刑事事件で弁護士をつけない7つのデメリットとは?
  • 「刑事事件で弁護士をつけないことはできるのだろうか…」
  • 「刑事事件で弁護士をつけないとどうなるのだろう…」

弁護士費用が払えない、あるいは事実関係に争いがないために弁護士をつける必要がないと考える方もいるでしょう。

まずお伝えしますが、どのような事件を起こした場合でも、起訴されるまでは弁護士をつけないという選択が可能です起訴された場合でも、必要的弁護事件(弁護人がいないと開廷できない事件)でない限り、弁護士をつけずに刑事裁判を受けることができます

しかし、弁護士費用が払えない場合でも国選弁護人制度を利用することで、無料で刑事弁護を受けることが可能です。さらに、刑事事件で弁護士をつけないと様々な不利益を被ることになりますので、弁護士をつけることを強くお勧めします

この記事では、

  • 刑事事件で弁護士をつけないデメリット
  • 刑事事件で弁護士をつけない理由が「お金がない」という場合の対処法

などについてわかりやすく解説していきます。

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刑事事件で弁護士をつけないことはできる?

果たして、刑事事件の被疑者として逮捕された場合に、「弁護士をつけない」という選択が可能なのでしょうか。

結論から言うと、どのような事件で逮捕・勾留されたとしても、検察官に起訴されるまでは、弁護士をつけないということは可能です。また、起訴された場合であっても、必要的弁護事件でなければ、弁護士を付けなくても刑事裁判を受けることができます

必要的弁護事件とは、以下に該当する事件のことをいいます。

  • 死刑または無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる事件(刑事訴訟法第289条)
  • 公判前整理手続き若しくは期日間整理手続きを行う場合(同法第316条の4、316条の7、316条の8、316条の28第2項)
  • 公判前整理手続き若しくは期日間整理手続きに付された事件を審理する場合(同法第316条の29)
  • 即決裁判手続きによる事件(同法第250条の23)

以上のような必要的弁護事件では、弁護人がいないときには開廷することができないため、裁判所は、すでに私選弁護人が選任されている場合を除き、職権で国選弁護人を選任することになります。

なお、弁護人は基本的に弁護士の中から選任される必要があります(刑訴法第31条1項)。

必要的弁護事件以外の事件については、弁護人を付けるのは被疑者の権利であって義務ではありません。そのため、被疑者やその家族が弁護人選任のためのアクションを起こさなければ、弁護士が付されないまま放置されることになります。

そもそも刑事事件で弁護士をつけない人はいる?

それでは、実際に刑事事件で弁護士をつけない被疑者はいるのでしょうか。

弁護人のついた事件の割合については、令和5年度の司法統計年報「通常第一審事件の終局総人員―弁護関係別 ―地方裁判所管内全地方裁判所別及び地方裁判所管内全簡易裁判所別」のデータが参考になります。

被告人段階における地方裁判所における刑事弁護人の選任率に関して、2023年における弁護人がついた割合は、約99.3%です。2023年度の簡易裁判所における選任率については約98.1%です。

いずれにおいてもほぼ100%近くの事件において弁護人がつけられていることがわかります

被告人が自ら弁護人を選任しない理由としては、被告人が弁護士費用を支払えないという理由が考えられます。他にも、事実関係に争いがなく、全面的に認めているため弁護人を選任する必要がないと被告人自身が判断した可能性もあります。

もっとも、裁判所が「必要と認めるとき」には、職権で国選弁護人をつけることができるため、被告人自身が国選弁護人の選任を希望しない場合であっても、国選弁護人が選任されるケースも存在しています。

刑事事件で弁護士をつけない7つのデメリットとは

①身体拘束から解放されない

刑事事件の被疑者として警察に逮捕されると、まずは72時間以内に勾留すべきか否かが判断されます。検察官の請求によって裁判所が勾留を決定すると、10日間の身体拘束が続きます。さらに勾留は10日を上限に延長することができるため、最長23日間の長きにわたって身体拘束を受ける可能性があります。

逮捕直後に弁護士に依頼して弁護活動に動いてもらえば、逃亡・罪証隠滅のおそれがないことなどを適切に捜査機関に主張してもらえます。結果として勾留に至る前に釈放されたり、勾留延長されずに釈放されたりする可能性が高まります。

弁護士に依頼しなければこのようなサポートを受けることができないため、身体拘束からの解放が難しくなり、社会の中で生活を送ることができなくなっていまいます。日常生活に大きな支障を来す可能性が高いでしょう。

②被害者との示談交渉ができない

刑事事件に被害者がいる場合には、被害者との示談を成立させることが何よりも重要です。

示談とは、事件について被害者に謝罪し、示談金を支払うことで、被害者から宥恕(ゆうじょ)を受けることをいいます。示談が成立した場合には、示談書の中に宥恕条項が記載されることがあります。宥恕条項とは、「寛大な処分を希望します」「刑事処分は望みません」などといった被害者の意思を記載した条項です。宥恕条項の記載がある場合には、検察官は被疑者に有利な事情として起訴・不起訴を判断することになります。

また、宥恕条項が不存在の場合であっても、示談が成立したことで、一定程度の被害回復が図られ犯罪の違法性が減少したとして、不起訴処分を得られる可能性が高まります。

しかし、弁護士に依頼しない場合には、基本的には被害者との示談交渉は難しくなるため、不起訴処分や刑の減軽を得られる可能性が小さくなってしまいます

③違法な取り調べに対処できない

弁護士をつけずに刑事手続きに臨んだ場合、仮に違法な取り調べに対して適切に対処することは難しくなります。

捜査機関は、被疑者の有罪を根拠づけるために、誘導的な質問をしたり、不利な内容が記載された供述書を作文したりするおそれがあります。また、威圧的・侮辱的な言動によって違法な取り調べが実施されるおそれもあります。被疑者に不利な内容の自白調書を作成されても、後で訂正すれば良いと考える方がいると思います。しかし、そのような調書が捜査の初期に有効に作成されてしまうと、極めて信用性の高い証拠として採用されてしまうリスクが高いです。

上記のような違法な取り調べに対しては、厳重に抗議したり、取り調べを拒否したりする必要があります。まったく事実と異なる供述調書を作成されてしまった場合には、署名・押印さえしなければ証拠として裁判で使用することはできなくなります。

弁護士をつけていない場合には、取り調べに対するアドバイスやサポートを受けることができず、重い刑事処分に向かって進んでいくのを止めることが難しくなります

④必要な手続きはすべて自分で行う必要がある

刑事手続きの当事者には、さまざまな権利が法定されています。

勾留された際には、勾留理由開示請求をすることができます。公訴が提起された場合には、保釈請求をすることができます。これらの手続きは自動的に利用できるものではなく、いずれも当事者が裁判所へ申立てを行う必要があります。申立書などについては、被疑者ないし被告人が自分自身で作成して提出する必要があります。

制度としては本人が作成・提出できる運用にはなっているものの、適切な内容の書面を作成して、適切に提出できるか否かは別問題です。刑事手続きの経験がない法律の素人の方の場合には、手続きを行うのに時間と労力を要する可能性が高いでしょう

これに対して、刑事弁護に精通している弁護士であれば、適時・適切な方法で最善な手続きを活用することができるため、被疑者・被告人の権利・利益が保障されることが期待できます。

⑤不利な立場に陥る可能性が高い

刑事事件で逮捕される多くの人は、犯罪に関する専門的な知識や刑事事件の経験がない一般人です。また、検察や警察には強力な捜査権が認められているのに対して、逮捕された被疑者ができることには限界があります。特に身体拘束を受けている被疑者の場合には、23日間以内に起訴・不起訴が判断されます。

そのため、検察官が起訴の判断をするよりも先に、被疑者に有利な事情を検察官に主張していくことで公訴提起が回避できる可能性があるのです。

弁護士を付けずに手続きをする場合には、弁護士に弁護活動に動いてもらうことができないため、被疑者が不利な立場に陥ってしまう可能性が高くなります

⑥自由に外部の人に接触できない

逮捕されてから72時間は、被疑者は家族を含めて外部の人間と面会することができません。家族が本人から直接事情を聞こうと思っても、接見することはできないのです。

また、72時間を過ぎて勾留段階に入っても、裁判所は検察官からの請求や職権によって接見禁止命令を発することができるため、家族やその他第三者と面会することができないリスクもあります。

このような接見禁止の唯一の例外が弁護士です。

弁護士は逮捕直後であっても、被疑者と接見することができますし、接見禁止命令が出されていたとしても、自由に何度でも被疑者と接見する権利があります。被疑者にとって有利な証拠の収集や刑事弁護活動を行ってもらうためには、弁護士に依頼することが重要となります

⑦起訴されてしまう可能性が高まる

起訴・不起訴を判断する権限を有しているのは検察官だけです。検察官が不起訴の判断をすれば、刑事裁判は開かれず、前科が残ることもありません。

しかし、不起訴処分を獲得するためには、有利な証拠・事実の存在を検察官に主張していく活動が不可欠です。

上記のような弁護活動は、刑事弁護に精通した弁護士でなければ難しいため、弁護士を付けない場合には、起訴されてしまう可能性が高まります

刑事事件で弁護士をつけない理由が「お金がない」という場合は?

各種制度を利用する

資力がないため弁護士に依頼することができないという人は、国選弁護人制度を利用することができます。

国選弁護人制度とは、刑事事件で勾留された被疑者や公訴を提起された被告人が、貧困その他の事由により自ら弁護人を選任できない場合に、本人の請求または法律の規定に基づき弁護人が選任される制度です

国選弁護人が選任される場合は国が費用を負担してくれるため、原則として被疑者・被告人が弁護士の報酬などを支払う必要はありません。国選弁護人制度の利用条件は以下のようなものです。

  • 被告人が「貧困その他の事由により」弁護人を選任することができないとき
  • 被疑者に対して「勾留状が発せられている場合」において、被疑者が「貧困その他の事由により」弁護人を選任することができないとき

また、国選弁護人の選任を請求するためには、資力申告書を裁判所に提出しなければなりません。具体的には資産が50万円未満の人が対象となります。

また、刑事被疑者弁護援助制度を利用することもできます。

刑事被疑者弁護援助とは、逮捕されてから勾留されるまでの最大3日間、身柄拘束された刑事被疑者のために、接見とアドバイス、警察官・検察官との折衝、被害者との示談交渉、その他被疑者段階の刑事弁護活動一般を行う弁護士に、日本弁護士連合会が依頼者に代わって弁護士費用を支払う制度です

刑事被疑者弁護援助が利用できれば、逮捕に引き続き勾留される(勾留状が発せられる・勾留請求される)前の段階でも、費用をかけずに弁護士をつけることが可能となります。

分割払いが可能な法律事務所に依頼する

弁護士費用の金額が事務所によって異なるのと同様に、費用の支払い方法も事務所によって異なります。弁護士費用が割安であるという事務所であっても、刑事事件の私選弁護人を依頼する場合には、少なくとも数十万円の費用はかかります。

一括で支払うのは無理でも、月々少しずつ数か月かけて支払うのであれば依頼したいという方もいるでしょう。

そのため、分割払いが可能な法律事務所やクレジットカード決済に対応している事務所もあります

特に逮捕されておらず、時間的に余裕がある案件では、分割払いでの支払いにも対応してくれる可能性が高まります。弁護士費用の支払い方法については、事務所のホームページに掲載していないところも多いため、実際に依頼を検討している弁護士に直接会って確認することが重要です。

刑事事件で弁護士をつけないと考える理由が「お金がないから」といった方については、刑事事件の弁護士費用が払えない場合に利用できる3つの制度を解説も参考にしてみてください。

まとめ

刑事事件においては、必要的弁護事件でなければ、弁護士をつけなくても手続きを進められる可能性があります。

しかし、被疑者が逮捕された場合には、弁護士による弁護活動を行ってもらわなければ、重い刑事処分に科されてしまうリスクがあります。

経済的な事情で弁護士に依頼するのが難しいという場合にも、さまざまな制度を利用することができます。刑事事件について弁護士に依頼すべきか悩んでいる方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

当事務所では刑事弁護を得意としており、逮捕回避、不起訴・執行猶予の獲得を得意としており実績があります。親身誠実に弁護士が依頼者を全力で守りますので、刑事事件で弁護士をつけるかどうか迷われている方、全力を尽くしてくれる弁護士をお探しの方は、当事務所の弁護士までご相談ください

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