- 「ネットの掲示板で”死ね”と書き込みされた…」
- 「学校の友達のグループLINEで”自殺しろ”と書かれた…」
- 「”死ね”という言葉は脅迫罪にならないのだろうか…逮捕してもらえないのだろうか…」
こういった疑問をお持ちではないでしょうか?
そこでこの記事では、脅迫・恐喝被害に強い弁護士が、「死ね」という言葉が脅迫罪やその他の犯罪に該当するかどうか、わかりやすく解説していきます。
およそ3分で簡単に読めますので、ネットの掲示板やブログ、SNS、メール等で「死ね」「自殺しろ」と誹謗中傷を受けた方は最後まで読んでみてください。
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「死ね」は脅迫罪に当たる?
脅迫とは、「あなた」あるいは「あなたの親族」の生命、身体、自由、名誉又は財産を害することを言うこと(害悪の告知すること)、をいいます。例えば、「殺す」という言葉は生命に対する害悪の告知になりますので脅迫罪が成立します。
≫これは脅迫罪になる言葉?ならない言葉?強要罪・恐喝罪と何が違う?
しかし、「死ね」という言葉は、あくまでもアナタに自発的に死ぬよう促しているだけであって、能動的にアナタの生命に危害を加えることを告知する「殺す」とは異なります。そのため、「死ね」という相手の発言は、基本的には脅迫罪に当たりません。
「死ね」が脅迫罪に当たることもある
「死ね」は基本的には脅迫罪に該当しないとお伝えしましたが、以下の事例ように、ネットに「死ね」と書き込んだことで書類送検や逮捕されたケースもあります。
2019年6月、舌がん闘病中のタレント・堀ちえみ(52才・写真)のブログに中傷コメントを書き込んだ50代主婦が、脅迫容疑で書類送検された。女性は堀のブログに繰り返し「死ね」などと投稿。
書類送検後も「“殺す”とは書いていない。“死ね”でも脅迫になるんですか?」などと発言。
人気漫画「ONE PIECE」の作者、尾田栄一郎さん(34)に「死ね、死ね、死ね」などと書いたメール100通を送り付けたとして、警視庁武蔵野署は9日までに、東京都町田市の無職・福重智子容疑者(27)を脅迫の疑いで逮捕した。福重容疑者の夫が以前、尾田さんの事務所で働いていたが解雇され、そのことを逆恨みしていたという。
スポーツ報知
たしかに、繰り返し「死ね」と言われることで、「発信者は私に死んで欲しいと本気で思っている」「それほどまでに私に憎しみを抱いている」「いつか殺されるのでは」という考えに被害者が至ってもおかしくないでしょう。しかも被害者が著名人、あるいは、発信者と知り合いであるようなケースでは、比較的容易に居場所を特定される立場にあるわけですから、殺害されうる事態が現実味を帯びてきます。
このように、被害者の身元特定が容易な状況において繰り返し「死ね」と発言することは、一般人が畏怖するに足りる害悪の告知であると考えられるため脅迫罪が成立する可能性もあります。
ただし、「死ね」という言葉は、被害者に対し積極的に加害行為を示すものではないことから不起訴処分(刑事裁判にかけられないこと)となることがほとんどでしょう。実際に上記2つの事例でも不起訴処分となっております。
なお、2ちゃんねるで「さっさと死ね」「とっとと死ね」など1ヶ月におよそ13回投稿された会社経営者が、投稿内容が脅迫罪、名誉棄損罪、業務妨害罪、侮辱罪等に当たるとして起こした慰謝料請求の民事裁判の事例があります。裁判所は、脅迫罪、名誉棄損罪、業務妨害罪の成立は否定したものの、「死ね」という言葉は不法行為を構成し人格権を侵害しているとして侮辱罪(刑法231条)が成立すると認めています(東京地方裁判所平成13年2月8日)。
「死ね」は自殺教唆罪、幇助罪に問われる可能性も
「死ね」「死んでしまえ」などと自殺を迫った場合は自殺教唆罪、自殺できる場所や方法を教えたり実際に自殺を手助けすれば自殺ほう助罪(両者を合わせて「自殺関与罪」といいます)という罪が成立する可能性があります。
(自殺関与及び同意殺人)
第202条
人を教唆し若しくは幇助して自殺させ、又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は、6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する。
自殺関与罪の教唆とは自殺する意思がない人に自殺をそそのかす、幇助とは自殺する意思がある人の自殺を容易にするという意味です。自殺教唆罪が成立するケースとして実際に起きた以下のような事件があります。
交際相手の女性に携帯電話から「死ねよ」などとメッセージを送り、飛び降り自殺させたとして、警視庁三田署は21日までに、川崎市中原区木月住吉町の慶応大3年、渡辺泰周容疑者(21)を自殺教唆の疑いで逮捕した。
逮捕容疑は昨年11月8日夜、交際していた慶応大3年の女子学生(当時21)に対し、無料通信アプリLINE(ライン)で「手首切るより飛び降りれば死ねるじゃん」などと送り、翌日朝、女性を港区のマンション8階の自室から飛び降り自殺させた疑い。
自殺幇助罪が成立するケースとしては、自殺を考えている人に、「楽に死ねる方法があるよ」「誰にも遺体が発見されないおススメの樹海の場所があるよ」などと自殺の方法や場所を教えたり、自殺の手伝いをするなど、自殺する意思があった人の自殺を容易にしたような場合です。
≫「自殺してやる」は脅迫罪に当たる?弁護士がわかりやすく解説
また、ごく稀なケースではありますが、自殺を阻止する法的義務を負っているにもかかわらず、「別れるなら死んでやる」と言われた際、自殺を阻止しなかったという場合にも自殺幇助罪が成立する可能性があります。
いずれの場合でも、幇助行為と自殺との間に因果関係が認められるかどうかきちんと検討されなければなりません。
まとめ
「死ね」という発言は、基本的には脅迫罪に当たりませんが、それが繰り返し行われるなど悪質性が高い場合には脅迫罪が成立する余地があります。また、「死ね」という発言で本当に相手が自殺した場合は、自殺教唆罪・自殺幇助罪が成立することもあります。
とくに男女トラブルの場面では、ときにお互いが感情的になって「死ね」、「死んでやる」などの極端なやり取りに発展しがちです。しかしどんなに感情的になろうとも、「死ね」「自殺してしまえ」と言っていいはずがありません。言われた相手が本当に自殺してしまう最悪の事態に発展することも十分ありますし、仮に自殺しなかったとしても、言われた本人は一生消えることのない心の傷を負うことになります。
もし「死ね」と言われて深く傷ついている方がこの記事を読まれているとしたら、人に対して平気で「死ね」と言える人物こそ生きるに値しない人間です。加害者に法的責任をとらせて心の整理をつけたいのであれば、警察に被害申告に行きましょう。
≫恐喝・脅迫の被害届を出す3つのメリットと出し方をわかりやすく解説
警察が事件として扱ってくれないのであれば、民事で慰謝料請求する方法もありますので、その場合は当法律事務所までお気軽にご相談ください。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守ります。
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