在宅起訴とは|在宅起訴になる条件は?【図で流れが分りやすい】

この記事をご覧の方の中にもニュースなどで「〇〇が在宅起訴された」という言葉を耳にしたことがあるかと思います。在宅起訴という言葉は法律用語ではありませんが、刑事事件において日常的に使われる言葉です。今回は、この在宅起訴の意味、流れ、種類、条件、そして最後に在宅起訴された後の留意点について解説します

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1.在宅起訴とは

在宅起訴とは、在宅事件で起訴されることをいいます。また、在宅事件とは身柄拘束(逮捕、勾留)されていない事件のことをいいます。したがって、在宅起訴とは「身柄拘束されていない状態で起訴されること」と言い換えることもできます。

なお、在宅事件に対して身柄拘束されている事件のことを身柄事件といいます。皆さんもニュースなどでよく聞いたことがあるかと思います。

2.在宅起訴までの流れ

1でご説明したとおり、在宅起訴とは在宅事件で起訴されることをいいます。したがって、在宅起訴までの流れを確認するには、在宅事件から起訴までの流れを確認する必要があります。まずは、以下の図で「在宅事件→起訴」までの流れを確認してみましょう。

図中の赤い破線ラインを経由していくと、在宅起訴となります
※ただし、②で逮捕されずに在宅事件となった場合は、途中で身柄事件に切り替わる可能性もあります。

在宅起訴までの流れの図

まず、捜査機関が被害者からの被害届の提出などによって犯罪を認知すると、①様々な証拠を集め、犯罪事実(誰が、いつ、どこで、どのようなことをしたのか、被害はどの程度なのかなど)と被疑者を特定します。それと同時に、被疑者を逮捕するのかしないのか判断し、逮捕しない場合は「在宅事件」として引き続き捜査を進めます。これが「②→⑪」の流れです。

被疑者を逮捕した場合でも、その後、勾留までに釈放され「在宅事件」となることがあります。それが「④→⑪」、「⑥→⑪」、「⑧→⑪」の流れです。また、勾留後に釈放され「在宅事件」となることがあり、それが「⑩→⑪」の流れです。

いずれの流れの場合も、捜査機関による⑪捜査段階であることに変わりはありません。したがって、捜査機関の判断によって呼び出しを受け、警察や検察で取調べなどを受ける可能性は残されています。そして、所用の捜査を経た後、検察官が⑫刑事処分(起訴・不起訴)を下します。

なお、身柄事件の場合、上記図のように身柄拘束に期限がありますから⑪捜査もその期限に間に合うように進められ、基本的に期限の1日~2日前に⑫刑事処分(起訴または不起訴)が決まります。他方、在宅事件の場合、期限がありません。要は、いつ被疑者に呼び出しをかけるか、いつ刑事処分をするかは捜査機関の判断に委ねられています。また、在宅事件の捜査は身柄事件の捜査より後回しにされがちですから、事件によってはいつになっても呼び出しを受けない、刑事処分が決まらないという状態となる可能性があります

3.在宅起訴の種類と在宅起訴後の流れ

起訴には正式起訴と略式起訴があります。在宅起訴の場合も同様です。それぞれで起訴後の流れが異なりますから、以下では分けてご説明します。

⑴正式起訴

正式起訴とは正式裁判を受けるための起訴です。正式裁判とは、裁判官、検察官、被告人(弁護人)が公開の法廷に出席し、証拠書類を提出したり証人に尋問するなどして最終的に被告人が有罪か無罪かを決め、有罪とした場合、どの程度の量刑が適当かを決めるための手続きです。正式起訴後は以下の流れとなります。

正式起訴の流れの図

    正式起訴されると、裁判所から⑭起訴状謄本、弁護人選任に関する照会・回答書などの書類が被告人宛に特別送達されます。「起訴状謄本」には、被告人(起訴された人)がどんな事実のどんな罪で起訴されたが記載されています。検察官から被告人に「起訴しましたよ」と通知することはなく、被告人はこの起訴状謄本を受け取ってはじめて正式に「自分は起訴されたのだ」と知ることになります。「弁護人選任に関する照会・回答書」には弁護人をすでに選任しているのか、していなければ今後弁護人を選任するかしないのかを回答するための書類です。回答書は必要書類とともに裁判所宛に郵送しましょう。

    その後、弁護人が選任されたら、弁護人とともに裁判に向けて⑮打ち合わせを行います。打ち合わせでは主に行うことは尋問のリハーサルです。被告人についてはもちろんのこと、被告人の関係者(ご家族など)に対して尋問が必要な場合は関係者ともリハーサルを行います。

    裁判に向けた打ち合わせ、準備を終えた後、⑯初回の刑事裁判に臨みます。⑬正式起訴からどのくらいの期間で⑯初回の刑事裁判が始まるのかは事件の内容・難易度によって異なります。通常であれば早くて1か月程度ですが、事件によっては1年から2年ほどかかるものもあります。また、刑事裁判を受ける回数も同様のことがいえます。簡易で争いのない事件であれば、2回(判決を含む)、ないしは1回で終わりますが、難易度が高く争いのある事件では数十回から数百回ほどを要する場合ことも稀にあります。そして、最終弁論(弁護人の事件に対する意見)を経た後、⑰判決に至ります。

    ⑵略式起訴

    略式起訴とは略式裁判を受けるための起訴です。略式裁判とは、裁判官が検察官から提出された書面のみを見て、略式裁判することが相当であるかどうかを判断し、相当であると判断した場合は「100万円以下の罰金又は科料」の範囲内で略式命令を出すための手続きです。略式起訴前後の流れは以下のとおりです。

    略式起訴の流れの図

    まず、略式起訴の前に、検察官から⑪略式裁判を受けることに同意するかどうかの確認を求められます。略式裁判では被告人が言い分を言う機会が省略されますから、その利益を放棄するのか事前に確認する必要があるのです。同意する場合は同意書にサインします。

    その後、⑬略式起訴と同時に検察官が選別した書類が裁判所(簡易裁判所)に提出されます。裁判官は検察官から提出された書類を見て、略式裁判することが相当かどうか判断し、相当と判断した場合は罰金又は科料の略式命令を発布します。

    裁判官から略式命令が発布された後は、ご自宅に略式命令謄本が特別送達されます。略式命令謄本には犯罪事実、罪名、罰金額(罰金の命令が出た場合)、科料額(科料の命令が出た場合)などが記載されています。命令の内容に不服がある場合は正式裁判を申し立てることができます。正式裁判を申し立てずに、申し立て期間(略式命令謄本受領の日の翌日から14日)が経過した場合は⑯略式裁判が確定します。

    4.在宅起訴の条件(在宅事件となる条件)

    在宅起訴の条件は在宅事件の条件でもあります。そして、在宅事件の条件は、逮捕されないこと、逮捕・勾留されたとしても釈放されることです。

    ⑴通常逮捕されないこと(緊急逮捕、現行犯逮捕の場合を除く)

    在宅事件の第一の条件は通常逮捕されないことです。

    通常逮捕は罪を犯したと疑うに足りる相当な理由(逮捕の理由)及び逃亡のおそれ・罪証隠滅のおそれ(逮捕の必要性)があると認められる場合に可能となるものです。

    ①逃亡のおそれについて

    逃亡のおそれは「生活が安定しているか否か」、「処罰を免れようとするか否か」から判断されます。

    生活が安定しているか否かの判断の際には「家族関係、職業・職歴、就学状態、居住形態、居住期間、転居歴、適切な身柄引受人・監督者の有無」などの事情が総合的に勘案されます。

    また、処罰を免れようとするかの判断の際には「犯罪の軽重・態様、犯罪に対する認否、前科・前歴・余罪の有無」などの事情が総合的に勘案されます。

    以上から、定職に就いており、前科・前歴がない場合は在宅事件となりやすいといえます。

    ②罪証隠滅のおそれについて

    罪証隠滅のおそれがあるかないかの判断の際も①の処罰を免れようとするか否かで勘案される事情のほか、「共犯者の有無、罪証隠滅の実現可能性、予想される不利益の程度」などの事情も勘案されます。

    以上から、比較的軽微な事案で、被害者の連絡先などを知らず、不起訴処分あるいは罰金刑が予想される場合は在宅事件となりやすいといえます。

    ⑵釈放されること

    逮捕(緊急逮捕、現行犯逮捕された場合を含む)されても、その後釈放されると在宅事件となります

    釈放されるということは、すなわち逃亡のおそれ、罪証隠滅のおそれが認められない、ということを意味します。したがって、釈放するか否かの判断の際にも、前記⑴①、②でご紹介した事情が勘案されます。

    5.在宅起訴された際の留意点

    最後に在宅起訴された際の留意点を解説します。

    ⑴弁護人を選任しよう(正式起訴された場合)

    正式起訴された場合に一番すべきことは弁護人を選任することです。

    軽微な事件であれば弁護人を選任しなくても裁判を開くことは可能です。しかし、裁判に慣れていない一般の方々にとって、刑事裁判を受けることは相当な負担です。また、適格な主張、立証をしない、できないせいで本来無罪であるはずの事件が有罪とされたり、あるいは有罪であるとしても重たい量刑を科されてしまう、というおそれもないとはいえません。

    刑事裁判で有効かつ的確な主張・立証して無罪や執行猶予獲得に繋がるためには弁護人の力が必要不可欠です。

    ⑵正式裁判の申し立てをするかどうか決めよう(略式起訴された場合)

    略式起訴された場合は、略式命令謄本で命令の内容を確認しましょう。そして、不服がある場合は正式裁判申し立てをするかどうかを検討します。申し立てをする方向で行く場合は、申し立て前に、一度弁護士に相談しましょう。申し立てしない場合は、命令に記載された金額を期限までに納付しましょう。納付しないと再び身柄を拘束されることもあります。

    ⑶前科がつく可能性あり(正式起訴、略式起訴共通)

    正式起訴された場合は裁判で有罪とされその後裁判が確定した場合、略式起訴された場合は略式命令が発布され、略式裁判が確定した場合に前科がついてしまいます。このように、在宅起訴でも前科がつく可能性がありますので注意しましょう。

    6.おわりに

    在宅起訴のメリットは身柄を拘束されないという点でしょう。しかし、刑事裁判を受ける、罰金を納付する必要があるなどのことは身柄事件と何ら変わりはありません。在宅事件だからといって安心せず、正式起訴、略式起訴に応じて適切に対処していくことが必要です。

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