告訴がなければ処罰されないとは限りません。なお、処罰は行為当時の罪(強姦罪など)で判断されるため、2023年の改正で広がった不同意性交等罪の処罰範囲が過去の行為に及ぶわけではありません。これに対し、公訴時効の期間を延ばした刑事訴訟法の改正部分は、刑法の改正より早く公布日の2023年6月23日に施行されており、その時点でまだ時効が完成していなかった事件にも適用されます。反対に、その時点で既に時効が完成していた事件は起訴されません(令和5年法律第66号附則5条)。

わいせつな行為を処罰する不同意わいせつ罪も、不同意性交等罪と同じく親告罪ではありません。

あわせて読みたい:

不同意性交等罪とは?成立する場合と刑罰

不同意性交等罪は、いわゆる同意のない性行為を処罰する罪です。ここでは、どのような場合に成立するのかと、科される刑罰・公訴時効を順に説明します。

どのような場合に不同意性交等罪になるか

この罪は、相手が同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが難しい状態にさせて、あるいはそうした状態にあることに乗じて、性交等をしたときに成立します(刑法177条1項)。ここでいう「性交等」には、性交だけでなく、肛門性交や口腔性交、さらに陰茎以外の身体の一部や物を膣・肛門に挿入するわいせつな行為も含まれます。たとえば、酒に酔って意識がはっきりしない相手と性交した場合や、職場の上司という立場を背景に、断れば不利益を受けると部下が不安に感じている状況で性交した場合などが、処罰の対象になりえます。

同意しない意思を形成・表明・全うすることが難しい状態を生む原因として、刑法177条1項が引用する同法176条1項は次の8つを挙げています。これらに類する行為や事由も対象です。

  • 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと
  • 心身の障害を生じさせること又はそれがあること
  • アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること
  • 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること
  • 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと
  • 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること
  • 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること
  • 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること

このほか、わいせつな行為ではないと誤信させたり、人違いをさせたりして性交等をした場合(刑法177条2項)や、16歳未満の相手と性交等をした場合(相手が13歳以上16歳未満のときは、行為者が5歳以上年上である場合に限ります。同条3項)も処罰の対象です。婚姻関係の有無は問われないため、夫婦の間であっても成立しえます。

18歳未満の子どもを現に監護する親などが、監護者であることの影響力に乗じて性交等をした場合は監護者性交等罪(刑法179条2項)となり、不同意性交等罪と同じ刑で処罰されます。この罪も親告罪ではありません。

暴行や脅迫を用いる場合が中心だった強制性交等罪と比べると、不同意性交等罪で処罰される範囲は広がっています。成立要件や旧強制性交等罪との違いを詳しく知りたい方は「不同意性交等罪とは?旧強制性交・強姦罪との違いや構成要件」をご覧ください。

不同意性交等罪の刑罰と公訴時効

不同意性交等罪の刑は「5年以上の有期拘禁刑」と重く、罰金刑は定められていません。刑の全部について執行猶予(一定期間、刑の執行を見合わせる制度)が認められるのは、3年以下の拘禁刑が言い渡される場合に限られます(刑法25条1項)。そのため、有罪となった場合、刑を減軽する事情がなければ執行猶予はつかず、実刑となります。なお、拘禁刑は懲役と禁錮を一本化した刑罰で、2025(令和7)年6月1日から導入されています。

公訴時効(犯罪から一定期間が過ぎると起訴できなくなる制度)は、不同意性交等罪の場合15年と定められています(刑事訴訟法250条3項2号)。時効の起算点や、被害者が18歳未満だった場合の扱いは「不同意性交等罪(旧強制性交等罪・旧強姦罪)の時効は15年です」で解説しています。

不同意性交等罪が非親告罪でも示談が重要な理由

不同意性交等罪は親告罪ではなく、告訴がなくても起訴されるとはいえ、被害者と示談できているかどうかは、起訴するかどうかや刑の重さを決める場面で重視される事情の一つです。

示談が成立すると不起訴や早期釈放の可能性が高まる

検察官は、犯罪の軽重や情状、犯罪後の情況などから訴追の必要がないと判断すれば、起訴しないことができます(刑事訴訟法248条)。実務では、被害者の処罰感情や被害回復の状況がこの判断で重く見られます。示談が成立し、被害者が加害者を許す意思(宥恕)を示していれば、起訴猶予(犯罪の疑いがあっても、事情を考慮して起訴を見送ること)による不起訴処分となる可能性が高まります。不起訴で終われば、前科は付きません。

示談は身柄拘束の面でも意味を持ちます。不同意性交等罪は法定刑が重いうえ、被害者に接触して供述に影響を与えるおそれがあるとみられやすく、逮捕され、そのまま勾留(逮捕に続く身柄拘束)されることも少なくありません。勾留がさらに延長されると、起訴するかどうかが決まるまでに、逮捕から最長で23日間拘束されることがあります。捜査の早い段階で示談が成立すれば、被害者への働きかけのおそれが小さいと評価されやすくなり、勾留を避けられたり早めに釈放されたりする可能性が高まります。身柄拘束が長引かなければ、勤務先や家族に事件を知られるリスクも抑えやすくなります。

不同意性交等罪の示談で支払う示談金の相場や交渉の流れについては「不同意性交(強制性交・強姦)の示談金相場と流れ・メリットを解説」をご参照ください。

起訴後も示談は刑の減軽や執行猶予につながる

起訴された後であっても、示談の成立は裁判で被告人に有利な事情として扱われます。不同意性交等罪の刑の下限は5年の拘禁刑ですが、犯罪の情状に酌量すべきものがあれば刑を減軽することができ(刑法66条)、減軽されると刑の下限は2年6月になります(刑法68条3号)。3年以下の拘禁刑が言い渡されれば、執行猶予がつく可能性が出てきます。示談の成立や被害弁償、真摯な反省の態度は、こうした量刑の判断で考慮される事情です。

不同意性交等罪で執行猶予がつく具体的な条件や実刑との分かれ目については「不同意性交等罪(強姦)は懲役実刑確定?執行猶予はつく?」で詳しく解説しています。

不同意性交等罪の示談交渉を弁護士に依頼するメリット

不同意性交等罪の疑いを否認(疑われている事実を認めないこと)している場合でも、示談をどう扱うかは弁護士に相談できます。「同意があったと思っていた」「相手の主張と事実が違う」という場合は、示談を急ぐより先に、取調べにどう臨むかを決めておく必要があります。事実と異なる内容の供述調書(取調べでの話を捜査機関がまとめた書面)に署名してしまうと、後の裁判でそれを覆すのは簡単ではないからです。弁護士は、当時の会話や前後の連絡の記録など、同意をうかがわせる事情を確認したうえで、否認を貫くのか、示談を並行して進めるのかを依頼者と一緒に検討します。

示談交渉を弁護士に任せることには、次のようなメリットがあります。

被害者の連絡先がわからなくても交渉の糸口をつかみやすい

不同意性交等罪の示談で最初の壁になりやすいのが、被害者の連絡先がわからないケースや、被害者が「加害者とは一切関わりたくない」と強く拒んでいるケースです。性犯罪の性質上、被害者が加害者本人やその家族に連絡先を教えることはまずありません。弁護士であれば、加害者本人には伝えないことを前提に、捜査機関を通じて被害者の意向を確認してもらい、了承が得られれば連絡先を教えてもらえる場合があります。

また、加害者側が自分で連絡を取ろうとすると、被害感情をさらに害して交渉が途絶えたり、証拠隠滅や被害者への働きかけを疑われて逮捕のリスクを高めたりしかねません。第三者である弁護士が間に入ることで、被害者の不安を和らげ、落ち着いて話し合える場をつくることができます。

弁護士は、被害者の気持ちに配慮した言葉選びや連絡の間隔にも気を配りながら交渉を進めます。その結果、話し合いに応じてもらえる見込みが高まり、示談成立までの期間も短くしやすくなります。

宥恕条項を入れた示談書で処分に反映させやすくなる

不同意性交等罪の示談は、お金を支払えば終わるものではなく、合意の中身が刑事処分に有利に働く形になっている必要があります。弁護士に依頼すれば、同種事件の解決例などを踏まえた妥当な示談金を提示できます。当事者同士の交渉では、被害者側から相場を大きく超える金額を求められたり、加害者側の提示額が低すぎて話し合いが決裂したりすることが少なくありませんが、弁護士が間に入ればこうした事態を避けやすくなります。

見落とせないのが、示談書に何を書くかです。被害者が加害者を許し、これ以上の処罰を望まないという内容(宥恕条項)を記載した示談書を検察官や裁判官に提出できれば、不起訴処分の獲得や刑の減軽につながりやすくなります。事件のことを第三者に話さないと互いに約束する条項(口外禁止条項)を加えておけば、周囲に事件が広まるのを防ぐ効果も期待できます。

被害者が示談金の受け取りには応じても許すことまでは拒んだ場合や、示談自体がまとまらなかった場合でも、弁護士は謝罪や被害弁償に向けて尽くした経過を報告書にまとめて提出し、情状として考慮するよう求める弁護活動を行えます。

親告罪ではない不同意性交等罪の事件は早めに弁護士へご相談ください

親告罪にあたらない不同意性交等罪では、被害者が告訴を取り消したとしても、それだけで起訴を免れられるわけではありません。一方で、被害者と示談して許しを得られれば、起訴が見送られたり、裁判で刑が軽くなったりする余地が生まれます。

性犯罪の示談交渉は、被害者の強い拒否感から当事者同士で進めることが難しく、連絡先すら分からないまま行き詰まることも少なくありません。弁護士が間に入れば、被害者の心情に配慮しながら話し合いを進め、宥恕条項を盛り込んだ示談書によって処分への反映を目指せます。

警察から呼び出しを受けている方、被害者側から示談の申し入れがあった方、ご家族が逮捕されてしまった方は、この先どうなるのかという不安で落ち着かない日々を過ごしていることと思います。不同意性交等罪は法定刑が重く、対応が遅れるほどとれる手段は限られていくため、できるだけ早い段階で弁護士にご相談ください。

当事務所は、不同意性交等罪をはじめとする性犯罪事件について多くの解決実績を持っています。依頼者の不利益を最小限に抑えるため、弁護士が迅速に動き、全力を尽くします。家族や勤務先に事件が広まらないよう配慮しながら、被害者との示談交渉、取調べへの助言、逮捕後の早期釈放に向けた活動など、状況に応じた弁護活動にあたります。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

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