暴行罪の時効は何年?刑事・民事の時効を弁護士が解説

「あのとき手を出してしまったが、暴行罪の時効はもう過ぎているのだろうか」。先にお答えすると、暴行罪の時効は、刑事も民事も原則3年です。刑事の3年は、暴行行為が終わった日から数えます。

ただし、相手がケガをしていた場合は話が変わります。罪名が傷害罪になり、刑事は10年、民事は5年に延びます。

この記事では、暴行事件の解決実績が豊富な弁護士が、次の点について解説します。

  • 暴行罪の時効は何年で、いつから数えるのか
  • 3年が10年に延びてしまうケース
  • 暴行罪で逮捕されたあとはどうなるのか
  • 時効を待たずに今できること

お読みいただくことで、ご自身の事件の時効が何年で、どこで計算が狂うのかが分かります。

なお、暴行事件でお悩みの方は、全国どこからでもご利用いただける当事務所の無料相談へお気軽にご連絡ください。

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暴行罪の時効は何年?刑事・民事それぞれの年数

暴行罪の時効には2種類あります。国が起訴できる期限である刑事の時効と、被害者が損害賠償を請求できる期限である民事の時効です。年数も、数え始める日も別々です。

時効の種類 期間 いつから数えるか
刑事の時効(公訴時効) 3年(ケガがあれば傷害罪となり10年) 暴行行為が終わったとき
民事の時効(消滅時効) 3年(ケガがあれば5年) 被害者が損害と加害者を知ったとき
民事の時効(上限) 20年 暴行があったとき

刑事の時効(公訴時効)は3年

暴行罪の公訴時効は3年です。この3年が過ぎると、検察官はその事件について起訴できなくなります。

公訴時効の年数は罪名ごとに個別に決まっているわけではなく、その罪の法定刑の重さで決まります。暴行罪の法定刑のうち最も重いのは2年の拘禁刑(懲役・禁錮を一本化した刑罰)です。長期が5年未満なので、暴行罪は「長期5年未満の拘禁刑又は罰金に当たる罪」にあたり、公訴時効は3年と定められています(刑事訴訟法250条2項6号)。

第二百五十条 (略)

② 時効は、人を死亡させた罪であつて拘禁刑以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。

六 長期五年未満の拘禁刑又は罰金に当たる罪については三年

出典:e-Gov法令検索

公訴時効が完成しても、それを知らせる通知が届くしくみはありません。起算日から自分で数えて判断することになります。すでに3年前後が経過している方も、後述するとおり、相手のケガの有無によっては10年の時効が進んでいる可能性があります。

公訴時効はいつから数える?起算点は暴行行為が終わったとき

公訴時効が進み始めるのは、犯罪行為が終わったときです(刑事訴訟法253条1項)。暴行罪でいえば、殴る蹴るといった行為をやめた時点です。

被害者が警察に相談した日でも、警察が捜査を始めた日でもありません。

日付をまたいだ場合は、行為が終わった側の日が起算点になります。深夜23時55分に暴行を始め、0時を過ぎて行為が終わったのであれば、起算点は翌日です。

共犯者がいる場合は、最後の1人の行為が終わったときから、全員について時効の期間を数えます(同条2項)。自分は早い段階で手を引いていたつもりでも、他の共犯者が続けていれば、その分だけ起算点は後ろにずれます。

あとから傷害罪になれば時効は10年に延びる

暴行罪の時効を待とうとお考えの方が最も見落としやすいのは、あとから罪名が切り替わる可能性です。

暴行罪は、相手にケガを負わせるに至らなかった場合の罪です。暴行によって相手がケガをしたと認められる場合は、暴行罪ではなく傷害罪(刑法204条)にあたります。傷害罪の法定刑は、50万円以下の罰金または15年以下の拘禁刑です。拘禁刑の長期が15年なので「長期15年以上の拘禁刑に当たる罪」にあたり、公訴時効は3年ではなく10年と定められています(刑事訴訟法250条2項3号)。

問題は、この切り替わりが事件直後に確定するとは限らないことです。その場では「大丈夫」と言われても、後日、被害者が診断書を取って警察に提出すれば、罪名が傷害罪として扱われることがあります。打撲や内出血だけでなく、頭痛や吐き気、事件をきっかけとした精神的な不調も、傷害と評価される場合があります。

つまり、自分では暴行罪だと思って3年を数えていても、実際には10年の時効が進んでいた、ということが起こり得ます。相手がケガをした可能性が少しでも残るなら、3年で安心するのは早すぎます。

傷害罪の時効は「傷害罪の時効は10年|公訴時効と民事の時効を解説」で詳しく解説しています。

民事の時効は原則3年、上限は20年

暴行罪の刑事の時効が完成しても、被害者からの損害賠償請求まで消えるわけではありません。慰謝料などの請求は、刑事とは別に民事の時効が問題になります。

暴行の被害者が持つ損害賠償請求権は、被害者またはその法定代理人が損害と加害者の両方を知ったときから3年で消滅時効にかかります(民法724条1号)。

ただし、「人の生命又は身体を害する不法行為」については、この3年が5年に読み替えられます(民法724条の2)。暴行によって相手がケガをした場合は、この5年が適用されます。ケガに至らない暴行がこの5年にあたるかどうかは、条文上はっきりしていません。3年で確定と考えず、長いほうの5年を前提にしておくほうが安全です。

起算点が「知ったときから」である点にも注意が必要です。見知らぬ相手に暴行を受け、被害者が加害者を特定できないままであれば、カウントはそもそも始まりません。

この場合の歯止めが、暴行があったときから20年という上限です(民法724条2号)。加害者が誰か分からないまま20年が過ぎれば、請求権は消滅します。ただしこの20年も時効なので、途中で加害者が判明して訴訟を起こされれば、その手続が続いている間は時効が完成しません(民法147条)。

なお、民事の時効は期間が過ぎれば自動的に効果が生じるわけではなく、請求された側が時効の完成を主張して初めて支払いを免れます(民法145条)。

請求されるのは、精神的苦痛に対する慰謝料のほか、破れた衣類や壊れた持ち物の弁償、ケガの有無を確かめる診察費用などです。

公訴時効の進行が停止する3つのケース

暴行罪の公訴時効の停止・進行再開の流れ

公訴時効は、次の3つの場合に進行が止まります(刑事訴訟法254条、255条1項)。

  • その事件について起訴されたとき
  • 犯人が国外にいるとき(海外旅行などの一時的な渡航を含む)
  • 犯人が逃げ隠れているため、起訴状の謄本を届けられないとき

ここでいう停止は一時停止です。それまでに進んだ期間はそのまま残ります。

事件から半年後に海外へ渡り、2年間滞在して帰国した場合であれば、その2年間は時効が止まっています。帰国した時点で、残り2年6か月分のカウントが再開します。

1つ目の起訴については、共犯者がいる事件で注意が必要です。共犯者の1人が起訴されると、その裁判が確定するまで他の共犯者についても時効が止まります(刑事訴訟法254条2項)。自分は何も知らされていなくても、時効が進んでいない期間が生じている可能性があります。

暴行罪以外の犯罪の時効は「刑事事件の時効は何年?公訴時効を一覧表で犯罪別に解説」で罪名別に一覧にしています。

暴行罪とは?成立する行為と罰則

自分の行為が暴行罪にあたるのかがはっきりしなければ、数えるべき年数も決まりません。科される刑の重さもあわせて確認しておきましょう。

暴行にあたる行為・あたらない行為

暴行罪は、人に暴行を加えたものの、傷害を負わせるには至らなかった場合に成立します(刑法208条)。ここでいう「暴行」とは、人の身体に対する不法な有形力の行使を指し、殴る、蹴る、突き飛ばす、押し倒すといった行為が典型例です。

相手の身体に直接触れていなくても暴行と評価されることがあります。狭い室内で刃物を振り回す、相手の数歩手前に物を投げつけるといった行為がこれにあたります。室内で太鼓を激しく打ち鳴らす、耳元で拡声器を使って大声を出すなど、音による働きかけが暴行と認められた例もあります。

一方、人ではなく物だけに向けられた有形力の行使は、暴行罪ではなく器物損壊罪の問題になります。暴行罪は故意犯であるため、過失でぶつかっただけの場合も成立しません。

暴行罪と傷害罪の線引きは「暴行罪と傷害罪の違いは?成立要件とどちらが重いかを解説」をご覧ください。

罰則は2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金

暴行罪の罰則は、拘禁刑なら2年以下、罰金なら30万円以下と定められています。ほかに拘留と科料も選択刑として置かれています。拘留は1日以上30日未満の身柄拘束、科料は1,000円以上1万円未満の支払いを命じる刑罰です。

第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

出典:e-Gov法令検索

なお、2025年6月1日に施行された改正刑法により、「懲役」と「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。施行日より前の行為には、経過措置により従前の懲役・禁錮が言い渡されます。

暴行罪で逮捕されたあとはどうなる?

暴行罪の時効を待つかどうかを判断するには、逮捕された場合に何が起きるのかを知っておく必要があります。

逮捕から起訴・不起訴が決まるまでの流れ

逮捕されると、まず警察の段階で最大48時間、身柄を拘束されます。その後、事件は検察官へ送致(送検)され、検察官は24時間以内に勾留(起訴か不起訴かが決まるまで身柄の拘束を続ける手続き)を請求するかどうかを判断します。

勾留が認められると、原則10日間、延長されればさらに10日間の身柄拘束が加わります。逮捕から数えると、起訴・不起訴の判断が出るまで最大23日間にわたって拘束される計算です。

この間は職場にも学校にも行けません。

逮捕後の手続きは「暴行罪で逮捕されたら?逮捕後の流れや刑罰を解説」にまとめています。

暴行事件で逮捕される割合と、不起訴で終わる割合

実際にどのくらいの人が逮捕され、起訴されているのか。令和7年版犯罪白書から実数を確認できます。

令和6年に検察庁が処理した暴行事件の被疑者は18,016人で、このうち11,291人は、その事件では逮捕されていません。逮捕を経たのは残る約37%で、そのうち一部は逮捕後に釈放されています。身柄を拘束されたまま検察庁へ送られた人に限れば、全体の30.9%です。なお、警察の段階で微罪処分(軽微な事件を検察官へ送らずに終える処理)となった事案は、この数字に含まれていません。

処分についても数字が出ています。同白書によると、令和6年の暴行の起訴猶予率は69.3%でした。起訴猶予率とは、起訴された人と起訴猶予になった人の合計に占める起訴猶予の割合を指します。起訴と起訴猶予のどちらかで処分が決まった人のうち、約7割は起訴猶予、すなわち不起訴で終わっているということです。

在宅事件のまま捜査が進むことも、不起訴で終わることも、例外ではありません。そして検察官が起訴猶予とするかどうかは、犯罪の軽重や情状に加えて「犯罪後の情況」も踏まえて判断されます(刑事訴訟法248条)。被害者との示談は、この犯罪後の情況にあたります。つまりこの枠に入れるかどうかは、時効の完成を待つかどうかではなく、事件後の動き方で変わります。

事件から時間が経ってからの逮捕は「暴行罪は現行犯以外でも後日逮捕される?対処法を解説」で解説しています。

暴行罪の時効は待つべき?リスクと今できること

時効の完成を待つという選択には、いくつもの副作用があります。ここでは待つことのリスクと、待たずに取れる2つの手立てを順に見ていきます。

時効の完成を待つリスク

暴行罪の公訴時効の3年は、一見すると待っていれば終わる期間に見えます。しかし、その3年をやり過ごす選択にはいくつもの副作用があります。

第一に、精神的な負担です。いつ警察から連絡が来るか分からない状態が3年続きます。

第二に、待つうちに連絡を絶ってしまうと、それ自体が不利に働きます。警察が被疑者を逮捕するには、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由(刑事訴訟法199条1項)に加えて、逮捕の必要性が認められなければなりません。逃亡のおそれも証拠隠滅のおそれもなく、明らかに逮捕の必要がないと認められるときは、裁判官が逮捕状の請求を却下します(刑事訴訟規則143条の3)。連絡を絶つ、転居して所在が追えなくなる、警察からの出頭の求めに応じない。こうした事実は「逃亡のおそれ」を裏づける材料になります。単に不安を抱えて過ごしているだけの状態と、連絡を断った状態とでは、この点で扱いが変わってきます。

第三に、時効は思ったとおりに進むとは限りません。相手のケガが後から判明して傷害罪になれば時効は10年ですし、出張や旅行で国外にいた期間は進行が止まります。「もう3年経ったはず」という自己判断が外れていた場合、その代償は大きくなります。

逮捕の影響は本人だけにとどまりません。実名で報道されれば社会的信用を失い、勤務先の懲戒処分や、学生であれば退学処分もあり得ます。ご家族が周囲の視線に耐えられず転居を余儀なくされることもあります。起訴されて有罪判決を受ければ、罰金刑であっても前科として記録が残ります。

なお、暴行罪は被害者の告訴がなくても検察官が起訴できる非親告罪です。被害者が告訴していないから安全だ、とはいえません(「暴行罪は親告罪ではなく非親告罪です」参照)。

被害者と示談を成立させる

暴行事件に身に覚えのある方に、時効の完成を待つより先に取り組んでいただきたいのは、被害者への謝罪と示談交渉です。

示談が成立し、被害者から「刑事処罰を望まない」という意思表示(宥恕)を得られれば、検察官が不起訴と判断する可能性は大きく高まります。すでに被害届や告訴状が提出されている場合でも、示談成立を受けて取り下げてもらえることがあり、そうなれば逮捕される可能性は格段に低くなります。

ただし、示談が成立すれば絶対に事件化しない、というものではありません。示談書に被害申告をしない旨を盛り込むことはできますが、それは被害者との約束であって、捜査機関を拘束するものではないからです。第三者が通報していた場合や、警察が現認していた場合には、被害者の意向にかかわらず捜査が進むこともあります。示談は、時効の完成を待つよりも確実にリスクを下げる手段であって、ゼロにする手段ではないとご理解ください。

暴行の被害者は加害者に恐怖感や嫌悪感を抱いていることが多く、加害者本人からの連絡には応じてもらえないのが通常です。応じてもらえた場合でも、相場からかけ離れた金額を求められることがあります。

この点、弁護士が窓口になることで交渉に応じてもらえるケースは多く、暴行事件を扱ってきた弁護士であれば相場を踏まえた条件を提示できます。示談金の相場や進め方は「暴行罪の示談金・慰謝料の相場は?金額の決まり方も解説」をご確認ください。交渉の窓口をどうするかでお悩みの段階でも、当事務所の無料相談をご利用いただけます。

自首を検討する

街中で見知らぬ相手に手を出してしまったなど、被害者の連絡先が分からず示談交渉に入れないケースもあります。このようなケースで、時効の完成を待つ代わりに検討したいのが自首です。

自首をすれば刑が必ず軽くなるわけではありませんが、刑法42条1項は、捜査機関に発覚する前に自首した者について刑を減軽することができると定めています。また、自ら出頭したという事実により、捜査機関が「逃亡や証拠隠滅のおそれは低い」と判断し、逮捕されずに在宅で捜査が進む場合もあります。

もっとも、自首したからといって、逮捕を確実に避けられるとは限りません。事件の内容や時期によっては、出頭したその場で逮捕される可能性もあります。すでに捜査機関が事件と犯人を把握している場合は、法律上の自首にあたりません。

そのため、暴行罪の時効を待つのではなく自首すべきか、するとしてどのタイミングでどう説明するかは、弁護士と相談したうえで決めることをお勧めします。弁護士に依頼すれば、逮捕を避けるための準備を整えたうえで自首に同行してもらえるため、一人で不安を抱えたまま警察署に向かう必要がなくなります。詳しくは「自首に弁護士が同行するメリットと費用|弁護士なしでも大丈夫?」をご参照ください。

暴行罪の時効でお悩みの方は弁護士にご相談ください

ここまで見てきたとおり、暴行罪の時効は相手のケガの有無で大きく変わります。ケガがなければ刑事は3年、ケガがあれば罪名が傷害罪に変わり10年です。民事は3年か5年で、ケガがある場合は5年です。海外に滞在していた期間があれば、刑事の時効はその分だけ完成が先に延びます。年数の計算にこれだけ不確実な要素が残る以上、時効の完成を待つことは安全な選択とはいえません。

被害者との示談交渉や自首による早期の対応が、逮捕を避け、前科がつく事態を防ぐための現実的な手段です。暴行の起訴猶予率は約7割で、その判断では被害者との示談が「犯罪後の情況」として考慮されます。事件後の動き方で結果は変わります。

「いつ逮捕されるのか」と考えながら日々を過ごすことは、想像以上に消耗します。すでに被害届が出されている場合はもちろん、まだ事件化していない段階であっても、早く動いた方が取れる手段は多く残っています。

当事務所は暴行事件の示談交渉と自首同行に豊富な実績があり、ご依頼者の不利益を最小限に抑えるため弁護士が迅速に動きます。全国どこからでもご利用いただける無料相談を設けておりますので、お一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

若井亮 弁護士

若井 亮

代表弁護士

弁護士法人若井綜合法律事務所
東京弁護士会所属(登録番号:47827)

弁護士紹介ページ

刑事事件の弁護に注力する法律事務所の代表弁護士。逮捕回避・早期釈放・不起訴獲得・示談交渉など、被疑者・被告人の権利を守るための迅速な弁護活動に豊富な実績を持つ。痴漢・盗撮・暴行傷害・薬物事件・性犯罪など幅広い刑事事件に対応し、24時間体制で依頼者とそのご家族を全力でサポートしている。

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