欧米諸国の中には友情や親しみを示す挨拶がわりにハグ(抱きつき行為)をする文化がありますが日本にはありません。
そのため、相手の同意がある場合や、恋人同士など暗黙の同意がある場合を除き、いきなり女性に抱きつくと犯罪に該当するのではと思われるのではないでしょうか。
結論から言いますと、女性にいきなり抱きつく行為は不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)や暴行罪に問われる可能性があります。
以下、刑事事件に強い弁護士が詳しく解説していきます。
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抱きつくだけで犯罪になる?
他人に抱きついた際に問われる可能性のある罪として考えられるのは不同意わいせつ罪と暴行罪です。以下、それぞれわけてみていきましょう。
不同意わいせつ罪
他人に抱きついた場合、不同意わいせつ罪(旧強制わいせつ罪)が成立する可能性があります。
不同意わいせつ罪とは、「同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態にさせる、またはその状態に乗じて」わいせつな行為をした場合に成立する犯罪です(刑法第176条)。
わいせつな行為とは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、普通の人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するような行為を指します。例えば、臀部や性器を触る、胸を揉む、無理やりキスをするなど、一般的な人が持つ通常の性的な恥じらいの感覚を傷つける行為がそれに該当します。
そして、抱きつく行為は、交際相手や日常的にハグを交わすような関係性がない場合、抱きつかれた側が不快や恥ずかしさを感じることが一般的であるため、わいせつな行為に該当する可能性があります。
抱きつく行為が不同意わいせつ罪の原因行為に該当する場合として、以下のような状況が考えられます。
- 暴行または脅迫: 無理やり抱きつく行為が「暴行」に該当する可能性があります。
- 心身の障害: 相手が心身に障害を抱えている場合。
- アルコールまたは薬物の影響: 相手がアルコールや薬物の影響下にある場合。
- 睡眠その他の意識不明瞭: 相手が睡眠中や意識が不明瞭な状態の場合。
- 同意しない意思を形成、表明、全うするいとまの不存在: 不意に抱きつかれた場合。
- 予想と異なる事態との直面に起因する恐怖または驚愕: 抱きつかれたことで相手が恐怖や驚愕で動けなくなった場合。
- 虐待に起因する心理的反応: 虐待の経験による無力感や恐怖心がある場合。
- 経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮: 上司が部下や教師が生徒に抱きついた場合など。
また、抱きつく行為自体がわいせつな行為ではないが、その後のわいせつ行為を行うための手段として抱きついた場合、不同意わいせつ罪の未遂罪が成立する可能性があります。
抱きつき行為で不同意わいせつ罪に問われた場合には、「6月以上10年以下の懲役」が科されます。
不同意わいせつ罪とは?旧強制わいせつ罪との違いをわかりやすく解説
暴行罪
暴行罪は刑法208条に規定されています。
(暴行)
第208条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。刑法第208条 - Wikibooks
暴行罪の「暴行」とは、人の身体に対して有形力を行使することです。物理的な力を他人に向けることで暴行罪は成立しますので、殴る・蹴るといった行為はもちろん、大声で怒鳴る、物を投げつける、そして抱きつく行為も暴行罪に問われる可能性があります。
また、暴行罪は、行為者に「人の身体に対して有形力を行使することの認識(故意)」があれば成立しますので、抱きつく行為にわいせつな行為を行う意図が認められなくても暴行罪に問われる可能性はあります。
暴行罪とは?どこから成立する?構成要件・傷害罪との違いも解説
なお、泥酔した男性が女性に抱きついてしまう事案が多くありますが、「泥酔で暴行しても逮捕されることも!「記憶にない」は不利益になる?」に書かれているように、酔っていたため記憶がないという主張は逆に刑事処分や量刑で不利に働くこともあります。記憶が曖昧であっても、覚えていることは正直に警察に話す方が得策です。
女性にいきなり抱きついてしまい、不同意わいせつ罪や暴行罪で刑事事件になるおそれのある方は、当法律事務所までお気軽にご相談ください。親身誠実に、弁護士が依頼者を全力で守ります。相談する勇気が解決への第一歩です。
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