結論から言いますと、強制わいせつ罪の刑事事件の時効(公訴時効)は7年です。強制わいせつ事件を起こしてから数週間~数か月~数年以上経過してから逮捕されることもあります。
この記事では、強制わいせつに強い弁護士が、強制わいせつの公訴時効に加え、被害者の加害者に対する損害賠償請求権の時効(民事の時効)についても解説していきます。
また、時効の完成を待つリスクや、時効を待たずにすべきことについても合わせて解説していますので最後まで読んでみて下さい。
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目次
強制わいせつ・準強制わいせつとは
強制わいせつ罪の時効についてみていく前に、強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪の内容を簡単に確認しておきましょう。
強制わいせつ罪とは
強制わいせつ罪は、暴行又は脅迫を手段としてわいせつな行為に及んだ場合に成立する罪で、刑法176条に規定されています。法定刑(法律で定められた刑の種類や刑期)は6月以上10年以下の懲役です。かつては、被害者の告訴がなければ起訴されない親告罪でしたが、法改正により非親告罪となっています。
準強制わいせつ罪とは
準強制わいせつ罪は、人が心神喪失又は抗拒不能状態であることを利用して、あるいは人を心神喪失又は抗拒不能状態にさせて、わいせつな行為に及んだ場合に成立する罪で、刑法178条第1項に規定されています。法定刑は強制わいせつ罪と同じです。準強制わいせつ罪も非親告罪です。
強制わいせつ罪の時効は?
では、ここからは刑事上の時効や強制わいせつ罪などの各罪の時効について詳しくみていきましょう。
時効とは?
刑事上の時効とは、正確には公訴時効といいます。公訴とは起訴とほぼ同じ意味で、検察官が刑事裁判にかけることをいいます。したがって、公訴時効とは、犯罪行為が終わった後、一定の時効期間が経過すると検察官の公訴権が消滅する、すなわち、起訴されず刑事裁判にかけられないという法制度のことをいいます。
刑事事件の時効期間
前述のとおり、時効の効果が生じるのは、犯罪行為が終わった後、一定の時効期間が経過してからです。時効期間は、以下のように法律で定められています。時効期間は各罪の法定刑によって異なります。法定刑が重たいほど時効期間は長くなります。
第二百五十条 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については三十年
二 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については二十年
三 前二号に掲げる罪以外の罪については十年
② 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年
各罪の時効期間
以上の時効の知識を前提に、ここからは強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪、強制わいせつ致死傷罪の時効期間についてみていきましょう。
強制わいせつ罪の時効期間
まず、強制わいせつ罪は「人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪」にあたることから、刑事訴訟法第250条第2項が適用されます。また、前述のとおり、強制わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の懲役であることから、「長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪」にあたり、同項4号が適用されます。したがって、強制わいせつ罪の時効期間は7年となります。
準強制わいせつ罪の時効期間
準強制わいせつ罪も「人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪」にあたり、刑事訴訟法第250条第2項が適用されます。また、前述のとおり、準強制わいせつ罪の法定刑と強制わいせつ罪の法定刑は同じであることから、準強制わいせつ罪にも同項4号が適用されます。したがって、準強制わいせつ罪の時効期間は7年となります。
強制わいせつ致死傷罪の時効期間
強制わいせつ致死傷罪の時効期間は人を死亡させたか、負傷させたかで異なります。
人を死亡させた場合に成立する強制わいせつ致死罪の法定刑は無期又は3年以上の懲役ですから、「人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの」で、かつ、「無期の懲役又は禁錮に当たる罪」にあたりますから、刑事訴訟法第250条第1項第1号が適用され、強制わいせつ致死罪の時効期間は30年となります。
一方、人を負傷させた場合に成立する強制わいせつ致傷罪の法定刑も無期又は3年以上の懲役ですが、「人を死亡させた罪であって禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪」にあたり、かつ、「無期の懲役又は禁錮に当たる罪」にあたりますから、刑事訴訟法第250条第2項第2号が適用され、強制わいせつ致傷罪の時効期間は15年となります。
強制わいせつの民事の時効は?
時効には、刑事上の時効(公訴時効)のほかに民事上の時効があります。民事上の時効は、一定期間を経過すると権利を取得する取得時効と権利が消滅する消滅時効があります。このうち、犯罪を犯した場合に関係する時効は消滅時効です。
加害者のわいせつな行為という不法行為によって損害を被った被害者は、加害者に対して損害の賠償を求めることができる権利を取得します。民法という法律では、この権利の消滅時効の期間を、被害者が損害及び加害者を知ったときから3年(または不法行為のときから20年)と定めています。そのため、強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪の消滅時効の期間は3年(または20年)となります。
また、人を死亡させたり、負傷させた場合の消滅時効の期間は5年と定められていますから、強制わいせつ致死傷罪の消滅時効の期間は5年となります。
時効の完成を待たずに示談すべき理由
強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪を犯してしまった場合、その後はどのように対処すべきでしょうか?
時効の完成を待つリスク
まず、運よく現行犯逮捕されなかったからといって、時効が完成することを待つのは賢明な判断とはいえません。
時効が完成するまでの間、あなたは罪を犯したという負い目やいつ逮捕されるかわからないという不安を抱えながら、肩身の狭い生活を送らなければいけません。生きた心地はしないでしょう。
また、万が一警察に事件の被疑者と特定された場合、逃げ回っていた事実が「逃亡のおそれが高い」と判断され、逮捕される可能性が非常に高くなります。
逮捕された場合のデメリット
逮捕されると釈放されるまでは社会と隔離した生活を送らざるをえません。肉体的にも精神的にも大きな負担です。逮捕は人々に大きなインパクトを与える出来事ですから、場合によってはニュースやインターネット上で実名報道される可能性もあります。報道されると逮捕されたことが周囲に知れ渡り、それまで積み上げてきた人間関係や社会的な評価・信用が一気に崩れ落ち、社会復帰後の生活を立て直すことが難しくなるかもしれません。
示談するメリット
以上の時効の完成を待つリスクを回避するには、被害者と示談交渉し、示談を成立させることが方法の一つとして考えられます。警察に発覚する前に示談を成立させることができれば、逮捕の要件である罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれがないと判断され、逮捕を回避できる可能性が格段に高まります。
逮捕を回避できれば、今まで通りの生活を送ることができます。また、示談を成立させることは、その後の刑事処分にもいい影響を与えます。すなわち、不起訴処分となり、刑事裁判や刑罰を受ける可能性が低くなります。刑罰を受けなかった場合は前科もつきません。
示談交渉を弁護士に依頼するメリット
もっとも、示談交渉は弁護士に任せましょう。加害者との直接の示談交渉に応じる被害者はまずいないからです。また、被害者と面識がなく被害者の連絡先等の個人情報を知らない場合、示談交渉を始めるにあたっては、警察から被害者の個人情報を取得する必要がありますが、弁護士であれば被害者の意向しだいで教えていただける可能性があります。弁護士であれば、感情的にならず冷静に示談交渉を進めることができ、後々トラブルとならないよう、適切な形で示談を成立させることが可能です。
弊所では、強制わいせつ罪の時効に怯えて不安な日々を送られている方から多くのご相談をいただいております。強制わいせつの被害者との示談交渉も得意としておりますので、まずはお気軽にご相談ください。親身誠実に、依頼者のために全力を尽くす弁護士が対応します。相談する勇気が解決へと繋がります。
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