殺人予備罪とは、人を殺す目的でその予備をした場合に成立する犯罪です(刑法第201条参照)。殺人予備罪が成立すると、「2年以下の懲役」に処せられることになります。
(予備)
第二百一条 第百九十九条の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。ただし、情状により、その刑を免除することができる。(殺人)
第百九十九条 人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。刑法 | e-Gov法令検索
この記事では、刑事事件に強い弁護士が、殺人予備罪の構成要件(成立要件)について解説していきます。
気軽に弁護士に相談しましょう |
|
殺人予備罪の構成要件
「予備」行為とは
「殺人予備」とは、殺人行為を可能・容易にするために「準備する行為」を指します。
具体的には以下のような行為が殺人予備行為に該当します。
- 刃物や銃器や毒薬などの凶器を入手する行為
- 自動車やバイクなどの移動手段や共犯者との連絡手段を準備する行為
- 被害者の自宅などの犯行現場を下見する行為
- 犯行計画を立案する行為 など
殺人の目的とは
殺人予備罪は殺人の目的を有しているという主観的な要件が必要です。
この点、自分自身が殺人を犯す意思を有していることが必要か、他人が殺人を犯すことの準備行為であることを認識していればよいのかという点が問題となります。
この点が問われた裁判例の中には、自ら殺人を犯す目的までは必要なく他人が殺人を犯すことの準備行為であることを認識していれば「殺人の目的」が認められると判断したものがあります。
つまり他人が殺人をする準備に協力して凶器などを準備した場合であってもそのことを認識していれば、本人に殺意がない場合でも殺人予備罪が認定されるということです。
殺人予備罪の中止犯
自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽または免除するとされています(刑法第43条但書き参照)。これを中止犯や中止未遂といいます。中止犯の場合には刑が必ず減軽・免除されます。
(未遂減免)
第四十三条 犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。刑法 | e-Gov法令検索
それでは未遂より前段階の予備行為の場合にも、中止未遂減軽・免除が認められるのか否かについては、明確な規定がないため問題となります。
この点古い判例(大審院判決大正5年5月4日)では、予備罪の場合に自ら意思で犯罪を中止したとしても、未遂犯と同様に刑の減軽または免除を必ず認めるわけではないと判断したものがあります。
しかし、予備行為よりも進んで実行に着手した未遂犯ですら中止犯のときは必ず刑の減軽・免除されるのだから、それ以前の予備行為を中止した場合にも必用的減免を認めるべきではないかと考える学説も有力です。
気軽に弁護士に相談しましょう |
|